私の方は1月間、何よりも朝夕の食事作りには悩ませられたが、結局、彼らの好みに合わせざるを得ず、私としても自分を褒めたい位頑張った。
初め、野菜を食べないのは彼らだけかと思っていたが、友人が遊びに来た時、日曜日の昼に集まってしたバーべキュウについて聞いて見た。
「昨日のバーべキュウは美味しかった?何を買って来て焼いたの?」
「チキンとポテト。」
「それだけだったの?他の野菜は?」
「ない。ポテトがあれば大丈夫。」
「‥‥」
我が家の2人だけではなかったのだ。
それ以来、私は腹をくくって肉とじゃが芋の料理を毎回工夫したのだった。
ところで最後の夕食後、ロシアのダーチャ(小屋付き家庭菜園)について2人に尋ねた。
「あなた達の家にもダーチャはあるの?」
「ハイ、あります。」と、2人が答えた。
「どの位の広さ?」
「私の家の土地は○㎡だけど、それより広いの?」
「もう少し広い。」
「土地は国から借りているの?」
「いいえ。お金を出して買います。高いです。」
「何月から何月まで仕事をするの?そこでは何を育てているの?」
「5月から10月までで、週末にはそこに家族で行って仕事をして、小屋に泊まって来たりします。作っているのは、ポテト、かぼちゃ、苺、コーン、人参、それとビニールハウスでトマトとキューリもです。りんごの木もある。」
ええっ!そんなに色々作っているなら、どうしてそれらを食べないのだろうかと不思議だった。
彼らからダーチャの事を聞くまでは、極東地域では限られた野菜しか採れないし、店でも売られていないから食べられないのだろうと勝手に思っていたが、違ったのだ。
とすると彼らの極端な偏食は、気候風土の条件の悪さだけではなく、小さい頃からの家庭の食生活、食育の問題なのだろうか。
(ドイツはじゃが芋をほぼ主食の位置に置いている。またヨーロッパ全域でもフライドポテトや茹でじゃが、マッシュポテト、スープなどにして毎日沢山食べている。東南アジア、ハワイなどでも、キク芋、キャッサバ(別名タピオカ)等を多く食べる事が知られている。
生のじゃが芋100gの栄養は、水分が80%だが炭水化物が17.6%と一般の野菜よりかなり多いので、76kcalあるが、低カロリー食品と言える。またカリウムを410mgも含むので血圧抑制作用もある。そして何といっても35mgも含まれるビタミンCは澱粉に包まれているため加熱されても他の野菜のビタミンCに比べて壊れないという良い点がある。ただビタミンAは含まれないし、脂質が少ないので、やはり他の食品で補う必要がある)
話は変わるが、ロシア人の平均寿命は1998年調査で少し古いが、男性61.3歳(日本77.16歳)、女性72.9歳(日本84.01歳)である。
日本は世界1位だが、ロシアは男性が世界135位、女性は世界100位なのだ。(小林和夫著 「図解 ロシアの仕組み」による)
著者はロシア科学アカデミーの専門家の見方として、①殺人・自殺・事故・災害②心臓病が短命の原因だという。
90年代前半と比較して自殺者が増大していること、また心臓病の原因にアルコール濃度の高いウオッカなどのアルコール中毒、それと健康的な食生活の知識が不足し、油っこい肉、卵、サワークリーム、バターなどの過食を挙げている。
私の目から見て、2人共、トーストに塗るバターやジャムの量は、驚きの量だったし、学校教育では栄養や調理科学を学ぶ家庭科のような教科はないとも聞いた。(ソ連時代に旅行した時、飛行機で隣席の男性がパンに塗るバターの量も凄かった)
考えたら可哀相なのだ。色々な食材があるのに、限られたものしか食べないのだから。
彼らには私達のような食生活を楽しむという発想は、弱いのかも知れない。
まあ、日本のように世界中から札びらを切って食糧を買い漁り、一見、世界一豊かな食生活を謳歌しているのも、実は逆の色々な問題があるのだが‥。
本当に気疲れしたが、色々と考えさせられた今年のホストファミリー体験でもあった。