メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

Protection

2005-09-10 23:55:55 | lyrics
つきさす光を
さえぎる影をください
あなたの唇に身を寄せて

髪の香りは
草原を駆け抜ける風

私は野生の馬
草むらを分けて走ってゆく


あなたは昨夜のパーティのことも聞かない
ただ、楽しかった?って言っただけ
背中を見つめる視線が痛む

今朝遅く戻るまで
ベルも鳴らなかった

その優しい手の温もりなしには
夜も眠れないというのに

愛が乾いていくのを怖れて
私は時々闇夜を徘徊する

ワインボトルと
見知らぬ友人を連れて


イタズラに肩を張る日々
つむじ風にしがみついてる気分

伝えるべき言葉も見つからないまま
TVの主人公に代弁者を探している

ダークグレーの雲が
重く垂れる夕暮れは
甘ったるいクリームシチューの香り


伝える詩を持たぬ詩人は
花粉を持たない花弁

安定と刺激を
同時に求める愚か者





1996夏ごろ作(もちろん妄想の世界なりw

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まち

2005-09-09 23:55:55 | lyrics
誰もいないまち

人間の存在しないまち

人間のつくった建造物だけが

だまあってたっている




冷えて湿った大空を 鷲が飛んでいる

ごうごうと生えた 黒い木々の間を

静かに息づく 湖の水面の上を

きりつまった 気圧を裂いて


飛行機雲がない空

誰も飛んでいない空


ぴりぴりと震える電線から

小さな雫が ひと粒落ちた


此処はかつて人間のいたまち

木目模様のコンクリートの家は

もうだれも待たない






1989年作

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やめろ

2005-09-08 23:55:55 | lyrics
やめろやめろ
数えるのをやめろ
たし算をやめろ


やめろやめろ
えらぶのをやめろ
えらぶるのをやめろ
応えるのをやめろ


やめろやめろ
変えるのをやめろ
帰るのをやめろ
還るのをやめろ


やめろやめろ
並ぶのをやめろ
並ばせるのをやめろ
真似するのやめろ


やめろやめろ
すてるのやめろ
ひろうのやめろ
やめるのやめろ


やめろ
やあやあやめろ

天を仰ぐと
そこにはまっしろい壁が
わらっていた


あああ
みんなやめた





1989年作
たぶん谷川俊太郎さんのリズムを真似したかったのではないかと思われ


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hole

2005-09-07 23:55:55 | lyrics
気づかぬままに 秋の穴へと落ちてゆく
わたしを限りなく悲しませる秋の
目に見えない ひとつの穴

ここにいま ひとりの女が生きている
死にそうになって生きている


「なぜ生きるのか」


階段から転がり落ちても
鉢の底にへばりついても

なんの意味もなくても
大勢に笑われながらも

ここにたったいま 生きている女がいる
それはやっぱり わたしでしかありえない


世界には生きるチャンスをもらっても
意味を見出せないものがどれだけいるんだろう

かれらは、ほかの有望な連中といっしょに
朝は陽射しを眺め

喋ったり
笑ったり

夕方には飛んでゆく 雲を見つめたりする


有望な連中よ
わたしの腐った血族を絶やしてくれ

なめくじに塩をかけるように
蟻んこをつま先で踏み潰すように
捕らえたねずみを 河へ流すように
いい加減に


そして思い出してほしい
かつてそんなものが 生きていたってことを

メモの片隅に書き留めたりして
朱色の思いを馳せてくれ


けれども
ひとりの女は たぶんこれからも生きてゆくのだろう

気づかぬままに 秋の穴へと落ちてゆくだけ







1989.9.11作

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10月17日土曜日

2005-09-06 23:55:55 | lyrics
午後に

低い雨雲が

何層も何層も重なって

台風がまたやってきたんだね

冷たい風が身体の芯まで吹きこんで

なぜか人恋しくぼんやりしてたら

パスタを落として

思わず床にしゃがみこむ


スイッチを押したら

30年前のポピュラーが流れて

おかあさん

あなたの懐かしい恋物語に似ているね


階段の下で

うずくまっていたのは

誰だったんだろう


秋のせい

みんなみんな

秋の夜のせい




1987.10.17作


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Marriage

2005-09-05 23:55:55 | lyrics
しろい歯が 笑って

しろい手が 飛んで

しろいブーケが 投げられて

しろい少女たちが 駆けつけて

しろい手袋と 歓声があがって

うすいくもが

青い空に流れて



もう迷わない

見つめ合う

ふたりなら

ふたりなら




過去作。
私にしては珍しい結婚制度肯定気味。今なら絶対書かないな


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天国から

2005-09-04 23:55:55 | lyrics
天国から

幸福の結晶がこぼれてくる

結晶は 宇宙の形をしていて

カリカリと鳴いている者たちを

優しく吸いとる



空を見上げているうちに

私自身もいつしか

吸いとられている



どこまでも

不思議に

快いかんじ






1989.2.10作


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nurse song

2005-09-03 23:55:55 | lyrics
かあさんが帰らないと
子どもが泣く

泣くんじゃないのよと
その子を河へ投げ捨てる


何か大事なものをお探しですか?


