ベートーベン、ブルックナー、チャイコフスキー、シベリウス、グラズノフ、マーラー、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、彼らの交響曲第「5」番はみな人気曲である。
マーラーのそれは、自分の交響曲を1番から順にパロディにしているかのような、やたらとっちらかっているような曲想が続き、4番の緩徐楽章よりもさらに淫靡なアダージェットで青春の悔恨に浸っていると、最後の第「5」楽章が、複雑なポストモダン建築がスポーツカーの運転をしてるみたいな(もう訳分からない比喩になってしまったが)とんでもない曲であり、「おおおっ」とびっくりしているうちに大団円を迎える。カラヤンもさすがにこの曲に関しては、大げさな加速をしたりしておるぞ。いつもやってるか……
私は、むかしチューバや(バス)トロンボーンをやっていたのであるが、この二つの楽器のところだけスコアで追ってみると、素晴らしく吹きたくなる(ちゃんと吹ければな……)箇所が目白押しで、マーラーという男、奏者の快感まで計算に入れていることがよく分かる――気がした。