■『小さいおうち』(2013)
原作:中島京子 『小さいおうち』(文藝春秋刊)
監督:山田洋次
出演:
松たか子 平井時子
片岡孝太郎 平井雅樹
市川福太郎 平井恭一(少年期)
秋山聡 平井恭一(幼年期)
米倉斉加年 平井恭一(平成)
黒木華 布宮タキ
倍賞千恵子 布宮タキ(平成)
室井滋 貞子
妻夫木聡 荒井健史
木村文乃 ユキ
中嶋朋子 松岡睦子
吉岡秀隆 板倉正治
ラサール石井 柳社長
橋爪功 小中先生
吉行和子 小中夫人
夏川結衣 荒井康子
小林稔侍 荒井軍治
笹野高史 花輪和夫
松金よね子 花輪の叔母
螢雪次朗 酒屋のおやじ
林家正蔵 治療師
ほか
公開当時気になっていたが、「GYAO!」で無料配信していたから観た(~8月23日
▼あらすじ(ネタバレ注意
タキの葬儀
何度も同居しようと言ったが断り続けて、タキは一人で死んでいた
荒井健史が第一発見者 タキはタケシの大祖母?
タキの家を片付ける家族
タケシ宛の缶が見つかり自叙伝が入ってる
タキの生前時、自叙伝を書いて出版するようすすめて、ノートをチェックしていたタケシが読みながら回想する
<自叙伝>
昭和10年
尋常小学校を出た きょうだい6人はみな奉公に出ていた
農村の口減らしに、娘は女郎屋に売り飛ばされる時代で、芸者屋が来る家もあったが
私は美人ではなく、親類のつてで行く所が決まっていた
18歳で奉公に出た
叔母:1日も早く訛りを直して、東京の言葉を覚えろ
憧れの都に着き、驚くことばかり
自転車、荷馬車、人力車、自動車、チンチン電車、当時の帝都東京は美しかった
昭和のはじめは、サラリーマンの家に女中がいるのが当たり前だった
奴隷などではなく、キチンとした職業で、嫁入り前の花嫁修業でもあった
初めての女中奉公は、本郷の小説家・小中の屋敷
年上の女中が2人もいた
小中:
昔、付き合ってた芸者からの恋文を妻に見られる前にそっと机にしまってくれた
夫婦の円満は女中次第だ/笑
翌年、小中夫人の紹介で平井時子の家に奉公することとなる
モダンな住宅で、友だちのように話すトキコ
姉・貞子:
よく家を建てる気になったわね
関東大震災であれだけ焼けて、家だのモノだの持つものじゃないと思い知らされたのに
今は、家より教育費のほうが大事よ 中学受験なんて大変なんだから
(今と同じで変わってないんだな
アジアで初めての東京オリンピック開催について自慢げに話す夫・平井雅樹
おもちゃを作る会社に勤めている 一人息子・恭一と3人家族
アメリカではキューピーが大流行
結局、戦争で東京オリンピックは中止になった
タケシ:
昭和11年は2.26の年だろ そんなに日本人がウキウキしてるわけない
ダメだよ 過去を美化しちゃ もう日本は中国と戦争してたんだ
タキ:支那事変は昭和12年だよ
タケシ:
昭和6年の満州事変からずーっと戦争は続いてるんだよ
「15年戦争」って言って、“事変”なんて言っても中身は戦争なんだよ
恭一が高熱を出して、小児麻痺となった
毎日マッサージをすれば治ると医師に言われ
タキが毎日おんぶして通うと言う
タキ:妹をおぶって何kmも歩いていたから大丈夫です
雨の日も風の日も病院にリハビリに通ったお蔭で
半年でだいぶ良くなった恭一
トキコ:
私のマッサージは「くすぐったい」と言われるの 私の脚をやってみて
タキちゃんの手、私よりあったかいんだわ
1年間リハビリし、小学校を1年遅らせると、麻布のサダコが飛んできて、上級学校への進学を勧める
息子マサトは白金に通ってる 友だちは定期券で遠くから通うと聞いて驚くトキコ
「南京陥落」のニュースに「きっとデパートで大売出しやるわよ!」とサダコ
南京陥落のニュースは、もうすぐ戦争が終わるような祝賀気分だった
デパートは戦勝大売出しで大行列
思えば、あれが東京らしい賑やかな年末でした
タケシ:
南京じゃ大虐殺が行われていたのに、デパートじゃ大売出しって悪夢みたいだな
年の暮れ 大掃除は屋敷を全部雑巾がけ
大晦日の夜 トキコからお下がりの着物をもらう
正月の集まりに板倉正治が初めてやって来る
美大を卒業し、平井の会社のデザイン部に入った
トキコ:今来たお客さんステキよ! タキちゃんも見てらっしゃい
柳社長:
大人口の中国の需要は無尽蔵だ まずは大規模な工場を造ろう
(アメリカの視察旅行の話で)食い物から違う ビフテキをバターで食うから体がデカイ!
