トルストイとちがいドストエフスキーの小説には幼年時代、少年時代を描いたものが少ない。
三大長編(悪霊、未成年、カラマーゾフの父子シリーズ)でも幼年時代、少年時代の描写がある程度詳しく出ているのは未成年のみである。
もっとも、リニアな時系列描写ではなくて、未成年(19歳)である主人公の回想を彩るアネクドートとしてちりばめられている。しかし、分量にすると相当になるし、単に履歴書的、叙事詩的記述ではなくて、なんというか、ディケンズ的な迫力でたっぷりと描かれている。
未成年はよく教養小説といわれるが、わたしはむしろディケンズ風味の心理小説と言いたい。