なあむ

やどかり和尚の考えたこと

過去帳から見えたもの

2010年03月31日 21時05分23秒 | 松林寺

古い過去帳を見る用事があって、ページをめくっていると、奇妙なことに気づきました。
その年によって、死亡者が少ない時と極端に多い時があります。子供だけが次々と亡くなっている年もあります。
宝暦6年には何と71名の死者が記載されていました。
その前後の年が10名程であることを考えれば驚異的な数です。
これは何かあったのではないかと思い『最上町史』を繙いてみると、やっぱりでした。
前年の宝暦5年は最上地内全域で大凶作となり、飢餓状態になったことが判明しました。
毎日毎日、時には1日に3名が亡くなった日もありました。ほとんど毎日葬式をしていたような状態だったろうと思います。
米が全く実らず、蕨や蕗の根っこを食べていたと記録にはあります。更には、稲藁を細かく切って煮てわずかな米と混ぜて臼でついて作る「藁餅」の製法などの資料もありました。
それでも飢えを凌ぐことはできず、餓死する人が絶えなかったということなのでしょう。
まさに地獄絵図の様相ではなかったでしょうか。
その後も当地は、大凶作、凶作、不作を繰り返すような時代が続きます。そんなことが過去帳からも鮮明に浮かび上がってきます。
それでも、この地で何とか生き継いできたのだなと、感動と敬意を覚えます。
同時に、今の暮らしの何と不遜なことかと思います。毎日毎日3300万食分の食糧を棄てている国、日本。そのことをきっと空腹と共に後悔する日が来るような気がしてなりません。


雪です

2010年03月29日 22時40分21秒 | 松林寺

松林寺に居ます。
間もなく4月だというのに一人前の雪が降っています。
どこかで柄にもないことをして「だから雪が降るんだよ」と言われている人が大勢いるのでしょうね。
本当に3月に入ってからの寒さは、誰かが特別にすごくいいことをしたとしか考えられません。
そのせいで、寒さに耐えている人には死活問題ですから、笑い事ではありません。
天候不順や自然災害なども、多くの場合、普段厳しい状況にある人に更に追い打ちをかけるように厳しくのしかかります。
だからといって、何か手を差し伸べることは容易なことではありません。でも、せめて、そういう人もいるだろうなということを、頭の片隅に浮かぶような思考を持ちたいと思います。
『文殊師利涅槃経』というお経に「もし生身の文殊に会わんと欲せば、慈悲心を起こせ、文殊菩薩がこの世に出現する時には、貧窮孤独の身となって現れるからである」という一節があるようです。
その言葉を掲げて、鎌倉時代の叡尊・忍性らの僧たちは、ハンセン病患者を風呂に入れて、「さあ、文殊様の背中を流してさしあげよう」という活動を行ったと聞いています。
仏教は、決して、着飾って床の間に据えられるような存在ではありません。
生身の人間とどう向き合うか、地べたに座り、あるいは這いつくばり、同じものを食べ、同じものを飲み、汗の臭いのする距離で肩を寄り添う、それも仏教の姿です。少なくともそうありたいと願っています。


お寺の本業

2010年03月28日 22時51分40秒 | 地球環境

今日の夜は、河北町環境を考える会の月例会でした。

4月の総会の打ち合わせから、農薬、有機野菜、自然農法など農業と健康の話題、町の環境意識の話題、新しいゴミ分別の話題、葬祭サポーター、自殺問題まで、色々な話題がでました。

色々な情報を持ち寄るといい刺激になります。

今年の総会では、谷地の名物である「冷たい肉そば」をB級グルメとして全国に発信しようと頑張っている若い女性、逸見朋愛さんをゲストにお招きして話を伺おうと思っています。

環境問題は、まさに生きていく基盤の問題ですから、全てに関わっています。それは自然とは何か、不自然とは何か、人間とは何か、命とは何か、という問題でもありますし、宇宙の運行のありように気づくこととも言えます。

その真実に気づくことは、人間の悩み苦しみの原因に気づくことともつながっているようです。

そのことを既に発見されていたお釈迦様はやっぱりすごいと思います。

お寺にとって環境問題は「課外事業・サークル活動」ではありません。自殺問題も、難民問題も、老人問題も、地域の問題もすべて「本業」です。

「当に願わくは衆生と共に」が仏教の願いですから、喜びや悲しみや苦しみを共有することをもってお寺の仕事と考えています。


いいぞう

2010年03月21日 22時31分18秒 | 今日のありがとう

彼岸の中日に雪が降っています。というか吹雪です。

こんな年もあるんですね。

今日は松林寺で朝の梵鐘を撞いた後、宿用院に移動して法事が2件、その後大般若会。河北町では20日から30日まで毎日教区寺院の大般若会が続きます。

明日は松林寺の法事が2件と河北町の大般若会と説教、その後宿用院の法事が1件。終わってあさっての宿用院大般若会の準備です。

ようやく忙しさが戻ってきました。

先日のブログで書いた上田紀之さんと清水康之さんの対談の書『「自殺社会」から「行き心地の良い社会へ」』が着いて読み始めました。対談本なのでさっと読めそうです。

自殺遺族の子どもたちの言葉が痛い。

その他にも読もうとしている本が何冊か目の前に積んであるのですが、なかなか手が伸びません。もっと暇な時に読んでおけばよかったと後悔するのですが、暇な時は本当にどうしようもなく、つまらないゲームで時間を費やしてしまっていたのです。

