どうみても中学生の作文にしかみえないんだけどね。新潮文庫の亀井勝一郎の評価がすごい。そうすると、おいらの文章観賞力がゆがんでいるのかと心配になって、岩波文庫の解説を立ち読みした。長部日出男とかいう人だ。知らない人だ。もっともオイラは関連業界の人間ではないから、ほとんど業界人の名前はしらないのだが。
ところが、彼も大絶賛、まいった。おれの感覚がおかしいらしいね。
ところで長部さんの解説で小説の中で「紫色の着物を着こなすのは女でも難しい」とあるのを、男で、ここまで女の心理を理解する作家は絶無であるというようなことを言っている。しっかりしてくださいよ、そのくらいのことは分かる人には分かるし、第一人の色彩のセンスはまちまちだからこう断定するほうがおかしいのかもしれないが。
いずれにしても、長部さんは偉い文芸評論家なんだろうが、この下りはどう考えても珍妙だ。
二人の解説に共通しているのは、この作品は人間失格や斜陽とことなるタイプであるというものだ。この点は納得。そしてこの作品を代表作、最高傑作と言っていたかな、と判定していることだ。オイラもむかし、斜陽とか読んだ時にはほとんど印象感銘を受けず、内容もまったく記憶に残っていない。津軽は恥ずかしながら初読であるが、読み終わったら忘れてしまいそうだから、甲乙つけがたいとはいえる。
岩波、新潮文庫の両解説者は太宰の文章を名文であると言う。これもちょっと首をひねりたくなる。
じゃ何故買って読むのかと反論されそうだが、オビにつられたのかな。家族の陰鬱な関係が描かれているとか。どういう風に、と興味を持ったと言うことだ。もっとも100ページまでだと出てこない。
ただ、ある箇所で、どんな作家でも家族のことを書くのが一番難しい、というくだりがある。予告編かな。もっともあらすじ(インターネット情報)や解説で後半の内容も大体把握出来るが、ほとんど実のある描写は期待できないようである。
そういえば最近、得意の本屋の立ち読みで、予備校教師の出口とか言う人の書いたもので、太宰治に名文を学ぶとかいう題の本があった。へえ、と思ったが、今思い出した。
こうなると、けなすのは怖くなるね。
次号は家系と言うか家庭について。