どう考えても意味が分かりません。
何故に、Tシャツとパンツ一丁で、履き物も履かず、行ったこともない隣の道場に、どこからか入って、みんなが寝ている間にころんと寝る、なんてことが起こり得たのか。
もしかして、彼は、テレポーテーション空間移動をしたのでしょうか。
「T理教の神様に呼ばれたんじゃないの」と、からかってみましたが、
「冗談はやめて、勘弁して」と、いつになく真剣です。
「このサンダル、返しに行かなきゃならないんだけど、三部さん一緒に来て」
と、懇願されましたが、余計な顔を出して宗教対立になっても困るし、だいたい行きたくないし、「嫌だよ」と断って蒲団を被りました。かわいそうに、彼一人で返しに行きました。
あれは今でも不思議な出来事です。
巣鴨が色んな宗教の集まる場所であるということは、何か不思議な力の渦巻いている、パワースポットなのかもしれません。
因みに、その後シゲル君に変わった様子はありませんでした。T理教に入信した様子もありませんし、別のところにテレポートしたという話も聞きません。
ただ、時折、話すことが普通ではないと感じることがあるのは、気のせいでしょうか。
もし、あなたが目覚めた時に、となりに知らない男が寝ていたら、それはシゲル君かもしれません。シゲル君なら大丈夫です、弱アルカリ性の人畜無害ですから。(終)
追伸:この連載の途中で、シゲル君から、やめて、お願い、堪忍してと懇願されましたが、こんな楽しい話を私一人の胸の中にしまっておくのはもったいないので、強行連載しました。おかげでスッキリしました。
加えて、同じような抱腹絶倒シリーズに「青春の痔」があります。まだご覧でない方は、カテゴリーから入ってご笑覧いただければ幸いです。繰り返し読んでも笑えます。