かえって少し忙しい方が本も読めるかもしれません。


えさ

2010年03月17日 19時25分20秒 | 家族模様

一昨日から2泊3日で家内と娘と母親まで、永平寺参拝に出かけています。目的はもちろん陽堂です。母親と娘にも修行中の姿を見せたいという気持ちからですから結構なことなのですが、二ヶ寺の留守番をするのはヒヤヒヤものです。

「何」かあれば大変だと思って行ったり来たり往復していましたが、結局「何」もありませんでした。少し雪が降った以外、がっかりするぐらいまことに穏やかな三日間でした。

旅先から電話をよこしては「猫のえさは大丈夫か」「猫は・・・」とそれぞれ二匹の猫の心配ばかり。人間も食事するんだけど、と思ってしまいました。

すれば料理もできないことはないのですが、面倒くさいが先に立ってしまって台所に立つ気になれません。ついつい家内が大量に置いていったカップラーメンの「えさ」に手が伸びてしまいました。

さて、今晩もこれから何にしましょうか。やっぱり「やきそば一平ちゃん」かな。


なごり雪

2010年03月11日 13時02分10秒 | 家族模様

昨日、一昨日、9・10日は娘の引越で東京へ。
車に荷物をつけて出かけたのですが、高速で東京まで行くのだからと思い、二日前にスタッドレスから普通タイヤに替えたばかりでした、もちろん天気予報などは見ていません。
何ということでしょう。
こんな日に限って、東京まで季節外れの雪が降るなんて。
家内からは、「だから言ったでしょ!」と信頼失墜のお言葉。
娘との会話
「何で普通タイヤにしたの?」
「東京で冬タイヤだと田舎者みたいでかっこ悪い」
「ナンバー見れば山形って分かるじゃない」
「おっしゃるとおり!」
ということで、さんざんな目に遭いましたが、何とか普通タイヤのままで帰って来られたので目出度し目出度し。
末娘は、猫かわいがりで育ててきたために、あまりにも子供で、こんな東京の雑踏の中で本当に生きていけるのかと心配になってきました。
東京にあこがれを感じていた自分のことなどはすっかり忘れてしまいました。
親の心の中になごり雪が降っています。


啓蟄

2010年03月07日 19時07分17秒 | 家族模様

昨日から大般若の季節が始まりました。

年に一度、仏法興隆や世界平和、五穀豊穣、家内安全などを祈る恒例の祈祷会です。

春のこの時期に祈祷を行う理由は、これから農作業を始めるに際して、一年間の豊作を祈ってのことだったと思います。地方によっては、和尚様方が田んぼを祈祷して回ったというところもあったようです。

啓蟄は、虫だけの動き出しではなく、人間もやはり活動開始の季節だったのでしょう。

和尚もいつまでも寺に籠もって暇をもて余しているわけにはいきません。そろそろ動かないと。

「ないと」と言えば、昨日?NHK山形で、「今夜はなまらナイト」という一部に好評の番組がありました。その中で話題にしていたのは、山形名物「ぴっぱりうどん」(最上では「ひきずり」ですね)でした。それぞれの地域、また家庭の食べ方がある山形ではポピュラーのB級グルメです。

ホットな話題に流されやすい家内の今晩のメニューは、「そろそろゆであがるよ~」とのことです。いただきましょう!


たかがスポーツ

2010年03月01日 16時47分29秒 | ふと、考えた

皆様、オリンピックの応援お疲れ様でした。
たかがスポーツなのだからそれほど熱くなる必要もありません。もっと冷静に楽しく観戦すればいいと思います。
それにつけても悔しかったのは、スピードスケート、女子パシュートの0.02秒ですね。
あれはつま先の差です。
ドイツの選手はゴールでつま先を伸ばしていましたからね。あれで負けました。なぜ日本の選手は足を出さなかったのか。
いや、それまでスケートやスキーでゴールに足を突き出す姿を見ていて、セコい感じがして、大和魂の美学にはそぐわないかなと思っていました。
しかし、何故あそこで足を出さない!ピッと足を出していれば金だったろうに、と一人で悔しがっていました。
大和魂の美学なのか、何が何でも勝とうというどん欲さが足りないのか、頑張ったからすばらしいという優しさなのか、まあ、いずれにせよ、外国人選手との心の違いを感じましたね。
本番での強さと、信仰心との関係はないでしょうか。人智を越えた力を信じる心があるのとないのとではいざというときに違ってくるように思います。もしかしたら、日本人選手に足りないのは信仰心かも。
それにしても、0.02秒ですよ、つま先ですよ。
冷静に、冷静に。たかだかスポーツですから。