2Jun
2016
実弾と空包を見分けられなかった自衛隊の劣化
きょう6月2日の朝日新聞が、先般起きた、陸上自衛隊の演習で実弾が使われて負傷者が出た、という事故について、「ニュースQ3」という検証記事を掲載していた。
それを読んで私は驚いた。
誰もが実弾に気づかなかったというのだ。
最初の間違いは、弾の誤請求だったという。
つまり訓練部隊は空包を発注したが、別の部隊を経由して弾薬管理の部隊に届いた時には実弾の発注になっていたという。
その後も、事故を防ぐ手立てはあったはずだ。
実弾を発送する弾薬管理部隊は疑問を持たず発送した。
受け取った時に中身を確認すれば分かったはずなのに、受け取った担当者は、弾数を数えただけで、中身は確認しなかった。
私は一番驚いたのは、訓練に参加した隊員が、実際に弾を弾倉に込める際に、気づかなかった事だ。
実弾と空包では、先がとがっている実弾と、丸い空包とでは、形状がまったく違う。
それにもかかわらず、「空包」と思い込んでいたというのだ。
きわめつけは、自衛隊幹部が語った言葉の数々だ。
幹部のひとりは言う。
「この距離で撃ち合って犠牲者が出なかったのは奇跡。部隊は事故の話題で持ち切りだ」と。
また、ある幹部は危機感を募らせて言う。
「どの段階でも防げなかったのだから、単なるミスでは済まされない。現場の力がそれほど落ちている表れと見て、根本的な対策が必要だ」と。
事故の背景にはこんな深刻な自衛隊の現実があったのだ。
この朝日の記事が教えてくれなければ、我々は、誰も気づかないままだった。
そして朝日が書いても、政治家がこの事故について国会で追及しなければ、何もなかったかのようにやり過ごされて終わるだろう。
安保法の議論もいいが、それ以前の問題として、自衛隊の劣化が進んでいる現実をなんとかしろという話しである(了)