■ワーグナー歌劇 『神々の黄昏』(全3幕)
バイロイト祝祭劇場管弦楽団 指揮:ダニエル・バレンボイム
出演:
ジークフリート:ジークフリート・イェルザレム
グンター:ボード・ブリンクマン
ハーゲン:フィリップ・カン
アルベリヒ:ギュンター・フォン・カンネン
ブリュンヒルデ:アン・エヴァンス
ヴァルトラウテ:ワルトラウト・マイアー
第1のノルン:ビルギッタ・スヴェンデン
第2のノルン:リンダ・フィニー
第3のノルン:ウタ・ブリエフ
ヴォークリンデ:ヒルデ・ライトランド
ヴェルグンデ:アンネッテ・キュッテンバウム
フロースヒルデ:ジェーン・ターナー
(1991年 バイロイト祝祭劇場録音)
これが『ニーベルングの指環』の第3夜でラスト。
▼あらすじ
運命の綱を縒る3人のノルンたちが歌う。
ウォータンがその昔、片目とひきかえに神木であるトネリコから槍の柄を作ったために樹は枯れ、泉も枯れた。
綱は切れ、ノルンたちは「母のもとへと下りましょう」と消える。
旅に出るジークフリートを見送るブリュンヒルデ。愛の証として指輪
をもらう。
ギービヒ家(変な名だ)のグンター(兄)とグートルーネ(妹)、
そしてアルベリヒの息子で兄妹とは父違いの兄弟ハーゲン。母はグリムヒルデ。
父の恨みを晴らすため、また指輪をわがものにするため、ハーゲンは策略を練る。
つまり、グンターにはブリュンヒルデを娶らせ、グートルーネの夫にジークフリートをあてがうため、
ジークフリートに魔薬の入った酒
を与え、妻ブリュンヒルデのことを一切忘れさせ、グートルーネに一目ぼれしてしまう![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_heart.gif)
グートルーネをもらうため、隠れ蓑でグンターに化け、炎
を渡ってブリュンヒルデを妻とするジークフリート。
屋敷に来たブリュンヒルデは、記憶を失ったジークフリートに失望し、彼を殺すよう命ずる。
狩りに出かけたジークフリートは、ラインの乙女から指輪を返さなければ死ぬと警告されるが笑って無視する。
手柄話をしているうちに薬が切れて、ブリュンヒルデを思い出すが時遅く、ハーゲンが背を刺して殺してしまう。
ハーゲンの策略で大勢がいともカンタンに憎しみ合ってしまうのは不自然なほど。
さっきまでめいっぱい讃えていた妻を1杯の飲み物ですっかり忘れてしまうって・・・
知恵の乙女ブリュンヒルデですら嫉妬に狂ってしまうし。
陽気で、心優しく、勇敢な英雄であったが、純真無知だったために殺されるジークフリート。
記憶を取り戻し、ブリュンヒルデとの出会いを思い出しながら死に至る歌がなんて悲しい!
♪ブリュンヒルデよ!聖なる花嫁よ!目覚めよ!瞳を開けよ!
誰がお前を眠りのうちへまた閉じ込めたのか?
誰がお前を恐ろしきまどろみへ陥れたのか?
目覚ます男が来たのだ!そして、口づけでお前を目覚ます。
そして、彼は新妻のために、その戒めを断ち切る。
そこにブリュンヒルデの喜びがほおえむのだ!
おおこの瞳よ。今やとこしえに開け!
ああこの息の快い流れ!甘き消滅!至幸の戦慄!
ブリュンヒルデが私にあいさつする!
夫の死を知って嘆き悲しむブリュンヒルデの歌はもっと悲しい。
♪おいしい乳をこぼしたといって、子どもたちがわめきたて、母親に訴えるのは聞こえたが、
いと気高き英雄の死にふさわしい嘆きの声は私の耳に聞こえない。
真紅の焔があの人のまわりで燃え上がろうとして、わが心までも捉えている。
彼に抱かれ、強い愛の力で、彼と契りを結ぶために!
ハイアーヤーホー!グラーネ!お前の主人に挨拶をなさい!
ジークフリート!ジークフリート!ご覧ください!