板倉が部屋に入って来る
板倉:
ここだけの話、戦争の話は苦手で・・・
実は、前からこの家に興味がありまして 憧れていました
田舎は弘前 東京は冬でも太陽が照っていて驚いたと訛ってタキと話す
『コドモノクニ』を恭一に読み聞かせる 内容はタイタニック号!
そのまま子どもと一緒に寝てしまい泊まることになる
タキのお雑煮美味しそう!
レコードでクラシックを聴く 『オーケストラの少女』
ノンタクトがストコフスキーの特徴
板倉の下宿は駅2つ目で、時々、平井家にレコードを聴きに来るようになる
土曜日にコンサートを観る約束だったのを忘れて、輸出玩具協会で集まりがあるという夫
切符のことでモメる夫婦
トキコ:私、近頃ときどきイライラするのよ
トキコは1人でコンサートに行くと、そこに板倉も来る
板倉:社長から券もらったんです 来てよかった
ウキウキと戻ってくるトキコ
資生堂でコーヒーを飲んで、銀座の書店で恭一に本を買ってくれた
その頃、夫の会社はとても難しい時期だった
台風の夜に板倉が来る 夫は出張で横浜で足止め
2階の窓がパタパタしてるからタキと修理する
私鉄で帰るという板倉を止めるトキコ
夜に板倉を起こして、バタバタする玄関のドアを直してもらう
板倉:下駄箱をたてて、明日に大工を呼べばいいですよ
トキコは板倉にキスする
タキに縁談が来た
郷里の教師だが50過ぎ 子どもは3人、孫もいて、3回目の結婚の花輪和夫が叔母と一緒に来る
(って、笹野高史さん、年離れ過ぎ! タキを見て声が上ずってるしww
叔母:体が丈夫で、子どもを一杯産むのが大事 和夫は子どもが大好きで
和夫:産めよ増やせよは国民の務めでがんす(男にとってはいい務めだねえ
夜に泣いてしまうタキ
トキコ:
イヤに決まってるわ 私、断るわ
知らなかったのよ あんな年寄りだなんて
タキ:
でも、旦那さまが“若い人はすぐ兵隊にとられるから、歳とった人のほうがいいんだ”って
トキコ:
あんな人、鉄砲弾に当たらなくてもすぐ死んじゃうわよ
あなたにうんといい人を探すのが私の夢なの
タキ:
私、お嫁に行かなくてもいいんです
一生、奥さまや坊ちゃんのお世話をしたいと思っています
トキコ:
あなたは凛々しい若者と一緒になって幸せな家庭を作るの
「支那事変」が長引き、金属不足となり、
平井の会社のおもちゃは、金属から木製、紙製に主力をうつした
社長:
そのうち、家庭の鉄も回収されるらしいよ
ここまで長引くとは思わなかった バックにアメリカがいるからな
アメリカとの戦争はやめたほうがいい 近衛さんがどう出るか 彼は頭がいいからな
板倉が独身と分かると
社長:
君がよくても、世間がいいとは言わない
早く結婚してバンバン子どもを作るんだ 社長命令だ
「兵隊検査」を受けたら、気管支が弱くて目も悪いから「丙」だった
板倉の見合いの話をする夫 兵隊で男がいないため引く手あまただと言う
マサキ:
会社としてもとても都合がいいから、お前まとめてくれ
次の日曜に板倉が来た
トキコがお見合いの話を切り出すが聞こえないフリ
板倉:まだその気はありませんよ 奥さんにそんなこと言われると思わなかったな
トキコ:社長さんに言われたのよ 写真を見て会ってちょうだい
腕をつねるのを見てしまうタキ
スケッチブックには女性の姿もある
マサキ:
ドイツは強くても、日本まで手は伸ばさないだろう
ただアメリカは、支那からの日本撤退を要求しているらしい
そんなバカなこと出来るわけないじゃないか
板倉はぐずぐずして子どもみたいだな
君行って、少し意見してきなさい
次の日曜、板倉の下宿に行くトキコとタキ
部屋にはトキコだけがあがる
見合いの話はやはり断られる
マサキ:
若くて残っているのは板倉だけで、あとは兵隊にとられた これは業務命令だ!
