『ピレネーの城』
海上に浮かぶ巨岩石、その上にその岩石で作られた城がある。
背景はあくまでも、空は青く白い雲が散在する現実の風景であるゆえに、これは現実の中に浮かぶ非現実(幻影)の世界である。
共存だろうか、否、すべてが幻の光景と化している。
巨岩石が浮かぶことはあり得ない。浮かんでいるが、いずれ落ちることを想定せざるを得ない光景である。
地球という塊は宙に浮いている。その中に人は生息し社会を築き、権威の象徴を築城している。
ずっと遥かな超未来には、過去の遺物として地球の形はこのように形骸化し宙に浮かぶ日があるのではないか。この背景の海と空は奇跡的に酷似し誕生した新生地球かもしれない。
過去と現在そして未来の時空を自在に想像し、時空の凝縮、置換、重複をさらりと描くマグリット。
鑑賞者は現時点から作品を鑑賞するので、矛盾した光景にひたすら驚愕せざるを得ない。
《重い石が浮くなんて!》不条理以外の何物でもない光景であるが、自由な精神界では、学習された通念を簡単に覆し壮大な時空に思いを馳せることを可能とする。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
燈台看守はやっと両腕があいたのでこんどは自分で一つづつ睡ぅてゐる姉弟の膝にそっと置きました。
☆等(平等)の題(テーマ)を貫く趣(考え)である。
両(二つ)の一(一つ)は、字で文を逸(隠している)。
推しはかる詞(ことば)の態(ありさま)は、悉(ことごとく)知(心に感じ取ることである)。
それだけがすべてでした。わたしたちは、アマーリアはほんとうにお婿さんを見つけたよ、などと言ってさんざんからかいました。なにも知らないわたしたちは、午後じゅうずっと陽気に浮かれきっていました。けれどもアマーリアだけは、ふだんよりもだまりこんでいました。
☆死がすべてでした。わたしたちはアマーリア(マリア/伝説/月)はほんとうに青くなっているよ、と言ってからかいました。すべて小舟の仲間は非常に喜びましたが、アマーリアだけは黙っていました。