★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

檄!インテリ大戦

2019-07-25 23:13:29 | 文学


呉智英氏の本は漫画評論と吉本隆明論他いくつか読んだだけであるが、こんど古本屋で『インテリ大戦争』を買ってきたので読んでみた。

昔、このゴチエイ氏と浅羽通明氏が好きだという青年が、実にスカシタいやな奴だったので、BSマンガ夜話の西原理恵子の回にゴチエイさんがでると知ったときにいやな感じがしたのであるが、見てみるといい人っぽかった。わたくしは、ポストモダンな書物を勉強して粋がってた頃も、所謂保守的な「封建主義者」(違うか)みたいな人と馬があっていた。今でも、萬葉集とか中国古典学、日本の哲学でも西田や鈴木をやっている人とは友だちになれそうな気がするのである。

一番友だちになれそうもないのは、すぐフーコーとかいう人とか、夏目漱石とかやってるひと

今度手に入れた本で一番良かったと思うのは、五木寛之の『戒厳令の夜』の評論で、まったく同感である。

それにしても、ゴチエイ氏は教養がありすぎるせいかちょっと切れ味が良すぎるのではないか。ときどき理系の一年生のレポートみたいな切れ味の文章がある。題名の『インテリ大戦争』もあんまり良くないと思う。この本は、ちょうど80年近辺の文章をあつめた本なのであるが、この本に流れる躁的ななにかは確かにあの時代にあった「いじめ」の雰囲気であり、果たしてゴチエイ氏が正義の味方なのか、いじめっ子なのかは分からない、というのがわたくしの実感である。

とりあえず言えるのは、ゴチエイ氏の文章は、無智を笑ったりする時にでてしまう不快感を与えない代わりに、読者が勉強しなければならないというオーラをあまりだすことがないような気がする。たぶん読者にすごく優しい人なのであろう。案外教員に向いているのかもしれない。特に、いまどきの教員に。