ラッパを吹いて兵隊に行く行列に、紙の国旗を振って見送る
次の日曜日もトキコは板倉のもとへ行く
薄々勘付いているタキと下宿の大家
大家の囲碁相手の酒屋は、トキコをどこかで見たことがあると言う
大家:
支那の戦線で兵隊さんが戦ってるというのにいい気なもんだよ
姦通罪だと訴えてやろうか
奥さまが帰った時、帯の筋が今朝と逆になっていたのを今でもハッキリ覚えている
それから2度、奥さまは下宿に行かれた
トキコの親友・松岡睦子が来る
タキ:
奥さま、この頃少し変なんです 私、どうしたらいいか分からないんです
ムツコ:
板倉さんはトキコを好きなのね
女学生の頃からキレイでみんな好きになっちゃうの
結婚が決まった時、自殺しかけた人もいるの
泣き出すタキ
そこに戻るトキコ
トキコ:
もうこれきりにしましょうと言ったのよ!
板倉さんの見合い話のことだと誤魔化す
それから1ヶ月でトキコはとても痩せてしまった
久しぶりに板倉が来て、召集されたからと見合いを断りに来る
板倉:お国へのご奉公が終わってから身を固めたいのが僕の気持ちです
マサキ:
アメリカの経済政策で日本製品はボイコット 万策尽きた
いよいよアメリカと戦争だよ
12月 真珠湾攻撃で開戦
アメリカとの戦争が始まって「万歳」を叫ぶ酒屋のおやじ
酒屋のおやじ:
この際、徹底的にやっつけたほうがいいんだよ
なにもかも配給制で当分はモノが手に入らないから、欲しいモノがあれば言いな
お宅の奥さん、コレ(指をたてる)がいるんじゃないか?
たまたま見たのがオレだからいいが、この時勢気をつけたほうがいいよ
新聞を見て、新しい時代が来るのだとわけも分からず喜んだことを、今は苦々しく思い出します
タケシの母・康子が来る
タケシは事故って入院して心配するが、毎日、女子学生が見舞いに来る
タキも具合が悪くて寝込む
部屋には、葬儀の片付けの時に簡単に捨てられた赤い屋根の家の絵が飾ってある
(モノはあの世まで持っていけないもんね
昭和18年 生活物資はすべて配給制になった
サダコが来て、トキコが板倉と一緒に喫茶店でひそひそ話をしていたのを見たと話す
サダコ:
ガダルカナルや、ニューギニアでは何万人もの兵隊さんたちが餓えと戦って死んだりしてるのよ
トキコ:お姉さま、いつから“国防夫人会”になったの?
サダコ:
今に“非国民”なんて言われるから 知らないわよ
紅茶なんて贅沢なのよ、あなたの所は
サダコは叔父に告げ口し、トキコは小中に呼び出された
小中:
お前のことを強く叱ってくれというんだ お茶したぐらいでかなわないよ
まったく窮屈な世の中になったもんだ
勇ましく叫ぶ奴がのさばる 嫌な時代だよ
トンカツを頼むシーンを読んで、
タケシ:
トンカツなんて食えるわけないだろ 「学徒出陣」があった時だよ
タキ:
「闇商売」っていうのがあったの 馴染みの客にこっそり分けたりして
タケシの彼女ユキが来て紹介していく
主人が出張している夜に板倉が来て、「召集令状」が来たと見せる
(あれ、こないだゆってたのは赤紙ではないのか?
