木具師三代・橋村萬象展
江嵜企画代表・Ken
木具師三代・橋村萬象展が高島屋京都店で5月27日まで開かれている。橋村家は、平安遷都のとき、奈良より皇室のお供をして京都に移住した。2008年2月、三代萬象を襲名された。今回の展覧会は襲名記念展である。
三代目の又左衛門が、大徳寺管長より「一刀萬象」(一の刀より、よろず(萬)のかた(象)を作る)を拝名し「萬象」を名乗る。
三代萬象さんは、先代萬象の長男として1959年に京都で生まれた。祖父である初代萬象に師事、日本画家山本紅雲に師事した。先日、日本画家、猪熊佳子さんとの競作展も開かれた。
東京遷都のとき、天皇に仕える有識器具師は、四家あった。再び京都に戻って来られると信じて橋村家のみ残ったという話を萬象さんから聞いた。冷泉家も京都に残った。冷泉家からの注文書が会場に展示されていた。
特別展ということもあり、香合、水指し、茶器の展示に加えて、会場入り口を入って
右手に、物指、かんな、のこぎり、寸法帳、御所からの注文書、羽子板の原型、天皇が使う枕の挿絵なども並べられており、見ごたえがあった。
のこぎりは、手づくりで、手元が太く、先へ行くほど薄くなっている。そのため微妙なタッチで作業が出来る優れものだと聞いた。
羽子板の原型も面白かったが、羽子板絵の下絵として、裏と表別に、和紙に描かれたものが展示されており、印象に残った。
萬象さんは、この道30年の実力の持ち主である。ところが、実に腰が低い。素人の分際にも、こちらが恐縮するほど、懇切丁寧に話して下さった。直々、解説いただく機会に恵まれ、誠に光栄であった。
茶器の展示ということもあり、会場には、お歳を召したご婦人の姿が目立った。「有識茶器御器具師」と書いた立て札、後鳥羽院下賜と書いた注文書、羽子板の原型を表装した掛け軸などを入れて、会場の様子をスケッチした。(了)