政府の失策により日本は「環境後進国」
駅などでお配りしている国政レポート(30号)の内容を転載いたします。
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政府の失策により日本は「環境後進国」
最近、地球温暖化(気候変動)問題は日本ではあまり話題になりません。その理由のひとつは日本政府が熱心でないことです。オイルショックを乗り切った日本は、かつて「環境先進国」と呼ばれていました。しかし、過去30年もの間、日本の製造業のエネルギー効率はほとんど改善されていないため、いまや「環境後進国」です。いまでも「日本は環境先進国だ」と誤解している人が多いのですが、残念ながら欧州どころか中国に比べても遅れています。
日本政府の誤った石炭政策
世界は二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭火力を削減する流れにあります。多くの先進国は2030年までの脱石炭火力を打ち出しています。逆に、日本は石炭火力を推進する政策をとって国際社会で批判されています。日本の電力用の石炭消費量は、1990年に2600万トンだったのが、2015年には8300万トンと3倍以上に増えています。さらに国際協力銀行等の政府機関が、石炭火力発電設備の海外輸出を支援しています。こんな先進国は日本だけです。地球温暖化対策に後ろ向きな国をNGOが表彰(?)する「化石賞」を日本は2度も受賞しています。
経済成長と環境保全の両立こそが解決策
火力発電の問題はCO2の排出だけではありません。日本は火力発電用燃料の石炭、石油、天然ガスをほぼ全量輸入し、その総額は約16兆円におよびます。国の文部科学予算の約5兆円と比較するとその巨額さがわかると思います。省エネと自然エネルギーの普及により、発電用の化石燃料の輸入を減らすことができれば、国富の流出を防ぎ、国民の暮らしを豊かにできます。
太陽光発電や小規模水力発電等の自然エネルギーは、大手ゼネコンより地域の中小業者にビジネスチャンスがあります。発電設備の新設工事だけではなく、維持管理にも人手が必要で、地域の雇用増につながります。省エネのための住宅や事業所の断熱工事は、地域の工務店の仕事につながるでしょう。家畜のし尿を利用した畜産バイオマス発電が普及して「畜産と発電の兼業農家」が増えれば、環境にやさしいだけでなく、農家の収入増にも役立つことでしょう。自然エネルギーは、都市部よりも、農漁村の方が有利です。地産地消の自然エネルギーの普及は、地域活性化に即効性があり、経済成長戦略の柱となりえます。
自然エネルギーで後れをとる日本
自然エネルギーの低価格化が世界で進んでいます。国際的には1kWhあたりの平均発電コストは、太陽光と風力で4.3セント、石炭火力で10.2セント、原子力は15.1セントとなります。原子力発電の高コストが際立っています。
日本の自然エネルギーは世界平均よりだいぶ高いのですが、それでも低価格化が進んでいます。日本では2012年に33.6円/kWhだったのが、2018年には19.8円/kWhへとわずか6年の間に4割も低下しています。それでも世界標準よりまだ割高なので、さらに低価格化が進むでしょう。
いくつかの国の電力消費量に占める自然エネルギーの割合(後述)を見れば明らかですが、日本は欧州より大幅に遅れていて、中国以下という現状です。日本が「環境後進国」であることがおわかりいただけると思います。
カナダ: 72%(うち水力61%、風力7%)*広大な国土に多くのダムがある。
デンマーク:59%(うち風力41%、バイオ16%)*畜産国らしくバイオが多い。
ドイツ: 41%(うち風力20%、バイオ9%、太陽光8%、水力4%)
中 国: 25%(水力18%、風力5%等)
日 本: 18%(うち水力8%、太陽光7%等)
石炭の炭素税増税により、企業の社会保険料負担を軽減
CO2排出量の削減には石炭に課税する「炭素税」の増税が有効です。炭素税が上がって石炭の値段があがれば、企業はコスト削減のため石炭の使用をひかえます。炭素税をあげれば、CO2排出量を減らせると同時に、税収が増えます。
炭素税の税収を企業の社会保険料負担の軽減にあてているのがドイツです。社会保険料の企業負担が減れば、企業は社員を雇いやすくなります。社会保険料負担の重さが非正規雇用を増やす理由のひとつであるため、社会保険料負担の軽減は非正規雇用の正規化につながります。中小零細企業にとっては、社会保険料負担の軽減は大きなメリットです。炭素税の増税は産業界にとって負担増になりますが、増えた税収を企業に還元することで理解を得やすくなります。エネルギー節約型の企業にとっては、社会保険料負担の企業軽減によるメリットの方が大きいはずです。炭素税の増税により、①CO2の排出量を削減でき、②企業の社会保険料の負担が軽減され、③雇用増と雇用安定化を達成できるため、一石三鳥の政策になります。