穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

版権のとらぶるか

2023-10-11 16:15:43 | 書評

岩波版荷風小説には戦後の作品が四編しか採用されていない。最晩年はともかく、短編が主とはいえ、断腸亭日乗によれば戦後多くの作品を発表しているにも関わらず四作品しか採用されていない。

採用される質が劣るというなら何らかの言及があって然るべきである。」普通作家の全作品リストがあり、作品の年譜があるがそれもない。

考えられるもっとも有力な説は版権の問題で収録できなかったのであろう。終戦直後の混乱期で各出版社、雑誌に発表されたものは版権がはっきりしない、あるいは紛糾があるという理由しか考えられない。

晩年の作品は不可欠だ。傾向、筆力、などの観点から網羅的に収録するのが良心的である。出来なければその理由を明記するのが岩波の義務である。