板倉:
本籍地の弘前の軍隊に行くから、あさってには上野に行かないと
支那か南方に行くことになると思う
抱き合っているところにマサキが帰ってくる
灯火管制で部屋は真っ暗
マサキ:
ついに来たか お国に尽くすなら、君なら絵やマンガを描いたほうがよっぽど役に立つ
一番、つまらん使い方だな、君に人殺しをさせるのは
とにかく配給の不味い酒で祝杯をあげよう
みんなで上野に送りに行くよ 万歳て旗を振ってな
板倉は酒を断って去る
板倉:
忘れないよ君のことは
もし僕が死ぬとしたら、タキちゃんと奥さんを守るためだからね
さよなら
トキコは出かけようとして、止めようか、これきりだから会わせてあげようかとタキは混乱する
タキ:
板倉さんと会うのは止めたほうがいいと思います
お手紙を書いたら、お渡しします
酒屋さんは奥さんを見かけたことがあるんです
これが旦那さまや坊ちゃんに知られたら大変なことになります
トキコは怒りのまま手紙を書く
家で待っていると言ってくれと頼まれたが、板倉は来なかった
恋愛事件は幕を閉じました
自叙伝を書きながら、大粒の涙を落とすタキ
タケシが来て、心配する
タキ:私ね、長く生き過ぎたの・・・
戦争はますます厳しくなり、タキは山形の田舎に帰ることになった
トキコ:
戦争が終わって、あなたがお嫁に行ってなかったらまた来てね
始まったものは、いつかは終わるわよ
昭和20年5月
山の手に大空襲があったと知ったが、消息を知ることは出来ず、無事を祈った
田舎はいいなあ
8月6日広島 9日長崎への原爆投下
15日 お寺のラジオで玉音放送を聞いた
その年の暮れ、やっと東京に行くと、赤い家は焼けて、
防空壕で、旦那さまと奥さまが抱き合った姿で亡くなっていた
祖母の自叙伝はそこで終わっている
板倉への手紙は封が切られないまま残っていた(渡さなかったのか?
翌年 タケシは大学を卒業、土木関係会社に就職した
彼女から誕生日プレゼントとしてバージニア・リー・バートン『ちいさいおうち』という絵本をもらう
本屋で板倉正治のポスターを見かけ、調べると、ニューギニアで敗戦を迎えて、帰国していた
翌週、練馬区のショージ記念館に出かけた(え、実在?と思ったけど違った
赤い屋根の絵が飾ってある 『思い出の小さいおうち』(1965)
ショージの寝室にかかっていた特別な絵だという 生涯独身だった
3年ほど前に恭一と連絡がとれたと聞き、
石川県の自宅を訪ねると、高齢で目が見えない
封をあけてない手紙を渡す
タカシ:未開封だが宛名がないから遺族に返そうと思って
恭一:今開いてここで読みましょう
“今日のお昼過ぎ、1時頃においでくださいませ
どうしても、どうしてもお会いしたく思います
必ずお訪ねくださいませ 板倉正治様 平井時子”
タカシ:おばあちゃんは届けなかったんだ 2人を会わせなかったんだよ
恭一:
参ったな この歳になって母親の不倫の証拠をまざまざと見るなんて
とっくに時効だけどね/涙
恭一は若い日のタキのことをよく覚えていた
恭一:
海の近くに住むのが子どもの頃からの夢でした
タキちゃんと江ノ島の海によく行きました
板倉さんも一緒だった 僕は2人はお似合いだと思っていた
戦後、一生懸命探したけど、山形出身しか分からなくてどうしようもない
もし会えたら言ってあげたかった
タキちゃん、そんなに苦しまなくていいんだ
君の小さな罪はもうとっくに許されているんだからね
嫌な時代だった 日本人がみんななにかに強いられていた
自ら望んでいた人もいて、それが不本意だとも気づかない
泣いていた祖母の記憶を思い出すタケシ
“あの深い悲しみの原因は本当は何だったんだろう?”
