『星座』と題された作品に星座らしきものは描かれていない。そもそも星座とは、人の眼差しが空を見上げて創った空想の産物である。
神話によって描かれた空の物語を地上の人が追想する天と地との融合は、大いなる宇宙空間を所有するという人智である。
自然を名づけることで、心理的支配下に置くという優位。
あるがままの自然(星の配置)を、夢想することで異世界に結びつける。人の思惑が想像した世界は、人の生活する社会にまで影響を与える。心を動かされた人たちはその教えに生きる糧を見いだしていく。
『星座』における人智の空想は、地上の人の渾沌を救う。
天空に張られた天幕、オリーブの葉と鳩、自然の樹木を凌駕する落下(死)の葉の変容・・・人の視界は低くそれらは手の届かない至高に位置している。雲に被われた空には本当の空が見えない。
『星座』、人の空想が天空に異世界を創っている。
地上の人も、ある種の空想により、圧を受けてはいないだろうか。
この作品を見る時にはどうしても、なぜか・・・視線を低くし、権威の象徴のような巨大な天幕を見上げてしまうのである。
『星座』に酷似した地上界を皮肉な眼差しを見ているマグリットが見える。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)