0-0のドロー。
2位今治と3位カターレの、勝ち点差3での直接対決。勝てば順位を逆転できる、それでなくともホームで負けるわけにはいかないーーーモチベーションになる一方で、プレッシャーにもなる状況での試合でしたが。
どちらか一方にペースが傾くことはなく、鍔迫り合いが続くなか。終了のホイッスルが鳴るまで、双方のゴールともに揺れることのないまま。
スコアレスドローもやむなしという内容の試合で、勝ち点1ずつを分け合う決着となったのでした。
10000人チャレンジーーー個人的には、本音を言うなら懐疑的でした。
もちろん、社長以下スタッフ、選手らも含めて、クラブ一丸となったチャレンジであったことは知っていました。その営業努力も、相当に気合を入れていたらしいことも。
5月のルヴァンカップ神戸戦では、平日夜という条件であったにもかかわらず、8000人を超える動員を記録した。ならば、やってやれないことはない!と。
ただ、それでも。
神戸戦は、普通ならば対戦することのないJ1のビッグクラブが相手という、イレギュラーなカード。そのプレミアム感由来の集客というものは、間違いなくあったはずで。
2位と3位との直接対決、カターレにとっては超重要な対戦ではあるものの。
言ってはなんですが、一般層に向けては、今治には神戸ほどのプレミアム感は無く。来場される今治サポーターは、もちろん歓迎するものの・・・先の北陸ダービーのように、隣県だからとアウェイ戦に2000人が駆け付けた、ということは起こらず。
その2000人を加えて9200人であった金沢戦。それを、ほぼカターレ富山ファン・サポーターだけで超えねばならない、と。
正直に言ってしまえば、無理なんじゃないかと思っていました。
そりゃ、いわゆる「ガチ勢」たる我々は、無条件に駆け付けますとも。ただ、それよりもライトな層は・・・営業を頑張っていることは確か。けれど、それと実際に足を運ぶかどうかは、また別ではないかと。
もう10年もJ3暮らし。動員的に近年は盛り返してきているとはいえ、J2時代よりも、ライト層受けは良くないと言わざるを得ない。事実として、平均動員数はあの頃には及ばないわけで。
呼びかけたからといって、ならば、と実際に県総まで来る人というものに、どれだけの期待をしていいのか?と。
降格以後、明らかに下がった注目度。忸怩たる思いを抱えつつ、「それでも!」と応援し続けてきたワタシとしては。
「J3だから」などと簡単に見放すようなライト層には、結果でもってーーーJ2復帰という事実を突きつけることで、理解らせるしかないのでは、と思っていましたので。
ハッキリ言って、10000人越えは、期待していませんでした。
しかし。
蓋を開けてみれば、どうだ。
帰りの混雑を見越してクルマではなくバイクで行くことを選択しましたが、それが大正解。
開場時間前どころか、そのまた1時間前、キックオフ3時間前くらいの時点で、既に県総周辺の駐車場は満車状態。正直、予想外でした。
いざ入場してみると・・・多い。明らかに、多い。
とても、いつもと同じ時間帯の開場時間前の風景とは思えないほどに。
直近の多くの来場があった試合と言えば、8月の松本山雅戦で5816人。それよりも、明らかに多い。いや、それよりも。あの8223人という動員を記録した神戸戦と比べても、まったく引けをとらないのでは?
開場時間あたりでは、長蛇の列が形成され。シーズンパスホルダーの先行入場が、きちんと先行入場として機能。普段の試合では、まったくそんなことはないというのに。
その後、一般入場が開始されても、途切れない入場列。いったいどうなっている?
