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観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



北京オリンピック観戦記(3)

あっと言う間に、前半が終わってしまった北京オリンピック。テレビ観戦をしていての感想を書き留めておきたい。

1)競泳、脅威の記録ラッシュ
北島康介の2種目・2連覇、そして、今日の段階でのM・フェルプスの7冠に、なによりも敬意を表したい。
その競泳では、レーザーレーサーを着た選手たちが、予選の段階から記録を出し続けた。そして、その記録の伸ばし方が半端でない。
スイムウエアは、競泳競技において唯一の道具といえるわけだから、その性能が、成績に大きく影響するのは当然かもしれないが、これほどとは思わなかった。
ただ、これほど世界新記録や日本新記録が出続けると、変な疑いも湧いてこないではない。オリンピックのために新しくできたこの「国家水泳センター(水立方」の競泳プールの距離は、本当に、ちゃんと片道50メートルあるのだろうか?
競泳の新記録ラッシュを見ながら、かつて、北京マラソンで、大会のたびに、好(怪?)記録が生まれ、距離が問題になっていたことを思い出したのである。

2)日本柔道惨敗
日本柔道の成績が過去最低らしい。とくに男子は、金メダル2個に終わっただけでなく、その内容がとてもさびしいものだった。日本代表選手団の主将を務めた鈴木桂司が、初戦と敗者復活戦でともに一本負けしたのは衝撃的だった。
一本勝ちにこだわる日本柔道が、オリンピックなどの世界大会の基準にあわないということは、これまでもずっといわれ続けてきた。しかし、今大会の男子柔道の惨敗は、それ以前の問題ではないのか。実力不足なのか、準備不足なのか。
その世界基準にあわせた柔道をしてきて、批判的な厳しいことを言われ続けてきた石井慧が、1本勝ちを続けて金メダルに輝いたのはなんとも皮肉だった。

3)日本サッカー、男女の明暗
サッカー日本代表は、男女ともに、初戦でつまづいたが、その後は明暗が分かれた。
男子は、結局3連敗でグループリーグ敗退。米国、ナイジェリア、オランダと一緒で、確かに厳しいグループだったが、実際には、オランダの不出来などもあり、十分に勝ち抜くことが可能だったのではないか。もちろん、日本がこの大会に向けて、もっと周到に準備をしていればである。
大会直前までの反町ジャパンの成長は、本大会への期待を抱かせるものだったが、オーバーエイジ枠の問題あたりから、おかしくなった。そして、本番での反町監督の采配、選手の発言などを見聞きする限りでは、3連敗は当然の結果だっと言わざるを得ない。
その一方で、女子代表「なでしこジャパン」は見事な快進撃を続けている。
初戦のニュージーランド戦を澤の同点ゴールでなんとか引き分けにするも、米国に惜敗。しかし、ノルウェーに完勝して波に乗った。昨日の地元中国との戦いでも、危なげない勝ち方だった。
エース澤を中心に、ボランチのコンビを組む坂口や技巧派でセンス抜群の宮間が、1試合ごとに自信をつけている。
2試合目の米国戦から最終ラインに入った池田主将のラインコントロールと前線からのチェイシング、その間をカバーする澤と坂口のポジショニングによって、早めにピンチの芽を摘み取ることができる。
スタジアムで見ていれば、なでしこたちが絶妙なバランスで、ピッチ全体を動き回っていることがわかることだろう。
体格差を、体力、技術、精神力、判断力によってカバーすることで、「なでしこ」らしいサッカーを世界にアピールし、勝利につなげていることが素晴らしい。
メキシコ・オリンピックの夢の再現、否、その夢を超えることが、「なでしこ」たちの足にかかってきた。

4)野口みずき欠場の衝撃と影響
今大会では、日本選手による2連覇が目立った。オリンピックという大舞台での勝ち方を知っているからなのか、勝つことの味を知ってしまった故のオリンピックへの執着なのか、あるいは、彼らを超える後進が育たなかったからなのか。
その2連覇に最も近いはずだった、女子マラソンの野口みずき選手が、大会中、レース直前に欠場を表明した。脚部のけがが原因とのこと。
スポーツ選手が、けがや体調不良で競技を欠場することは仕方がないことである。しかし、今や頂点に立つスポーツ選手は、単にスポーツ選手というだけでなく、高い契約料金をもらっている広告キャラクターでもある。
野口選手がオリンピック欠場を発表した後も、彼女が走っているテレビCMが、オリンピックを中継する番組で流れ続けた。女子マラソンの翌日の新聞には、その企業の広告が大々的に載るはずだった。おそらく、勝てば、おめでとう、負けても、感動ありがとう、のように。しかし、欠場となると……。そこまでのリスクは当然考えているとしても、その影響ははかりしれない。

5)開会式の偽装と日本選手のメディア対応
開会式の「偽装」が話題になっている。足跡型の花火、歌姫の口パク、全民族集合の嘘などだ。いかにも中国らしいと思う。
個人的には、花火は「演出」として、CGであるということを明かすのならば、許してもいいかなと思う。開会式なんてテレビ用のイベントなのだから。しかし、口パクについては、そこまで見た目のかわいさと声の美しさにこだわる必要があるのか。また民族集合については、できないことは、やるな。
結局、中国の威信をかけた演出が、偽装とみなされ、その威信を貶める結果になっている。北京オリンピック組織委員会(BOCOG)は、開会式の演出あるいは偽装を、世界各国のメディアがどのようにとらえるか、わからなかったのではないか。中国国内のメディアのように、十分にコントロールできると考えていたのではないか。あさはかであると思う。
BOCOGとは別の意味で、メディアを意識している、というよりも意識しすぎていると感じるのが日本代表の選手たちだ。
「支えてくれた人たちに感謝したい」というのが、今大会のインタビューの決まり文句になっている。
選手がしっかりとインタビューに受け答えすることはいいことだし、メディアトレーニングの成果が出ているのだろう。しかし、競技直後のインタビューなのだから、もっと別の言葉を聞いてみたい。「支えてくれた…」という同じセリフが繰り返されるたびに、しらけてしまう。インタビューのなかで言わなくても、関係者や家族などへの感謝の気持ちがないなどとは、思ったりしないから。



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