『3つの停止原基』
3つ、というからには手前にある偶然できた線条をなぞった板状定規らしきものが(停止原基)と考えていいかもしれない。ではその後ろに控えている木箱はどういう意味なのだろう。
物があって箱があれば、収納という関係性を疑うのは至極当然である。
箱は釘を使用しない木組みの手法で作られた年代物である。にもかかわらず、安直な留め金が開閉を自由にするような不具合をもって取り付けられている。そして、よく見ると既に使用の痕跡が認められる。古くて新しい開閉・・・内側は3枚のガラス板で仕切られており、4つの空間を作っている。3つ目の所には黒い板状のものが垣間見える。
蓋に関していえば、箱本体より後に付けられたものではないか、ガラス板を固定する柔らかい質感を持つ白い帯状の物が貼りつけられている。その内側にネジが見えるが、何を固定するものかは不明(ネジの位置が中央でなく、左右の位置にもズレがある)、仮に持ち上げるためのパーツだとしたら長すぎるし、重さは増幅し持ち上げられない。
不都合、不具合だらけの箱(蓋の接続)である。
この箱に『3つの停止原基』は収められるのだろうか。偶然の線描はこの世の《現象》に過ぎない。現れるが、消える定めである。この3つをそれぞれ仕切られたガラス板の中に収めるとしたら、
〈誕生〉〈生涯〉黒い板状〈死〉と、推しはかることも可能である。
何回も使い廻された、一族の《生死の秘密の原初》ルーツともいうべき箱。
古くて質素、頑強と軽薄を併せ持つ奇妙にして滑稽な箱、その中に入るべき『3つの停止原基』であるわたくしという現象は、入ったが最後決して出ることはないでしょう、出ることは不可能でしょう。
わたくしの原風景であります。
(写真は『DUCHAMP』TASCHENより)
「さうして睡つておいで。布団をたくさんかけてあげるから。さうすれば凍えないんだよ。あしたの朝までカリメラの夢を見ておいで。」
☆推しはかる二つの談(話)は、等しい。
調べると、無(存在しないもの)が現れる。
たいていの従僕たちは、わたしたちとおなじように、あれ以来ずっとその従僕に会っていないのです。その後彼を見かけたという者もいますが、たぶん思い違いでしょう。
☆たいていの死者は長い間まったく同じです。会えることはなく、見たと思っても全くの思い違いでしょう。