誰からも好かれてしまうトキコに、もしかしてタキも淡い想いを寄せていたのかもしれないな
板倉の絵は、2人のいる赤い家に自分が飛んでいく、シャガールみたいな絵
原作:中島京子 『小さいおうち』(文藝春秋刊)
監督:山田洋次
出演:
松たか子 平井時子
片岡孝太郎 平井雅樹
市川福太郎 平井恭一(少年期)
秋山聡 平井恭一(幼年期)
米倉斉加年 平井恭一(平成)
黒木華 布宮タキ
倍賞千恵子 布宮タキ(平成)
室井滋 貞子
妻夫木聡 荒井健史
木村文乃 ユキ
中嶋朋子 松岡睦子
吉岡秀隆 板倉正治
ラサール石井 柳社長
橋爪功 小中先生
吉行和子 小中夫人
夏川結衣 荒井康子
小林稔侍 荒井軍治
笹野高史 花輪和夫
松金よね子 花輪の叔母
螢雪次朗 酒屋のおやじ
林家正蔵 治療師
ほか
公開当時気になっていたが、「GYAO!」で無料配信していたから観た(~8月23日
▼あらすじ(ネタバレ注意
タキの葬儀
何度も同居しようと言ったが断り続けて、タキは一人で死んでいた
荒井健史が第一発見者 タキはタケシの大祖母?
タキの家を片付ける家族
タケシ宛の缶が見つかり自叙伝が入ってる
タキの生前時、自叙伝を書いて出版するようすすめて、ノートをチェックしていたタケシが読みながら回想する
<自叙伝>
昭和10年
尋常小学校を出た きょうだい6人はみな奉公に出ていた
農村の口減らしに、娘は女郎屋に売り飛ばされる時代で、芸者屋が来る家もあったが
私は美人ではなく、親類のつてで行く所が決まっていた
18歳で奉公に出た
叔母:1日も早く訛りを直して、東京の言葉を覚えろ
憧れの都に着き、驚くことばかり
自転車、荷馬車、人力車、自動車、チンチン電車、当時の帝都東京は美しかった
昭和のはじめは、サラリーマンの家に女中がいるのが当たり前だった
奴隷などではなく、キチンとした職業で、嫁入り前の花嫁修業でもあった
初めての女中奉公は、本郷の小説家・小中の屋敷
年上の女中が2人もいた
小中:
昔、付き合ってた芸者からの恋文を妻に見られる前にそっと机にしまってくれた
夫婦の円満は女中次第だ/笑
翌年、小中夫人の紹介で平井時子の家に奉公することとなる
モダンな住宅で、友だちのように話すトキコ
姉・貞子:
よく家を建てる気になったわね
関東大震災であれだけ焼けて、家だのモノだの持つものじゃないと思い知らされたのに
今は、家より教育費のほうが大事よ 中学受験なんて大変なんだから
(今と同じで変わってないんだな
アジアで初めての東京オリンピック開催について自慢げに話す夫・平井雅樹
おもちゃを作る会社に勤めている 一人息子・恭一と3人家族
アメリカではキューピーが大流行
結局、戦争で東京オリンピックは中止になった
タケシ:
昭和11年は2.26の年だろ そんなに日本人がウキウキしてるわけない
ダメだよ 過去を美化しちゃ もう日本は中国と戦争してたんだ
タキ:支那事変は昭和12年だよ
タケシ:
昭和6年の満州事変からずーっと戦争は続いてるんだよ
「15年戦争」って言って、“事変”なんて言っても中身は戦争なんだよ
恭一が高熱を出して、小児麻痺となった
毎日マッサージをすれば治ると医師に言われ
タキが毎日おんぶして通うと言う
タキ:妹をおぶって何kmも歩いていたから大丈夫です
雨の日も風の日も病院にリハビリに通ったお蔭で
半年でだいぶ良くなった恭一
トキコ:
私のマッサージは「くすぐったい」と言われるの 私の脚をやってみて
タキちゃんの手、私よりあったかいんだわ
1年間リハビリし、小学校を1年遅らせると、麻布のサダコが飛んできて、上級学校への進学を勧める
息子マサトは白金に通ってる 友だちは定期券で遠くから通うと聞いて驚くトキコ
「南京陥落」のニュースに「きっとデパートで大売出しやるわよ!」とサダコ
南京陥落のニュースは、もうすぐ戦争が終わるような祝賀気分だった
デパートは戦勝大売出しで大行列
思えば、あれが東京らしい賑やかな年末でした
タケシ:
南京じゃ大虐殺が行われていたのに、デパートじゃ大売出しって悪夢みたいだな
年の暮れ 大掃除は屋敷を全部雑巾がけ
大晦日の夜 トキコからお下がりの着物をもらう
正月の集まりに板倉正治が初めてやって来る
美大を卒業し、平井の会社のデザイン部に入った
トキコ:今来たお客さんステキよ! タキちゃんも見てらっしゃい
柳社長:
大人口の中国の需要は無尽蔵だ まずは大規模な工場を造ろう
(アメリカの視察旅行の話で)食い物から違う ビフテキをバターで食うから体がデカイ!
