Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

宇宙戦艦ヤマト劇場版 4Kリマスター

2024-01-06 | 映画(あ行)

◾️「宇宙戦艦ヤマト劇場版 4Kリマスター」(1977年・日本)

監督=舛田利雄
声の出演=富山敬 納谷悟朗 麻上洋子 伊武雅刀

2023年映画館納め。最終日最終上映にヤマト好きの仲良しと滑り込みっ!ちゃんと観たことがなかった劇場版第1作。4Kリマスター版がスクリーンで観られるなんて機会はもうないだろうから、これは観ておかねばっ!😆

最初のテレビシリーズが放送された1974-75年、僕は小学生。時期的には永井豪のロボットアニメにギャーギャー言ってた頃だが、ヤマトはしっかりと覚えている。赤い地球に滅亡までのカウントダウンが重なり、「真っ赤なスカーフ」が流れるエンディングをすっごく寂しく感じながら、毎週テレビを見ていた。その後も再放送があれば見ていたな。そうそう、小学校6年の鼓笛隊では主題歌を演奏したっけ(懐)。

本作はテレビシリーズの総集編だから、話の進行が駆け足なのは仕方ない。木星で浮遊大陸を波動砲で吹っ飛ばす場面はあっても、その強大なエネルギーの怖さには触れていない。反射衛星砲で苦戦するエピソードもすっごく悲壮感を感じていただけに、本作ではあっさりとしている。それでもストーリーの軸となる見せ場はしっかり押さえている。特に七色星団のドメル戦のど迫力と、もうダメかも…と子供心に思った危機感はそのまま。ガミラス星での死闘も、4Kリマスターのノイズのない綺麗な映像で味わえたことがありがたい。それにしてもこうして話をつなぐと、見せ場ばっかりだから130分は実に濃密。リメイクの「追憶の航海」でも同じことを思ったな。

最後の戦闘でガミラス星を滅ぼしてしまったヤマト。「戦うべきではなかった。愛し合うべきだった。」古代進の台詞は、初めて見た時も子供心に強く刻まれたけれど、今回はその直前の森雪のひと言、「あたしにはもう神様の姿が見えない」も重く感じられた。ヤマトシリーズの作品には様々な魅力があるけれど、貫かれたのは、誰かのために自分に何ができるか。戦闘シーンや戦術の面白さはもちろんあるけれど、作品を通じて君ならどう考える?どうする?と突きつけられているような気持ちにさせられる。

何よりも、今回映画館で観られた喜びは大きい。宮川泰のオリジナルの音楽を映画館の大音量で聴けるなんて。シリーズ最初の方で見られる肌の色の塗り違いが語り草となっているが、今回のリマスター版でも修正はされずに場面が変わると肌が青く変わったりもそのまま。物足りなかったのは、帰路でのデスラー逆襲シーンと「古代君が死んじゃう!」がなかったこと。でもあの場面があったら、たっぷり2時間半超の長尺だったな。



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あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

2023-11-17 | 映画(あ行)

◼️「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」(2023年・日本)

監督=成田洋一
主演=福原遥 水上恒司 伊藤健太郎 松坂慶子 中嶋朋子

予告編で観たときの印象。
あー、またタイムスリップものかぁ
若い子の恋愛絡めた戦時中の話だけに
ターゲット明確だよなぁ
にしてもタイトル長ぇよなぁ
松竹が若者意識してきたなぁ

その印象どおりの映画だった。

でもさ、予告編で大上段に振りかぶっておきながら期待を裏切る映画よりよっぽどいいやん。本編観て潔い予告編だったんだなと思った。朝ドラ女優とイケメン役者揃えた映画を、もっと冷めた気持ちで観てしまうと思っていたのだが、思っていたよりもきちんと観られた。予定調和だとかベタだとか言われようが、期待したものが期待値ちょい上くらいで観られたならそれでいいじゃん。

確かにベタだとは思うけど、戦争がどれだけ社会や人間を歪めてしまうものかを、若い世代に向けて、これだけソフトタッチで描けるって実は立派なことでは。「ジョジョラビット」をこれじゃない!と評した自分が言うのもなんですがw。東映、東宝がかつて夏に上映していた戦記ものもいいけれど、若い世代に戦争の歴史を語り継ぐ最初のステップという目的なら十分に役割を果たせる映画だと思った。

家庭と進路に悩む女子高生が終戦間際の日本にタイムスリップ。出撃を待つ特攻隊の若者に助けられるというお話。親ガチャにハズレたと言わんばかりに、母親にあたり散らしていた主人公。彼女が「生まれた時代が違っていたら…」と呟く飛行兵と出会う。これ以上のハズれなんてないだろう、それでも彼は懸命に今を生きている。

