Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「結社と王権」

2011年09月03日 18時03分24秒 | 読書
 気象予報官を泣かせたと思われる迷走台風12号、ようやく進路予想どおりに動くようになったが、広範囲の影響が出ている。ここ横浜でも雨は降っていないが強い南からの風に乗って低い雲が勢いよく飛んでいく。湿気も多い。 

本日の読了
「結社と王権」(赤坂憲雄、講談社学術文庫)
 「勧進とはいわば、境界領域の支配・管理をめぐって、国家と民衆のはざまに架けわたされた橋=媒介行為である。境界領域にたいする全面的かつ直接的な統治能力を喪失していた古代・中世の国家は、勧進という、本来政治とは無縁であるはずの宗教的回路を支配紀行の末端に接ぎ木し、民衆の労働力・金銭・技術などを吸収し再編成することを常態とした。勧進の体制化ないし堕落とはだから、仏教的な衣装まといつつ、勧進が次第に国家機構の内側に組みこまれることを意味した、といってよい。‥古代律令制国家によって、なし崩しの「挫折」を強いられた行基とその運動が、古代末期から中世にかけての勧進聖たちの活動の原型であった。勧進と聖にまつわる風景はやはり、行基という問題の中世的な変奏であったといわねばなるまい。」
 「行基以降、知識や勧進といった宗教的回路が程度のさはあり、いわば、すでに/つねに共同体ないし国家の論理の浸透をこうむり、むしろその補完物としての役割を担わされてきたことは否定しがたい。たとえば、勧進聖とはあらかじめ挫折と敗北を宿命として負わされた、もうひとりの行基とその集団であったといえないか。行基の挫折は、そして、‥何度でも反復される。」