
解雇されたものがその時男女合はせて六人――その中の男優等は竹山に仕打するんだといつてその後間もなく騒ぎ廻つてゐた。
彼等はそして、細つそりした女優の下宿を、屡々訪れた。
「みんな芸術ゲの字も分つてゐない奴等なんですよ。」或物は彼女にかう云つて聞かした。社長に泣きつけば自分だけはまだ入れて呉れるかも知れないといふ位に考へてゐた彼女は、それにどう返事して好いか悪らずに、几帳面に坐つてさへゐれば好いことにしてゐた。
「竹山なんて、ねえ。――あゝまだあなたは知らないんでせう、あれやあね、僕等と田舎廻りにゐた時は僕の下役をしてた位なもんでさあ、あゝン………。」と云つて顔を上の方に向ける男もゐた。
――中原中也「蜻蛉」