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2020年に向けて

2009-01-29 16:12:12 | Weblog

 著者の出井伸之さんと言えばCEOとして、21世紀初頭のソニーの企業価値を高め、一頃はその言動が日本や経済界のみならず、幅広い方面で影響力と注目を集めたエリート経営者です。その後就任された会長職に続いて顧問も退かれ、現在はその経験や人脈を活かしたインキュベーション・オフィスを主宰されています。
 その出井さんが近未来へ向けて社会・経済的な日本のビジョンとして書かれたのが『日本進化論・2020年に向けて』という新書本です。前半部分にこれからも世界同時好況は続いていくという状況認識があり、今となっては2007年夏発行の本としては非常に楽観的な誤謬があると思われますが、前向きで創造的な経営者というものの発想を感じないでもありません。
 それはさておき、ネットワーク社会や変容する資本主義の在り方など、日本の進むべき方向性への多面的な提言が散りばめられとても興味深く読めました。経済や技術などについてそれぞれ専門家ではないと断りつつも、ゼネラリスト的な視点に立ち世界的企業の経営者としての経験に基づく予測には現実的な説得力を感じます。
 「必要なのはルールブレイカー」という言葉には、ソニーのウォークマンにとって換わったiPodのことにも触れながら、「ルールブレイカーこそが、新しい時代のルールメイカーになれる」と虚心に喝破しています。ソニーやその他の日本企業への今なお熱いエールと受け取れました。

日本進化論―二〇二〇年に向けて (幻冬舎新書)
出井 伸之
幻冬舎
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