『人間の条件』とは、何だろう。
「我思う、ゆえに我あり」(デカルト)の言葉通りだとすれば、《考えることによってわたくしの存在はある》ということであり、存在を認識することが《人間の条件》だとも考えられる。
認識以前の問題としてまず、懐疑の前提がある。
この作品における問題点は画布に描かれた風景が、実際の風景に合致するかという論点である。
一見して、窓外の景色と画布に描かれた景色はつながっているように見えるから、画布の景色は画布に隠れた窓外の景色に一致するという感想を抱く。
《そうに違いないという肯定》《違うかもしれないという否定》この狭間を証明するものはない。
肯定と否定に揺れる意識作用・・・これこそが『人間の条件』だとマグリットは言っている。
自分の眼差し(存在)は、確かなものだろうか、如何にも疑わざるを得ないように描かれたマグリットの作品の前で(自身の眼差し《存在》を問う)。
『人間の条件』という作品は、人間の条件を鑑賞者自身に問いかける作用を有している。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)