キックオフ1時間前、選手たちのウォーミングアップの時間くらいで、多い時のスタンドの埋まり具合。もちろん、未入場者も多くいる状態で。
そして、キックオフ時間。
アウェイ側スタンドの今治サポーターは、想定程度という数で。遠くまでよくぞお越しくださいました、と。
それ以外が、圧巻。
メイン、ゴール裏、バックと、青く染まるスタンド。それらの埋まり具合で言えば、アウェイブーストがかかっていないぶん、さらに密集度が増して見えて。
「こんなに多いのか!」
スミマセン、なめていました。みくびっていました。あなどっていました。
ハッキリと、自分の見込み違いを認めざるを得ない、と。
今のカターレは、ここまで集客できるポテンシャルがあったのか、と。
数字としては、9700人はチャレンジ未達ではあります。大台越えは、ならずと。
しかし、それでも。
充分に、10000人に準じる数字と言えます。
なんというか・・・熱心に応援する「ガチ勢」であるかゆえに、却って富山のポテンシャルを信じ切れなかったというのも、皮肉というかなんというか。
ただそれも、何の根拠もない記録ではないということ。
今シーズンのカターレには、それだけの、10000人が応援するだけの価値が認められた証、とも言えるわけで。
ならばこそ。
これまで応援を続けてきた身としては、背筋を伸ばし、襟を正さねばならないところ。
カターレ富山は、応援するに値する、誇りをかけるに値するクラブだと、再認識させられたからには。
シーズンも残り少なくなるなか、より一層、応援にも気を引き締めねばならないなと。
話を試合に戻して。
スタメンは、ここ最近の試合のメンバーを軸としつつ、西矢と布施谷を起用。運動量とサイドからの上がり、クロスを期待されての抜擢だったのでしょう。
一方の今治は、前節ハットトリックを決めたウェズレイ タンキがサブメンバーに。U19代表招集から復帰のFW横山 夢樹がスタメン。
互いにとって、交代メンバーを含めて90分いかに戦いきるかが問われる試合となりました。
試合のほうは、お互いに堅い展開というか。
攻撃力に自信を持つ今治にペースを握らせるわけにはいかないなかで、安易なミスがあっては、相手の思うツボというところでしょう。
前節の讃岐戦で、こちら側のミス、まずいプレーから失点し、危うく負けかけたこともあり。それでなくとも上位直接対決というプレッシャーがかかる試合。なかなか思うようにいかない、決定的なチャンスにまで結びつかない展開が続きました。
そんななかで躍動していたのが、ヨシキ。
ボールコントロール、相手をかわすテクニックという持ち味もさることながら。目を惹いたのが、そのプレーエリア。まさにピッチ上を縦横無尽に駆け、攻守にわたってチームを動かしていました。
そのアグレッシブさというものが、なんとも頼もしい限り。昨シーズンの特別指定での出場経験があるとはいえ、今シーズンがルーキーイヤーである選手ーーーその前提を忘れそうになるくらいに、カターレにとってなくてはならない選手として躍動しているな、と。
昨シーズンのアウェイ戦でハットトリックをくらってしまったヴィニシウス、2年連続でホームでゴールを許してしまっている近藤 高虎など、いざハマってしまえば失点待ったなしという選手がいるなかでも。今治の攻撃を、しっかりと集中してしのぎ続けるカターレ。
ただ・・・そのなかで。
言いたくはない。言いたくはないけれど、それでも。
ホームアドバンテージとして有利なジャッジをしろとまでは言わない。けれど、なんで相手の・・・今治に有利なジャッジばかりする審判なんだよ!と。
こちらが転んでも流され、相手がこけたらすぐに笛。ただでさえ荒いプレーが多い印象の今治だというのに。
腕を使って相手を止めようとするまでは、ギリギリでファウルではないのかもしれないけれど・・・それ、肘が入ってないか?なのにスルーかよ!
