ロイター 6月4日(土)12時13分配信
ソフトバンクのアリババ株売却、1兆円超に ガンホー売却も決定
6月4日、ソフトバンクグループは保有する中国の電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディング株の売却総額が、100億ドル(1兆0900億円)に達すると発表した。5月撮影(2016年 ロイター/Thomas Peter)
[東京 4日 ロイター] - ソフトバンクグループ<9984.T>は3日、保有する中国の電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディング<BABA.N>株の売却総額が、100億ドル(1兆0900億円)に達すると発表した。1日の発表時は79億ドル以上を予定していたが、投資家の需要が強かったことから2日に10億ドル、3日に11億ドルの追加売却を決めた。
売却は財務体質の強化が主目的で、調達資金は有利子負債の返済などに充てる。この結果、連結純有利子負債/調整後EBITDA倍率は16年3月末時点の3.8倍から3.2倍程度まで改善する見通し。
同社のアリババ持株比率は32.2%から約27%に低下するが、持分法適用会社の位置づけは変わらない。
売却について広報担当者は「財務の健全化が目的で、何か案件があるわけではない」と語った。
また、保有するガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765.T>株の売却も併せて決めた。1日にガンホーに株式売却を打診。ガンホーは3日に自己株式の公開買い付けで取得することを伝えた。
ソフトバンクグループとソフトバンクは、昨年12月末現在でガンホー株を2億7260万株(持株比率28.41%)保有しており、このうち2億4830万株(同23.47%)を売却する。公開買付価格は2日終値から4.85%ディスカウントした1株294円で合意した。売却総額は約730億円となり、ガンホーは持分法適用会社から外れる。
孫正義社長はグローバル展開への取り組みを発表した昨年5月の決算発表時に「今後はこれまで以上に投資・売却が頻繁に起こる」と述べ、取捨選択の加速方針を表明していた。
同社はグローバル経営を強化するために組織再編を進めており、海外部門はニケシュ・アローラ副社長の権限がより強まっている。
アローラ副社長は1日、アナリスト向けの電話会議で、アリババ売却で得た資金は財務の改善に充てる予定だと説明。米ヤフー<YHOO.O>の事業取得に充てることはないとの考えを示した。
同社はスマートフォン向けゲームを手掛けるフィンランドのスーパーセルの売却も検討しており、ポートフォリオの見直しを加速させている。
(志田義寧 編集:田巻一彦)
Una Galani
Column | 2016年 06月 1日 18:10 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:ソフトバンクのアリババ株売却、遅きに失したが賢明
[香港 1日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ソフトバンクグループ(9984.T)は、債務返済に充てるため、中国の電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディング(BABA.N)の4.2%株を少なくとも79億ドルで売却する。
ソフトバンク創業者の孫正義氏はかつて、アリババ株の3分の1程度の保有を維持する方針を示していたが、戦略を大幅に転換する。歓迎すべき変心だが、アリババへの投資は恩恵ではなく負担、と認めるのに遅きに失した感がある。
ソフトバンクと孫氏は当初、アリババに対し2000万ドル投資。それがわずか16年のうちに670億ドルにまで膨らんだ。しかし、アリババが2014年に株式を公開して以来、ソフトバンクにとって、少数株式の維持を正当化するのがますます困難になっていた。モルガン・スタンレーは、アリババ株の上場以来、ソフトバンク株は同社の内訳の合計を平均で35%も下回る水準で取引されている、と試算している。
孫氏は今、出資の一部を引き揚げようとしている。今回の売却では、20億ドル分をアリババに売却するほか、4億ドル分をアリババの取締役の過半数を指名する「アリババ・パートナーシップ」のメンバーに、5億ドル分をソブリンファンドに売却。さらに50億ドル分は、3年以内にアリババ株に転換する証券を通じて機関投資家に売却する。
3月末で510億ドルのソフトバンクの純債務は、利払い・税・償却前利益(EBITDA)の3.3倍に圧縮される見通し。これは、傘下の米携帯大手スプリント(S.N)の借り入れは勘案していない数字だ。
ただし売却後もソフトバンクはアリババの28%株を保有していることになり、ソフトバンク株は引き続き、ヤフージャパン(4689.T)株などの保有資産と比較して、大幅なディスカウントで取引されるだろう。
それでも今回の売却によって、数多くの買収を通じて膨張したポートフォリオに対して、ソフトバンクがより規律あるアプローチを取る用意があることが確認された。ソフトバンクは、「クラッシュ・オブ・クラン」で有名なモバイルゲーム開発会社スーパーセルの過半数株売却を交渉しているとされ、売却が実現すれば、さらに40億ドルの調達が可能と見られている。孫氏は、向こう6カ月間はアリババ株をこれ以上は売却しないと表明した。しかし、一段の売却が続く雰囲気が濃厚だ。』
ソフトバンクの債務削減が目的だけではなく、今後の中国の株式市場の動向を睨んだ孫正義氏の判断のような気がします。