昔者蒼頡作書、而天雨粟、鬼夜哭。伯益作井、而龍登玄雲、神棲昆侖
蒼頡という四つ目がある人が感じを作った伝説がある。鳥の足跡の文様をみて思いついたというのだ。すると詐欺が発生し、人は耕作を棄て錐刀の利に赴いた。で、天は人間が飢えそうなので粟を降らせ、鬼は文書によって責められることが分かったので夜泣いたという。
こういう挿話を我々は忘れたので、文書改竄などを自分たちのやったことだと思う。つまりせいぜい自分のせいだと思っているから誤魔化したり思い上がったりするわけであるが、文書改竄は、鳥の歩行や鬼の歎きにも繋がるただの奇跡に過ぎない。
西遊記に出てくる唐太宗の冥界訪問のときも、太宗の命は崔判官の計らい――棒を二本付け足して――二〇年寿命が延びている。もはや、鳥の足跡よりも単純な記号による変化である。