ノンフィクション小説だそうである。妙な解説がついている(文春文庫)秋山駿氏。
近代日本の犯罪小説の嚆矢だそうである。60点はグロスである。5点は香典である。合掌。ネットで55点。
カトリック教徒の連続殺人犯のマンハントを捜査側の資料にそって記述している。直木賞を取ったというからところどころで記述に冴えがあるが、全体にまとまり無く、記述混乱、非常に理解フォローしにくい。これを小筆の読解力の欠如とすることも可能である。
タイトルと内容のつながりが分からない。全部舐める様にして読めばあるいはなにかあるのかも知れない。
追う側(警察)の資料に全面的に頼っているので小説的な感興は湧かない。犯人は膨大な手記を残したらしいが全くと言っていいほど小説には採用されていない。内容が平凡なものであったのか。
犯人側の視点が少なくとも30パーセントぐらいは描けていないとつまらないものになる。唯一目を惹いたのは犯人の言葉として引用されている「この数十日間、すなわち最初の犯行から捕まるまで、ほど人生で充実したときはなかった」という言葉くらいだろうか。キリスト教徒として逃走中もミサに参加していたというが、宗教と犯罪のからみを掘り下げる力量があったらもう少し興味深い作品になったかも知れない。