板倉が部屋に入って来る
板倉:
ここだけの話、戦争の話は苦手で・・・
実は、前からこの家に興味がありまして 憧れていました
田舎は弘前 東京は冬でも太陽が照っていて驚いたと訛ってタキと話す
『コドモノクニ』を恭一に読み聞かせる 内容はタイタニック号!
そのまま子どもと一緒に寝てしまい泊まることになる
タキのお雑煮美味しそう!
レコードでクラシックを聴く 『オーケストラの少女』
ノンタクトがストコフスキーの特徴
板倉の下宿は駅2つ目で、時々、平井家にレコードを聴きに来るようになる
土曜日にコンサートを観る約束だったのを忘れて、輸出玩具協会で集まりがあるという夫
切符のことでモメる夫婦
トキコ:私、近頃ときどきイライラするのよ
トキコは1人でコンサートに行くと、そこに板倉も来る
板倉:社長から券もらったんです 来てよかった
ウキウキと戻ってくるトキコ
資生堂でコーヒーを飲んで、銀座の書店で恭一に本を買ってくれた
その頃、夫の会社はとても難しい時期だった
台風の夜に板倉が来る 夫は出張で横浜で足止め
2階の窓がパタパタしてるからタキと修理する
私鉄で帰るという板倉を止めるトキコ
夜に板倉を起こして、バタバタする玄関のドアを直してもらう
板倉:下駄箱をたてて、明日に大工を呼べばいいですよ
トキコは板倉にキスする
タキに縁談が来た
郷里の教師だが50過ぎ 子どもは3人、孫もいて、3回目の結婚の花輪和夫が叔母と一緒に来る
(って、笹野高史さん、年離れ過ぎ! タキを見て声が上ずってるしww
叔母:体が丈夫で、子どもを一杯産むのが大事 和夫は子どもが大好きで
和夫:産めよ増やせよは国民の務めでがんす(男にとってはいい務めだねえ
夜に泣いてしまうタキ
トキコ:
イヤに決まってるわ 私、断るわ
知らなかったのよ あんな年寄りだなんて
タキ:
でも、旦那さまが“若い人はすぐ兵隊にとられるから、歳とった人のほうがいいんだ”って
トキコ:
あんな人、鉄砲弾に当たらなくてもすぐ死んじゃうわよ
あなたにうんといい人を探すのが私の夢なの
タキ:
私、お嫁に行かなくてもいいんです
一生、奥さまや坊ちゃんのお世話をしたいと思っています
トキコ:
あなたは凛々しい若者と一緒になって幸せな家庭を作るの
「支那事変」が長引き、金属不足となり、
平井の会社のおもちゃは、金属から木製、紙製に主力をうつした
社長:
そのうち、家庭の鉄も回収されるらしいよ
ここまで長引くとは思わなかった バックにアメリカがいるからな
アメリカとの戦争はやめたほうがいい 近衛さんがどう出るか 彼は頭がいいからな
板倉が独身と分かると
社長:
君がよくても、世間がいいとは言わない
早く結婚してバンバン子どもを作るんだ 社長命令だ
「兵隊検査」を受けたら、気管支が弱くて目も悪いから「丙」だった
板倉の見合いの話をする夫 兵隊で男がいないため引く手あまただと言う
マサキ:
会社としてもとても都合がいいから、お前まとめてくれ
次の日曜に板倉が来た
トキコがお見合いの話を切り出すが聞こえないフリ
板倉:まだその気はありませんよ 奥さんにそんなこと言われると思わなかったな
トキコ:社長さんに言われたのよ 写真を見て会ってちょうだい
腕をつねるのを見てしまうタキ
スケッチブックには女性の姿もある
マサキ:
ドイツは強くても、日本まで手は伸ばさないだろう
ただアメリカは、支那からの日本撤退を要求しているらしい
そんなバカなこと出来るわけないじゃないか
板倉はぐずぐずして子どもみたいだな
君行って、少し意見してきなさい
次の日曜、板倉の下宿に行くトキコとタキ
部屋にはトキコだけがあがる
見合いの話はやはり断られる
マサキ:
若くて残っているのは板倉だけで、あとは兵隊にとられた これは業務命令だ!
