新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの飲食店が閉業に追い込まれています。

青森県で飲食店を5店舗営んでいたものの、それらを全店舗閉店して会社を清算し再出発を選んだ経営者の福井寿和氏が、『全店舗閉店して会社を清算することにしました。』を出版しました。決断の背景や倒産の具体的な方法、これからの人生の展望についてつづられています。本稿では同書から一部を抜粋しお届けします。

全店舗休業を決断

4月1日(水)、仙台市のパブで新型コロナウイルスのクラスターが発生したと発表されました。翌4月2日(木)、仙台市にあった私のカフェでは、売り上げが前日比50%まで落ち込みました。外出自粛、営業自粛の雰囲気も高まっていました。消毒用のアルコール、マスクも入手しにくい状況も続き、従業員からの不安の声も増えていきました。そして、ついにその週末4月4日(土)、5日(日)、店舗の休業を初めて決断しました。

仙台の店舗以外も、3月下旬から売り上げの落ち込みが続き、私自身の精神状態は追い込まれていました。いつまで続くかわからないコロナの影響、そして、ニュースの世界だけだと思っていた店舗の休業が、自分の店でもせざるをえない状況になり、私の頭の中は、不安感で埋め尽くされていました。

「このままでは青森の店舗もいずれ休業しなければならなくなる」そう考えるだけで胸が締めつけられ、耳元に心臓があるかのように、自分の鼓動が聞こえました。

週明けの4月6日(月)、仙台市のカフェにはお客様は5組しか来店せず、売り上げも1万円台まで落ち込みました。不安と焦りが入り交じる複雑な気持ちでした。青森の店舗も、売り上げは2万円前後にしか届かず、店を営業すればするほど赤字が膨れ上がる状態になりました。

従業員アンケートの結果、7割が働きたくないと思っている状況で、さらに営業しても赤字になるようでは、店を開ける意味はありません。そして、2020年4月7日(火)、政府は緊急事態宣言を発令しました。

埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象で、期間は4月7日(火)〜5月6日(水)の1カ月間。各都道府県では、住民に対して外出自粛が強く要請されました。緊急事態宣言が発令された後、青森、仙台どちらも1日の来客組数が10組を切るようになりました。「従業員も出勤することを望んでいない。お客様も来店しない。店を開けるだけで赤字になる。緊急事態宣言が発令されている間は客足が戻ることは絶望的」

 

此が、今のコロナウイルス感染拡大による飲食業界の現実です。