食わず嫌い、というのではないが、有名な小説で長年の間読む気がしなかったという小説があるものだ。理由は本人にもわからない。書店で思いついて引っこ抜くがまた棚に戻してしまう。
なにか、作者に反感があるというわけでもない。伝え聞く内容が気に食わないというわけでもないのだが。
そういう本の一つにスタンダールの「赤と黒」がある。大抵の人なら読書経験の浅いうちに読んでしまっているものだろう。ところが私の場合、上に述べたような事情で読んでいないのだ。
岩波の荷風全集の断腸亭日乗全七巻をどうやら読み終わって、口(目)寂しい折からか、今日、本屋で新潮文庫の赤と黒を買った。上下巻で千ページ近くある。だいぶ持つだろう。