穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

フラニーとズーイの突っ張り合戦

2015-12-06 17:40:39 | サリンジャー

 ようやっと読み終わった。といっても最後の2、30頁は読んでいない。読むに耐えない。サリンジャーはライ麦畑とこれしか読んでいないが、突っ張り小説しか書けないのかな。ライ麦畑より兄と妹はそれぞれ10歳ほど年上だ。もっともライ麦畑の兄弟がそのまま成長した訳ではない。名前が違うし。

突っ張り小説という点では同じだ。それもきょうだいの場面だけで。よほど何かがあるのかな、特殊な状況設定を繰り返すのは。さてこの本の兄の方は25歳くらいの役者である。妹は20歳くらいの大学生。すべての知り合いをくさしているのはライ麦と同じ。ライ麦のときは高校生だから突っ張りも面白みがあったが、良い大人がこれじゃ興ざめだ。

この本についての、どの評論でも宗教がらみ(特にインド、日本の、仏教や禅の)の屁理屈を深刻に受け止めてまじめに研究している。評論家の中には大真面目で頭をひねっている人もいるらしい。笑うべきことである。

村上春樹氏の解説によると、ライ麦畑に続きニューヨーカー誌上に掲載された本書も大変うけがよかったという。ニューヨーク知識階級のハイブラウぶり(間抜けぶり)に敬意を表しておこう。

サリンジャーは本書を最後に擱筆したというが、これじゃ書き続けられないだろうなと思う。精神病院にでも隠遁しない限りこの延長線上の作品はかけないだろう。