ハメットは作中にたとえ話を入れるが、下手というか適切でない。妙なものが多い。
たしかマルタの鷹でだったとおもうが、会社員が昼飯に出たときに工事現場で資材が近くに落下した事故で間一髪事故を逃れる。これに人生の真理を感得した男が突然家、家族から蒸発した話をする。なんのことか分からない。何か言おうとしたのだろうが、例が適切でないから妙な感じがするだけだ。
ところが世の中は広いものでたいていの書評屋はこの挿話を素晴らしいという。なにか深遠な人生の哲理を表している寓話というのだ。まいったね。
「ガラスの鍵」にも旧約聖書外典ユディット書(ユデト書)」のことが出てくる。これがみょうちきりんなのだ。まったく違う意味で引用されてボーモンのお説教に使われている。
この誤引用は意図的なのか。つまりボーモンの無知で知ったかぶりの耳学問を挿入して彼のキャラを立たせるためか。民間では訛伝としてそのように使われることがあるのか(日本でもよくあるがね、こういう例が)。
次回: よく出来たラスト謎解き