あなたの妻が、歓喜にあふれて挨拶するのです。
長い年月をかけて完成されたこの壮大な物語のラストを何度も書き直したというワーグナー。
その時ごとに違っているらしいが、ここでは、ブリュンヒルデは夫を焼き尽くす炎に自らも愛馬グラーネ
に乗って飛び込み、
ワルハルの神々の城にもローゲの炎が放たれ炎上する
という壮絶なエンディングで幕を閉じる。
解説を読むと、ワーグナーは、ブリュンヒルデを自立した女性として確立させているとのこと。なるほど。
神から人に堕ちはしても、あらゆる感情を通り抜け、自由を得た女性。
男が作り出した法は、自分らに過大なプレッシャーをも科して、首を絞めることにもなった。
ワーグナー自身が男性社会の矛盾に苦しんでいたという。
“権力と法を誤用した男性的エゴイズムが自分で自分の首を絞めるように破綻をきたした後で、
真に女性的なものこそが、すべての世の人々に救済をもたらす役割を担う”(解説からの抜粋)
その他の解説からの抜粋
p.12
ワーグナーの構想のユートピア的性格は、次の言葉において頂点を極める。
「すべての人々が天才的な創造行為に積極的に参加するべきである」
ワーグナーは、「三つの純粋に人間的な芸術分野」すなわち舞踏、音、詩という3芸術をドラマにおいて結びつけようという構想を書き留めている。
p.13
破局の成り行きが報道されるのを眺め興じている場面。それは、『神々の黄昏』の結末に隠された警告、不吉な予兆を本当のところはほとんど、いや、全くと言ってよいほど理解していなかった我々自身の写し絵でもある。災害をなすすべもなく見ている、それどころか災害を嗜好品のように味わう人々、それは『神々の黄昏』の結末を観劇する人々に比せられるものである。
p.14
本当の結末は音楽および「意思あるところに道は開ける」という究極的な愛の思想の中にある。
ジークフリートこそはその行為によって人類に自由をもたらすよう、ブリュンヒルデが考え出し、待望した英雄である。
p.18
地球が存続していくために有害無益なものとなった古い秩序、古いイデオロギーを、こうして彼女は無に帰せしめるのだ。
▼詳細な情報はこちら
バイロイト祝祭劇場管弦楽団 指揮:ダニエル・バレンボイム
出演:
ジークフリート:ジークフリート・イェルザレム
グンター:ボード・ブリンクマン
ハーゲン:フィリップ・カン
アルベリヒ:ギュンター・フォン・カンネン
ブリュンヒルデ:アン・エヴァンス
ヴァルトラウテ:ワルトラウト・マイアー
第1のノルン:ビルギッタ・スヴェンデン
第2のノルン:リンダ・フィニー
第3のノルン:ウタ・ブリエフ
ヴォークリンデ:ヒルデ・ライトランド
ヴェルグンデ:アンネッテ・キュッテンバウム
フロースヒルデ:ジェーン・ターナー
(1991年 バイロイト祝祭劇場録音)
これが『ニーベルングの指環』の第3夜でラスト。
▼あらすじ
運命の綱を縒る3人のノルンたちが歌う。
ウォータンがその昔、片目とひきかえに神木であるトネリコから槍の柄を作ったために樹は枯れ、泉も枯れた。
綱は切れ、ノルンたちは「母のもとへと下りましょう」と消える。
旅に出るジークフリートを見送るブリュンヒルデ。愛の証として指輪
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/girl_ring.gif)
ギービヒ家(変な名だ)のグンター(兄)とグートルーネ(妹)、
そしてアルベリヒの息子で兄妹とは父違いの兄弟ハーゲン。母はグリムヒルデ。
父の恨みを晴らすため、また指輪をわがものにするため、ハーゲンは策略を練る。
つまり、グンターにはブリュンヒルデを娶らせ、グートルーネの夫にジークフリートをあてがうため、
ジークフリートに魔薬の入った酒
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/cocktail.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_heart.gif)
グートルーネをもらうため、隠れ蓑でグンターに化け、炎
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/v.gif)
屋敷に来たブリュンヒルデは、記憶を失ったジークフリートに失望し、彼を殺すよう命ずる。
狩りに出かけたジークフリートは、ラインの乙女から指輪を返さなければ死ぬと警告されるが笑って無視する。
手柄話をしているうちに薬が切れて、ブリュンヒルデを思い出すが時遅く、ハーゲンが背を刺して殺してしまう。
ハーゲンの策略で大勢がいともカンタンに憎しみ合ってしまうのは不自然なほど。
さっきまでめいっぱい讃えていた妻を1杯の飲み物ですっかり忘れてしまうって・・・
知恵の乙女ブリュンヒルデですら嫉妬に狂ってしまうし。
陽気で、心優しく、勇敢な英雄であったが、純真無知だったために殺されるジークフリート。
記憶を取り戻し、ブリュンヒルデとの出会いを思い出しながら死に至る歌がなんて悲しい!
