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「主戦場」という映画がやっているのでこりゃ観ないわけにはいくまいというわけで観に行った。「従軍慰安婦」問題を扱った問題作である。
これはアメリカの若いユーチューバーが作ったドキュメンタリーである。情緒に流れず、ドライにぱんぱんと取材対象をモンタージュして行く様は、「客観的」というより、大学の課題レポートをスタイリッシュにやり遂げたみたいな感じであるが、これがなかなか面白い。若い監督を相手にして気が抜けたのか、特に「ナショナリスト」(映画でそう言ってた気がするからそう言っておくが……)=「慰安婦像」反対派の「歴史修正主義者?」たちが、ものすごく気さくに喋っているのが、まるで、いってみりゃ「マッドマックス」や「北斗の拳」みたいな感じである。日本の右派といってもかなりいろいろな人がいるので、わたくしは、言論の「主戦場」みたいな作りはあまり好きではないのだが、――たしかに、ネット上の罵りあいなんかをみていると、確かにこれは「戦場」になってしまっているという感じがするのだ。ただ、リアルな世界ではまだ市民的な常識に隠れているところがある(そうでもないかな?)このひとたちが、実に楽しそうに喋っている。
ある意味で、日本のある種の右派の行為とは、別にナショナリストとして青筋立てて日本の不遇を歎いているのではなく、――「癒やし」なのだ。非常に重要な点をこの監督は突き止めたのではないかと思う。
最後に、ある種ドキュメンタリーの構成上意図的にでてきたラスボスのKさんなど、日本が戦争に勝った、韓国はかわいい、とかなんとか言っていたが、わたくしはこの人は別に狂っている訳でも、おかしいことを言っているのでもないと思うのだ。だってさ、「日露戦争大勝利」、「アッツ島玉砕」、「一億総懺悔」や「神武景気」、などなど、日本は明治維新以来、すばらしい進撃をし続けているからであり、宇宙戦艦ヤマトも地球を救ったし、イチローは世界で活躍。日本食も大流行だ……し。クールジャパンだし――。えーと、もっとなんかあるだろう……。かわいさとか……。
というわけで、我が国で、特にそういう集団に属していれば、敗戦や戦争犯罪などなかった如く考えるのはある種簡単なわけである。だから、かかる言説がバトルに耐えられるわけはない。むろん主張することそのものはあり得るが、主張を続けていくためには論証と理論が必要だ。それは限りない勉強が必要で、ナショナリストを名乗ることが出来るのはこの後である。癒やされている人にナショナリズムはない。考えてみると、自分で自ら癒やされようとする右派はまだ寄り添って貰いたがる左派よりも潔いところがあるようだ。
いずれにせよそんなことは完全にどうでもいい。
何故なら、監督が出した結論は――、「The Main Battleground」は、韓国と日本の対立にはなく、アメリカとの関係に於いてある、であるからだ。日韓の条約や約束はいつもアメリカの都合で生じたり生じなかったりしているからだそうだ。監督がこの大げさなタイトルを掲げていたのは、この結論をだすためだ。こんな自明のことまで、アメリカ人の若者に教えてもらわなくてはならないのは屈辱的である。