ラッパを吹いて兵隊に行く行列に、紙の国旗を振って見送る
次の日曜日もトキコは板倉のもとへ行く
薄々勘付いているタキと下宿の大家
大家の囲碁相手の酒屋は、トキコをどこかで見たことがあると言う
大家:
支那の戦線で兵隊さんが戦ってるというのにいい気なもんだよ
姦通罪だと訴えてやろうか
奥さまが帰った時、帯の筋が今朝と逆になっていたのを今でもハッキリ覚えている
それから2度、奥さまは下宿に行かれた
トキコの親友・松岡睦子が来る
タキ:
奥さま、この頃少し変なんです 私、どうしたらいいか分からないんです
ムツコ:
板倉さんはトキコを好きなのね
女学生の頃からキレイでみんな好きになっちゃうの
結婚が決まった時、自殺しかけた人もいるの
泣き出すタキ
そこに戻るトキコ
トキコ:
もうこれきりにしましょうと言ったのよ!
板倉さんの見合い話のことだと誤魔化す
それから1ヶ月でトキコはとても痩せてしまった
久しぶりに板倉が来て、召集されたからと見合いを断りに来る
板倉:お国へのご奉公が終わってから身を固めたいのが僕の気持ちです
マサキ:
アメリカの経済政策で日本製品はボイコット 万策尽きた
いよいよアメリカと戦争だよ
12月 真珠湾攻撃で開戦
アメリカとの戦争が始まって「万歳」を叫ぶ酒屋のおやじ
酒屋のおやじ:
この際、徹底的にやっつけたほうがいいんだよ
なにもかも配給制で当分はモノが手に入らないから、欲しいモノがあれば言いな
お宅の奥さん、コレ(指をたてる)がいるんじゃないか?
たまたま見たのがオレだからいいが、この時勢気をつけたほうがいいよ
新聞を見て、新しい時代が来るのだとわけも分からず喜んだことを、今は苦々しく思い出します
タケシの母・康子が来る
タケシは事故って入院して心配するが、毎日、女子学生が見舞いに来る
タキも具合が悪くて寝込む
部屋には、葬儀の片付けの時に簡単に捨てられた赤い屋根の家の絵が飾ってある
(モノはあの世まで持っていけないもんね
昭和18年 生活物資はすべて配給制になった
サダコが来て、トキコが板倉と一緒に喫茶店でひそひそ話をしていたのを見たと話す
サダコ:
ガダルカナルや、ニューギニアでは何万人もの兵隊さんたちが餓えと戦って死んだりしてるのよ
トキコ:お姉さま、いつから“国防夫人会”になったの?
サダコ:
今に“非国民”なんて言われるから 知らないわよ
紅茶なんて贅沢なのよ、あなたの所は
サダコは叔父に告げ口し、トキコは小中に呼び出された
小中:
お前のことを強く叱ってくれというんだ お茶したぐらいでかなわないよ
まったく窮屈な世の中になったもんだ
勇ましく叫ぶ奴がのさばる 嫌な時代だよ
トンカツを頼むシーンを読んで、
タケシ:
トンカツなんて食えるわけないだろ 「学徒出陣」があった時だよ
タキ:
「闇商売」っていうのがあったの 馴染みの客にこっそり分けたりして
タケシの彼女ユキが来て紹介していく
主人が出張している夜に板倉が来て、「召集令状」が来たと見せる
(あれ、こないだゆってたのは赤紙ではないのか?
