4月に刊行された短編集『頭のうちどころが悪かった熊の話』理論社が7刷・7万2000部と児童文学としては異例の大ヒットになっている。大人が読んでも楽しめるユーモアと皮肉に富んだ物語が、幅広い読者を獲得している。 表題作は、頭を打った熊が、どんな姿かたちだったかを思い出せない「レディベア」を探す話。途中で出会った亀とクマバチの交情にほろりとさせられ、やっと出会えた「レディベア」は怖い妻だった、とのとぼけたオチにはニヤリとさせられる。 「恋なんて、もともと頭を打ったような理不尽なもの。相手がどんなであれ、思い続けることに価値がある」と語る。友人や家族からは皮肉屋と言われるそうだが、「皮肉だけではおもしろくない。心の触れ合いを基盤にしたい」。 食物連鎖を描く「いただきます」、美へのあこがれと友情をつづる「ないものねだりのカラス」など、動物が主人公の7編を収める。 「子供は真っ当なことを真っ当に言っても聞いてくれない。聞いてもらうにはオチが要る。長く子供の胸に残り続けるものを書きたい」 30代半ばで童画を習い始め、絵本を作る段になって文章が書けず、ハタと困った。そこでカルチャーセンターに行き、童話の書き方を教わったという。遅まきのスタートだ。 親の遠距離介護と家事の傍ら、「とぼけたところがないと人間つらくなる」と、ポツポツ書きためた。 「オチをつけるのは、笑いが好きなせいもあるが、照れがあるから。きれいに終わらせたいが、それは恥ずかしい。きれいなままで終わらないのが人間でしょう」と著者は言います。おちを付ける落語でもよく言いますが、一番大切なところですね。完全無欠な人間や人生を求めるのは無理です。真面目に完璧主義を目指し心を病んでいる人も多いのです。形に嵌めないで完全な理想を目指さず、人生もいろいろ人間もいろいろで、動物を人間関係や社会に喩え、人を愛する大切さを子供達に話しかける著者のやさしさを感じる作品です。人間らしさに子供達や大人が共感し、読まれていると思います。
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