付け加えて、今治の時間稼ぎともとれるプレーがあれば。
そんなことで集中を乱してはならないことは知りつつも・・・前節に続き、またもホームでストレスのたまるジャッジをされては、気分も悪くなろうというもの。
そして、今治の側も。
もちろん勝利を目指してはいたでしょうが、いざというときには引き分けもOKという気構えでいたかもしれません。
そのあたりの老獪さというか・・・前節の讃岐に比べては、伊達に2位にいるチームではない、ということだったのかもしれませんが。
引き分けならば、順位を逆転されることはない、と。
当然カターレとしては、それをうち破って勝利せねばならなかったところ。
しかし、気が逸ってミスにつながり、それを突かれて失点し、敗戦につながるようなことがあっては本末転倒。難しい判断が迫られました。
スコアレスのままに進む試合。
消耗戦の様相を呈し、カターレの側も引き分けを覚悟せねばならない展開に。
本来ならば、この夏に加入したFW古川 真人がメンバー入りしていたところ、彼を起用して攻勢をかけるというプランだったところでしょうけれど。
交代枠的に、手堅い起用に止まり。チャレンジするにはリスクが大きかったと。
アディショナルタイムには、久々の実戦となった瀬良にイエローカード。
ファウル相当のプレーもことごとく流され、「イエローカード忘れてきたんか!」なんて言われていた審判に出されたというのも、なんとも複雑ですが。
その瀬良のプレーは、ファウルで止めねば相手の速攻に直結してしまうというところを、覚悟してのもの。
久々の出場ではありながらも。冷静な判断が光ったプレーであったと思います。
もちろん、出来ることならイエローなんてもらいたくない。けれど、その一瞬の判断がチームの敗戦につながりかねなかったともなれば。
瀬良の覚悟が表れた、そんなファウルであったかと。
前節、終了間際のアディショナルタイムに得点して敗戦を免れたことを思えば。
プレーが止まる時間もそれなりにあったのに同じ6分であったのは、いささかばかり少ないのでは?というなか。
無情にも、試合終了のホイッスル。
スコアレスドロー決着となり、勝てば順位を入れ替えられた直接対決で、それを果たせず悔しい結果となったのでした。
直接対決で上回るチャンスをモノに出来ず、引き分け止まり。
理屈の上では、この先、残り試合を全勝というベストを尽くしたとしても及ばず、という可能性があります。もちろん、対戦相手も骨のあるクラブばかり。決して楽勝という試合などないでしょう。そんなときに、「あの直接対決で勝ってさえいれば」との後悔を生む可能性も、否定はできません。
結果、マイナスというか。勝ち点差3が変わらないままに、自力で改善する機会を逃し、残り試合を減じてしまった。
ネガティブに捉えてしまえば、ガッカリするシチュエーション。
しかし、それでも。
正直なところ、そこまで悲観はしていません。
これがシーズンラスト1試合か2試合という状況ならば、また違ったかもしれませんが。
残り7試合あれば、充分に取り返せます。
なぜなら。
スコアレスドローという結果は双方同じでも、どちらが余裕が無かったかといえば、今治のほうでしょう。
アウェイで勝ち点1は充分な成果だし、遮二無二勝ちにいって逆襲を受けてしまうより、引き分け狙いと割り切る姿勢は、それはそれで大事でしょう。
マリーシアというか・・・審判に見逃されていただけで、後ろからのタックルだの、倒れてなかなか起き上がらないだの、挙句はこちらのゴールキックの場面で、故意に田川にぶつかって転ばせるだの。
そんなことをしているチームが、この先のシーズンラストスパートを順風満帆に行けるとは思うなよ?と。
今治は、このあと、必ずやらかす。残り全勝は、無い。
なんでそんなことが言えるかって?
そりゃ、わかるさ。
カターレがこれまで、何回「もう少しのところで届かずにガックリ」ということを経験してきたと思っているんだ。
その経験を踏まえて見れば。
今治は今後、そんな罠とも言うべき、落とし穴とも言うべき試練に、必ずぶち当たる。ヤマ場の富山戦を越えたので、あとはリラックス状態で、などありえませんよ?と。
経験者だから、わかる。つけ入る隙は、必ずあると。
なので。
悲観は、しません。カターレの巻き返しを期待し、応援するのみです。
試合後のインタビューを受けた吉平が、感極まって言葉に詰まるシーンも。
およそ10000人のファン・サポーターの応援に応えて、ゴールで湧かせたかった。勝利の歓喜でスタジアムを包みたかった。
それを為せなかったという無念。
それでも。
その気持ちがあれば、きっと大丈夫。
まだ、なにも終わっちゃいない。
確かに、この大一番で勝つことは叶わなかったけれど。
それでも、終盤戦に失速してしまっていたこれまでのシーズンとは違う姿は、見せられました。
最後まで粘ったものの、得失点差に泣いた昨シーズン。それに比べても、まだまだ可能性はある上に、その得失点差でも、今治を上回ってさえいる。
だったら、悲観なんてする必要は、まったくない。
残り試合、さしあたっては次節の宮崎戦に、全力をもって挑んでいくまでのこと。
涙は、昇格を果たしたときにとっておこうぜ。
10000人の期待に応えられなかった?
今回は、そうだったかもしれないけれど。
残り3試合あるホームゲーム、そこで10000人を達成できないなど、誰が決めた?
やってみせるさ。
だれも、あきらめてなんかいない。
今回は、今回として。
先のことは、まだわからないのだから。
継続された、ホーム無敗記録。
もちろん、最後まで貫き通す。
来月のホーム最終戦には、昇格の喜びでスタジアムが包まれるように。
戦いは、続きます。