穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

トリックスターとはだれか

2022-02-15 15:31:09 | 書評

 解説の馳星周の解説にはほかにもおかしなところがある。「トリックスターなんだよ」といきんでいるのだね、何回か短い文章の中で。主語が分からない文章だ。作者つまり東野のことを言っているようでもあるし、登場人物の誰かを言っているようでもある。しかしトリックスターなんていうキャラはいないんだよ。普通の語の意味では。
 トリックスターと言うのは普通の意味ではペテン師、詐欺師ということだ。東野がペテン師ということなのか。それともモンスター役の2人なのか。これのほうがまだ通る。しかし普通の意味なら日本語として、こなれていないトリックスターなんて言葉を使うのは変だ。単にペテン師と言えばいい。しかも、この二人のモンスターは単純な詐欺師ではない。
 もう一つ、トリックスターと言うのは作劇上、あるいは小説評論史上で使われる意味がある。あまり一般的ではないが。それは道化師と言う意味で、しかも作劇上、進行に必要な役割を果たしている人物のことを言う。評論家のバフチンなどが多用した用語だ。日本語の「狂言回し」という言葉に通じるところがある。劇、小説の筋の推進エンジンとしての道化ね。そして二人はそういう意味合いのキャラではない。
 もっとも、ガキ相手の劇画世界ではトリックスターと言う用語に別の意味があるのかもしれない。
 なお、前回二人のモンスターは小説初頭で男は高校生と記憶間違いをしましたが、女性と同様に十歳くらいの年齢でした。読み返してみて確認しました。