♪ブリュンヒルデよ!聖なる花嫁よ!目覚めよ!瞳を開けよ!
誰がお前を眠りのうちへまた閉じ込めたのか?
誰がお前を恐ろしきまどろみへ陥れたのか?
目覚ます男が来たのだ!そして、口づけでお前を目覚ます。
そして、彼は新妻のために、その戒めを断ち切る。
そこにブリュンヒルデの喜びがほおえむのだ!
おおこの瞳よ。今やとこしえに開け!
ああこの息の快い流れ!甘き消滅!至幸の戦慄!
ブリュンヒルデが私にあいさつする!
夫の死を知って嘆き悲しむブリュンヒルデの歌はもっと悲しい。
♪おいしい乳をこぼしたといって、子どもたちがわめきたて、母親に訴えるのは聞こえたが、
いと気高き英雄の死にふさわしい嘆きの声は私の耳に聞こえない。
真紅の焔があの人のまわりで燃え上がろうとして、わが心までも捉えている。
彼に抱かれ、強い愛の力で、彼と契りを結ぶために!
ハイアーヤーホー!グラーネ!お前の主人に挨拶をなさい!
ジークフリート!ジークフリート!ご覧ください!
あなたの妻が、歓喜にあふれて挨拶するのです。
長い年月をかけて完成されたこの壮大な物語のラストを何度も書き直したというワーグナー。
その時ごとに違っているらしいが、ここでは、ブリュンヒルデは夫を焼き尽くす炎に自らも愛馬グラーネ
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ワルハルの神々の城にもローゲの炎が放たれ炎上する
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/etc_fire.gif)
解説を読むと、ワーグナーは、ブリュンヒルデを自立した女性として確立させているとのこと。なるほど。
神から人に堕ちはしても、あらゆる感情を通り抜け、自由を得た女性。
男が作り出した法は、自分らに過大なプレッシャーをも科して、首を絞めることにもなった。
ワーグナー自身が男性社会の矛盾に苦しんでいたという。
“権力と法を誤用した男性的エゴイズムが自分で自分の首を絞めるように破綻をきたした後で、
真に女性的なものこそが、すべての世の人々に救済をもたらす役割を担う”(解説からの抜粋)
その他の解説からの抜粋
p.12
ワーグナーの構想のユートピア的性格は、次の言葉において頂点を極める。
「すべての人々が天才的な創造行為に積極的に参加するべきである」
ワーグナーは、「三つの純粋に人間的な芸術分野」すなわち舞踏、音、詩という3芸術をドラマにおいて結びつけようという構想を書き留めている。
p.13
破局の成り行きが報道されるのを眺め興じている場面。それは、『神々の黄昏』の結末に隠された警告、不吉な予兆を本当のところはほとんど、いや、全くと言ってよいほど理解していなかった我々自身の写し絵でもある。災害をなすすべもなく見ている、それどころか災害を嗜好品のように味わう人々、それは『神々の黄昏』の結末を観劇する人々に比せられるものである。
p.14
本当の結末は音楽および「意思あるところに道は開ける」という究極的な愛の思想の中にある。
ジークフリートこそはその行為によって人類に自由をもたらすよう、ブリュンヒルデが考え出し、待望した英雄である。
p.18
地球が存続していくために有害無益なものとなった古い秩序、古いイデオロギーを、こうして彼女は無に帰せしめるのだ。
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