今その会社がどうなっているかっていうのか。経営破綻して会社更生法を申請したがうまく行かなかった。破産して雲散霧消してしまった。ざまあ見やがれというところだが、第三勢力の話もしておこう。
諸君の疑念の声が聞こえてくるようだ。君はこれを日記だとか個人用のノートだとか書いているが、まるで読者に向って書いている様に見えるってね。いや、ご指摘ごもっともなれど、これはあくまでも私的なメモである。しかし、なんだ、第三者の不特定多数の読者に向って書いているつもりになると、なにか文章が整ってくるような気分になるんだな。誤字があってはいけないとか「多少は」注意するようになる。一応文章は繋がっているかなとかね。もっとも意図的に飛躍しているところもあるが。もともと文章は与太っているんだが、これは是正の仕様がない。ご容赦を請う次第である。
さて、第一勢力である左翼的色彩の濃い既存の(第一組合)とそれに対抗してストに悩む経営陣への土産にと学生運動崩れの社員が作った御用組合(第二組合)の話はした。これは社員同士のシマ争いなんだが、これに加えて経営陣内部で分裂が生じた。
銀行からの天下りの役員がいたが副社長にまで上り詰めていた。彼は社内のていたらくと役員の無能力をみてにわかに野心鬱勃たるものを感じたわけである。経営陣のなかで自分の同調者を集め始めた。なかなかのやり手で銀行上がりで対外的な折衝では実績をあげていたから、今では経営陣の三分の一ほどが彼についていた。社員の間には組織はなかったが、海外事業とか国内の業界内の事案については自分の職掌範囲だったし、自分が目をつけた社員を囲い込んだ。そこで俺も目を付けられたわけだ。
俺は前にも書いた様に社内のアフターファイブの付き合いは毛嫌いしたが、対外的な折衝は嫌いではなかったしそれなりの評価はされていたのである。入社以来内向きの仕事と対外的な仕事をローテーションの様に交代でやらされたが、俺の性格から対外的な仕事をしている時のほうが楽しかったし、好調だったのである。
そんな訳で、どの組合にも入っていないという希少価値も使い勝手があると副社長に目をつけられたのだろう。
ところがその副社長が突然退場してしまった。ゴルフ場で素振りの練習をしていた相手のクラブが彼の頭部を強打したのである。