先週、図書館から借りて野澤千絵著「老いる家 崩れる町ー住宅過剰社会の末路」という新書本(講談社現代新書)を読んだ。
それには現在の住宅事情とその問題点が分かり易く書かれていた。
内容を私なりにまとめると、中古住宅が右肩上がりで増加して行っている。
またやがて団塊の世代が老化して死を迎え、相続放棄されたり管理されない空家が沢山できる時代が直ぐ来る。
それにも拘わらず、このまま新築住宅をほぼ無制限に建て、住宅地の開発を無規律に近い状況で許すという都市開発が全国で進めば、やがてそのつけは既にその町に暮らしている多くの市民が負わなくてはならなくなる。
そればかりか、公共投資に財源が回らなくなり、市民にとって大きな損害になる。
だから現在の宅地造成、新築住宅の建設の考え方を見直す時に来ているという内容だった。
確かに市街化調整地域にバラバラと戸建て住宅や高層マンションが建って行くと、道路、電気、上下水道などのインフラ整備をしなければならなくなる。これには莫大な予算が必要になる。
また、バス、商店、病院、学校、保育所、図書館などの生活インフラが無ければ、そこに新たに住もうとする人は少なく、新築の空家や空き部屋が増え、環境悪化をもたらす地域となるかも知れない。
しかし、現状では、銀行が低利でローンを組むために、相続税対策などと言って不動産屋の言うがままに賃貸住宅を建てる人が後を絶たないという。
一方、自治体側は、「人口増加」を絶対目標として掲げ、メリットの大きな国の交付金を当てにした住宅地の造成や新開発地の造成を進めているという。
最後には、この悪循環を断ち切って、今後の町や都市にとってどのようにして行くのが最善策なのか、まず空き家対策にどう手を付けたら良いのかなどを考えるポイントも提起されていた。不動産の登記や相続のしかたにも大きく関わる問題なのだ。
私は今まで町の都市開発計画についてほとんど関心が無かったが、これからは関心を持つ事が大切だと思えて来た。
自分も市の税金の支え手の一人であり、地域環境の担い手の一人だという意識が、この本で初めて芽生えた。
住環境はただ与えられるものではなく、市民一人ひとりの貴重な財産だとして捕らえて行く事が重要だと学んだ。豊富な資料と調査に基づいた読み応えがある一冊だった。
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