「このお家は私の家で 赤いきれや、おもちやや、いろんなおもしろいお話をかいた本をうつてゐるのです。そのなかには、あなたのことも、お月様のこともかいてありますよ。私は毎日、そんなご本をよんだり、お人形をつくつたりしてあそんでゐます。私は、小さい時に、お月様のところから、この家へもらはれて来たのですよ。これをお月様にさしあげて下さい。」と、女の子は、自分の頭から 赤いリボンをとつて、小人にわたしました。小人はそれをもらつて、またお月様のあとをおつかけました。お月様は女の子にもらつたリボンを、頭におかけになりました。お月様はまるでかわいゝかわいゝ女の子に見えました。
「まあ。お月様。あなたがそのリボンをおかけになるとあの女の子にそつくりですよ。」と、小人が大よろこびで言ひました。お月様もたいへんうれしさうに、その晩中、ニコニコと笑つていらつしやいました。
その晩は丁度十五夜でした。
――村山壽子「十五夜のお月様」