♪もういくつ寝ると お正月~♪
お正月には楽しい思い出がない。一升瓶を並べて枕元におく酒飲み三昧の父が目を覚まして暴言を吐くことが恐ろしくて、お正月が来ることを喜べなかった。
正月四日には人の家のお酒目当てに年始に出かけて行く。後姿を見送るときの不安は言い難く、電話が来て迎えに行くこともしばしば・・・。歩けないほど酔った父を抱えて「さぁ」と声にならない声を出した冬の夜。
死ぬまで酒ビンを放さなかった・・・。正月の四日、買い物から帰ると
「電話があって、おじいさんは救急車で運ばれたって」と、息子。
足元不如意・・・バッタリ倒れて顔中血だらけ。一度や二度ではない惨事。
父は何を考えていたのだろう。父は時々娘に対して「おじさんはね・・・」と話しかけていたけど、他人になりたかったのかな、しがらみと縁を切りたかったのかな・・・と思う。
父親の顔を知らない夫は、こんな父でも大事にしてくれた。大工の棟梁だった義父が戦死さえしなかったら順風満帆の人生を進んだ夫は、こんな父とは無縁でいられたかもしれない。
ろくでなしの父を持った娘と、父なしの息子。共に老い、二人きりのお正月を迎える。名もなく貧しい宴であっても、無風の心地良さだけで、十分なお正月。
長男は顔くらいは見せてくれるかもしれないけれど、次男のほうは第二子出産のため里帰りするお嫁さんの実家へ直行。
無難であれば、それで満足である。
お正月には楽しい思い出がない。一升瓶を並べて枕元におく酒飲み三昧の父が目を覚まして暴言を吐くことが恐ろしくて、お正月が来ることを喜べなかった。
正月四日には人の家のお酒目当てに年始に出かけて行く。後姿を見送るときの不安は言い難く、電話が来て迎えに行くこともしばしば・・・。歩けないほど酔った父を抱えて「さぁ」と声にならない声を出した冬の夜。
死ぬまで酒ビンを放さなかった・・・。正月の四日、買い物から帰ると
「電話があって、おじいさんは救急車で運ばれたって」と、息子。
足元不如意・・・バッタリ倒れて顔中血だらけ。一度や二度ではない惨事。
父は何を考えていたのだろう。父は時々娘に対して「おじさんはね・・・」と話しかけていたけど、他人になりたかったのかな、しがらみと縁を切りたかったのかな・・・と思う。
父親の顔を知らない夫は、こんな父でも大事にしてくれた。大工の棟梁だった義父が戦死さえしなかったら順風満帆の人生を進んだ夫は、こんな父とは無縁でいられたかもしれない。
ろくでなしの父を持った娘と、父なしの息子。共に老い、二人きりのお正月を迎える。名もなく貧しい宴であっても、無風の心地良さだけで、十分なお正月。
長男は顔くらいは見せてくれるかもしれないけれど、次男のほうは第二子出産のため里帰りするお嫁さんの実家へ直行。
無難であれば、それで満足である。