高い帽子の男が振り返る
黄色い汗を
スーツに隠して

仕事に行って参りますと
河沿いを駆けてゆく

電車に乗ってから
何年経ったのでしょうか

あんたは今でも
そこいらじゅうを
ぐるぐる回ってる

冷えたお手てはまっかっか
それでも握った右手は
あたたかだった


なにか大事なものをお探しですか?




1989年作
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完成した世界に

2005-09-02 23:55:55 | lyrics
完成した世界に
君は産まれた

作り直しのきかない世界にもう一度
君は新たな命を産もうとしている

いくつもの大きな洋製皿
いっぱいの料理を作って
一体だれに食わせる気だい

作ったそばから
隣りのポリバケツに
ほおり投げてゆくだけ

ポリバケツは 海の色をしている
海の青さをもっている


さあ

君のその崩れそうな腰を抱いて
出かけようじゃないか

かつて失われた楽園に向かって


すましていても
笑っているような顔の少女

女は繊細で情深くあらねばならず
男は目で数えられるものしか追わない


君の産んだ命はやはり
再び新しい命を産みだすのだろう

もうなにも創造されるものがない世界に向かって


さあ

ムーでも アトランティスでも
急いで上昇しよう

かつて失われた楽園へ向かって
かつて失われた楽園へ向かって




1989.8.15作


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スーパースター

2005-09-01 23:55:55 | lyrics
あんたのいう上等な経験とやらを見せてよ
彼らはまるで腐ったカーコロンのにおいがする


やあ!
汗をかくことを嫌うロックンローラー方々

僕らはいつだって君たちを支持するよ
ドラムの刻むビートには逆らえないからね

ほら
もう腰を気持ちよく振っている


しかしもろこしをつくる堆肥よりひどいにおいだ
これが今のゆるぎない地位を確立したのかい?


その白い手と
金色の髪と
青い眼は
何度鏡に映してもいいんだよ

君は今、世界中をにらむことだってできる


そのかわり、突如襲う美の報復に
君は絶望の崖から
もんどりうって墜ちるんだ

絶体絶命の脅威だけど
今、君はそいつを鼻で笑い飛ばすことだってできるのさ


(もう止めないと
 すっかりNYの通り魔か
 精神異常者になったつもりで
 いい気になってる君だけど)


オレンジに光る唇をちょっとゆがめるだけで
今、君は世界中の指導者を狂わすことだってできるのさ


ごらんよ
クリームでベタベタする手で
子どもたちが笑いかけている

あの啓示を見なかったって?
僕に聞かないでくれ
知らぬが仏ってもんさ


あと何億年かあとに
人口が今の千分の一になってるっていう統計が
当たっていればいいね

その時代にもう一度産まれかわれるなら


弾圧は静かに続いて
彼らは理解できない新しいものを
追い払おうと必死だけど

新しいものを生み出す欲求は抑えがたいよ
それを金に替えないのが僕らの特権だ


社会不安を書くのは容易いし
音楽で感動させるのもいいだろう

でもいま一番気にかかるのは
今日、いやこれからやってくる1分間を
一体どう過ごせばいいかってことだけ


突然の夕立も
飛行機の墜落事故も
所詮は他人事で
君にはサッパリ解らない


スポットライトの中に立ちつづけた
あのスーパースターが
なぜ自分じゃなかったのか

名作フィルムの名優は
なぜ別のだれかなのか

駅前通りに吊り下げられていても
肌の色さえ 誰も覚えていられない


そこでふと思うんだ

「もっとブランド品を身に着けるべきだったよ」ってね


彼はなりたいと思うように変化した
行きたい所はどこへでも旅をした

何百万人もの男女に出会い
顔を白く塗って 握手さえ求めた


ただひとつ訊ねるならば
君はそれから何を得たかい?

彼らは懲りずに
あらゆる制限を与えたけれども

いい加減ガタガタの鏡をのぞけば

ほら
まつげの下で老いが挨拶を交わしはじめているよ




1989.5.14作

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