★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

極楽以上、地獄以上

2024-05-21 21:02:05 | 文学


「そんな事はないじゃろう。十年なり二十年なり坐って居ると、又別な世界へ行けるのじゃろう。」と、おかんは、腑に落ちないように訊き返した。
 宗兵衛は苦笑した。
「極楽より外に行くところがあるかい。」と云ったまゝ黙ってしまった。そう聴かされて見るとおかんにも宗兵衛の云って居る事が、本当であることが、解った。御門跡様のお話にも、お寺様の話の中にも、極楽以上の世界があることなどは、まだ一度も聴かされたことがなかった。


――菊池寛「極楽」


NHKの「漫勉」で知ったんのだが、水木しげるの漫画に特徴的な真っ黒い影や闇は、アメコミの影響があるかもしれないということである。地獄とは、敵さんのアメリカであったのであろうか。

猫が蛙を食べるというの、最近我が庭にノラが闖入してしていて知ったんだが、「猫ちゃん」とか猫のことを言っている人って自分も猫並みにかわいいと持っている可能性が高く、蛙でも食べればもっとその境地に近づくであろう。それは無論地獄であろうが、地獄をみないうちは極楽は見えない。昔の人は、それが普通すぎて分からなくなっていたのであろうが、現代人みたいにぬるま湯の煉獄に居座ってしまうと、地獄や極楽が、むしろ例外的なものとして、浮かび上がってくるのである。