板倉:
本籍地の弘前の軍隊に行くから、あさってには上野に行かないと
支那か南方に行くことになると思う
抱き合っているところにマサキが帰ってくる
灯火管制で部屋は真っ暗
マサキ:
ついに来たか お国に尽くすなら、君なら絵やマンガを描いたほうがよっぽど役に立つ
一番、つまらん使い方だな、君に人殺しをさせるのは
とにかく配給の不味い酒で祝杯をあげよう
みんなで上野に送りに行くよ 万歳て旗を振ってな
板倉は酒を断って去る
板倉:
忘れないよ君のことは
もし僕が死ぬとしたら、タキちゃんと奥さんを守るためだからね
さよなら
トキコは出かけようとして、止めようか、これきりだから会わせてあげようかとタキは混乱する
タキ:
板倉さんと会うのは止めたほうがいいと思います
お手紙を書いたら、お渡しします
酒屋さんは奥さんを見かけたことがあるんです
これが旦那さまや坊ちゃんに知られたら大変なことになります
トキコは怒りのまま手紙を書く
家で待っていると言ってくれと頼まれたが、板倉は来なかった
恋愛事件は幕を閉じました
自叙伝を書きながら、大粒の涙を落とすタキ
タケシが来て、心配する
タキ:私ね、長く生き過ぎたの・・・
戦争はますます厳しくなり、タキは山形の田舎に帰ることになった
トキコ:
戦争が終わって、あなたがお嫁に行ってなかったらまた来てね
始まったものは、いつかは終わるわよ
昭和20年5月
山の手に大空襲があったと知ったが、消息を知ることは出来ず、無事を祈った
田舎はいいなあ
8月6日広島 9日長崎への原爆投下
15日 お寺のラジオで玉音放送を聞いた
その年の暮れ、やっと東京に行くと、赤い家は焼けて、
防空壕で、旦那さまと奥さまが抱き合った姿で亡くなっていた
祖母の自叙伝はそこで終わっている
板倉への手紙は封が切られないまま残っていた(渡さなかったのか?
翌年 タケシは大学を卒業、土木関係会社に就職した
彼女から誕生日プレゼントとしてバージニア・リー・バートン『ちいさいおうち』という絵本をもらう
本屋で板倉正治のポスターを見かけ、調べると、ニューギニアで敗戦を迎えて、帰国していた
翌週、練馬区のショージ記念館に出かけた(え、実在?と思ったけど違った
赤い屋根の絵が飾ってある 『思い出の小さいおうち』(1965)
ショージの寝室にかかっていた特別な絵だという 生涯独身だった
3年ほど前に恭一と連絡がとれたと聞き、
石川県の自宅を訪ねると、高齢で目が見えない
封をあけてない手紙を渡す
タカシ:未開封だが宛名がないから遺族に返そうと思って
恭一:今開いてここで読みましょう
“今日のお昼過ぎ、1時頃においでくださいませ
どうしても、どうしてもお会いしたく思います
必ずお訪ねくださいませ 板倉正治様 平井時子”
タカシ:おばあちゃんは届けなかったんだ 2人を会わせなかったんだよ
恭一:
参ったな この歳になって母親の不倫の証拠をまざまざと見るなんて
とっくに時効だけどね/涙
恭一は若い日のタキのことをよく覚えていた
恭一:
海の近くに住むのが子どもの頃からの夢でした
タキちゃんと江ノ島の海によく行きました
板倉さんも一緒だった 僕は2人はお似合いだと思っていた
戦後、一生懸命探したけど、山形出身しか分からなくてどうしようもない
もし会えたら言ってあげたかった
タキちゃん、そんなに苦しまなくていいんだ
君の小さな罪はもうとっくに許されているんだからね
嫌な時代だった 日本人がみんななにかに強いられていた
自ら望んでいた人もいて、それが不本意だとも気づかない
泣いていた祖母の記憶を思い出すタケシ
“あの深い悲しみの原因は本当は何だったんだろう?”
誰からも好かれてしまうトキコに、もしかしてタキも淡い想いを寄せていたのかもしれないな
板倉の絵は、2人のいる赤い家に自分が飛んでいく、シャガールみたいな絵