昨年12月22日に「三菱一号館美術館名品選2013―近代への眼差し 印象派と世紀末美術」展を見てきた。三菱一号館美術館の収蔵品展であろうか。
行って三点ほど心に残った。二点はカミーユ・ピサロの「窓から見たエラニーの通り、ナナカマドの木」(1887年)と同じく「エラニーのロックおばさんの農園」(1893年)。以前にも記載したが、私はカミーユ・ピサロの絵が好きである。生涯にわたる絵の全体像を見渡せる展覧会が行われないのはとても残念であるが、今のところ目にすることができる絵はみな気に入っている。
あの明るい農村風景は見ていてとても落ち着く。構図へのこだわりなどは感じさせず、色彩があふれるように農村の家の周囲を描いている。大きな風景を描いているのは思い浮かべない。身の回りのいつも目に触れるありふれた情景を描いているのだが、これが何とも言えずいい。
是非とも生涯の全体像が見通せる展覧会を希望したい。
次に目にしたのが、オディロン・ルドンの「小舟」。
ルドンの色彩のついた絵はこの「小舟」と有名な大作「グラン・ブーケ」の二点だけなのだが、それがかえってこの輝くような色彩を一層輝かせている。原色の赤と青と橙、そして白が何とも効果的に配されている。静かな物語を感じさせる、暖かい絵である。ルドンであるから、絵の背後、背景には物語の世界が深く広がっているのであろうが、それは私などにはわからない。しかし実に能弁にいろいろなことを感じさせてくれる絵である。女性二人なのか、青い服の人が男なのか、正しい答えはあるはずだが、そこまで詮索するのはとてももったいない。暗い海と小舟という舞台設定からは、不安の象徴も感じられるかもしれないが、黄色の帆の割合が大きく意外と安心感も感じる。そして花束と思われる丸い膨らみが温かみとともに二人の物語の結末を不安なく見せていると思うが作者の真の思いはどうなのだろうか。
この絵は初めて見たような気がする。以前ルドン展があった時に展示されていたとすれば、見落としていたことになる。しかし今回この絵を見つけて、訪れた甲斐があったと思った。