続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『恋人たち』

2016-01-09 07:06:46 | 美術ノート

 『恋人たち』
 恋人たちは頬を寄せあい、キスをする。愛の始まりは胸がときめく・・・お互い相手の全てを知っているわけではなく未確認である。

 男女の頭部は白い布で覆われている、恋は盲目を象徴しているともいえるこの光景。見つめ合う眼差しも頬を寄せる触覚も働かない断絶、無謀な白布。

 知らないゆえの魅惑、好奇心。
 実体は後から知らされるかもしれないが、恋人という未知の時代には不可解な領域が大きい。

 本能的な男女の結びつき、どんなに身体を近づけても相手の真意までは見抜けない。不確定な要素に満ちた危険な関係ともいえる。
 被せられた白布はいずれ時の経過とともに薄皮を剥ぐように正体を露見させるに違いない。

 しかし、見えないがための魅惑というもは、むしろ見えてしまう現実よりも想像力を掻き立て精神を高揚させる。男女はそれぞれの夢想で相手を抽象化した幻影を引き寄せるのである。

 夢想と現実・・・。
 この白布の中には、それぞれの人生の情報が隠ぺいされている。
 《恋人たち、それは無謀な試みである》というマグリット一流の皮肉が垣間見える。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


『銀河鉄道の夜』192。

2016-01-09 06:57:57 | 宮沢賢治

汽車はもう、しづかにうごいてゐたのです。カンパネルラは、車室の天井を、あちこち見てゐました。

 汽車はキ・シャと読んで、鬼、赦。
 車室はシャ・シツと読んで、赦、悉。
 天井はテン・ショウと読んで、転、章。
 見てゐましたはゲンと読んで、現。


☆鬼(死者)の赦(罪や過ちを許す)。
  赦(罪や過ちを許す)悉(すべて)は、転(ひっくりかえる)章(文章)に現れる。


『城』2194。

2016-01-09 06:51:17 | カフカ覚書

だれもが毎日仕事をもらえるとはかぎらない。あんたがたがそのことで不平をこぼすのは、筋違いというものです。おそらく、だれだってそうなんでしょうから。


☆だれもがいつでも命令を受けるわけではありません。そのことで嘆くべきではありません。多分誰でもそうなのでしょう。
(※死はある日突然のように告げられる)


偶然。

2016-01-09 06:13:43 | 日常

 人の誕生は偶然だろうか…必然的な結果ともいえるけれど、やはり偶然の作用が大きく因していると思われる。

 一つの現象としてわたしは存在してる。
 雪の降る酷寒の夜に生まれたというわたしは、産声も発せず、ぐったりと死んだようにしてこの世に誕生したらしい。
 お産婆さんが、赤子の足を掴んで持ち上げ逆さにしたら、か細く「オギャー」と一声泣いたので(ああ、生きていた!)と安堵したいう。

 その後の生育も思わしくなく、病身の母親の傍らで眠るだけ、母乳の代りに黒田牧場の牛の乳で何とか命をつないだらしい。(長いこと話に聞いた黒田牧場を知らなかったのだけれど、数年前、田戸界隈の遺跡探訪の講座を受講した際、「ここが黒田牧場跡です」という駐車場を教えていただき感涙を止めるのがやっとだったことがある)

 もちろん《ハイハイ》もしないか弱い子供、一歳を過ぎても動かず畳の上をいざっていたという。二歳近くなってようやく立ち上がったわたし。臥せっていた母の代りに四軒長屋の隣人であったAさんにも面倒を見てもらったらしい。(Aさん夫婦には子供がなかったけれど、その後わたしと同い年の女児を養女に迎えている)


 Aさんは家を建て転居、その後の行方を知らなかったけれど、後年、わたしの結婚式に介添えをして下さる方がわたしに声をかけた、
 「せつこさん、わたしですよ。Aです」
 彼女は式場で働いて全く偶然わたしの介添人になったらしい。

 この世は偶然に満ちている。息も絶え絶えこの世に生れ出た赤子のわたしが、思いがけず未だ生きていて、こうしてブログを書いているなんて!!

 急ぐことも、焦ることもない。悪戯好きの偶然の女神はいつもどこかで微笑んでいるのだから。