「あー、そうくるか。はいはい」と思った場面も正直あれこれあるけれど、クライマックスとその後のエピソードは素直に受け止めました🥲。

松坂慶子が主人公たちを見守る役柄でこれまたイメージどおりのいい仕事。水上恒司くんは朝ドラも気になる。特攻兵の一員に"若君"伊藤健太郎。いい仕事して立ち直って欲しい。そして福原遥は不安しかない状況の中で、迷いながらもまっすぐなヒロインを好演。クッキンアイドルまいんちゃんの頃からみんなが見守っている。キュアカスタードもいい仕事だったけど、今後どんな役者になっていくのか楽しみ。

試写会にて。





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栄光の彼方に

2023-10-16 | 映画(あ行)


◼️「栄光の彼方に/All The Right Moves」(1983年・アメリカ)

監督=マイケル・チャップマン
主演=トム・クルーズ リー・トンプソン クリス・ペン クレイグ・T・ネルソン

日本では劇場未公開のトム・クルーズ主演作。地味なのだが生真面目な作風なだけに、他の主演作とは違うええカッコしいでないトム君が意外と好印象だった。

貧しい鉄鋼の町から出て行きたいと願う若者たち。しかしフットボールで活躍して大学への奨学金を得るとか、スカウトされるとかでもなければ、将来は地元の鉄工所で働くというレールが敷かれたような町。主人公は活躍できるようフィールドでの戦いを続ける。しかし大一番で失敗してしまう。果たして彼の将来はどうなるのか。

現実がよく出ている映画だと思った。親の経済力だけでは大学に行けないので、進学したいなら奨学金を手にするしかない。リー・トンプソン演ずるヒロインは、そこに向かって地道に頑張ってる女の子。トム君も大人を黙らせる大活躍をするどころか、対立したはずの大人からのアドバイスで、将来を見出そうとする。田舎町にはよくあるお話でしかない。「卒業白書」や「カクテル」の派手なトム君をイメージしたら、確かに地味な印象。ビデオスルーだったのもわからなくはない。しかし現実味がある作風だけに、納得させられたり、現状から飛び出したい気持ちに共感できる映画。

この手の映画って、主人公を慕って応援してしくれるヒロインは町に残る決断をしちゃいがちで、主人公との扱いの差をすっごく感じてしまう(最近なら「カセットテープ・ダイアリーズ」とか)。二人の将来を暗示させるようなラストを期待しちゃったんだけどな。リー・トンプソンとトム君のラブシーンあり。監督マイケル・チャップマンは、「タクシードライバー」など有名作で撮影を担当した人物。この映画では「スピード」のヤン・デボンが撮影を担当している。



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アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

2023-10-12 | 映画(あ行)
◾️「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル/I, Tonya」(2017年・アメリカ)
 
監督=クレイグ・ギレスビー
主演=マーゴット・ロビー セバスチャン・スタン アリソン・ジャネイ マッケンナ・グレイス
 
オリンピックにも出場したフィギュアスケート選手、トーニャ・ハーディングの半生を描く物語。ライバル選手だったナンシー・ケリガン襲撃事件でその名を語られることがどうしても多いだけに、ダーティなイメージが映画を観る前からあった。おそらく多くの人も同じではないか。しかも、邦題はご親切なことに「史上最大のスキャンダル」とつけてくれている。アメリカ女子選手で初めてトリプルアクセルを成功させた偉業は知らなくても、少なくともなんか"やらかした人"という先入観を持った上でスクリーンに観客は向かうのだ。ところが全編観終わると、印象が変わる。"やらかした人"なんだけど、この2時間で彼女の不屈の姿勢を知ったら、映画のラストには何故かカッコよく見えるから不思議だ。邦題で植えられたネガティブな先入観がもたらした化学変化だ。
 
大好きな村主章枝選手が、スポンサーなしに現役にこだわり続けて親の貯金を出させたエピソードを語っていたけど、フィギュアスケートはお金のかかるスポーツ。恵まれた家庭の子供が多い中、ワーキングクラス出身のトーニャは度胸と高い身体能力を武器に手作りの衣装でリンクに立ち続ける。だから技術点は高いのだが、芸術点で劣る。「三回転が跳べるのに何故私は負けるのか」と、審判団を挑発するような抗議を続ける。しかも当時国際大会では歌詞付きの曲を使用するのは減点となっていたのだが、トーニャはZZトップのSleeping Bagをバックにリンクを駆け回る型破りな選手。平昌五輪で歌詞付き楽曲が解禁されたのは記憶に新しく、羽生結弦選手がプリンス殿下を使用したのだが、トーニャはその遥か前。イメージダウンのリスクはかなりのものだっただろうに。
 
映画は登場人物にインタビューする場面が挟まる、セミドキュメンタリー的な演出。映画冒頭からみんな持論を展開し続けるのだが、どれも身勝手な言い分でイラッとさせる。しかも本人の主張を裏付ける場面が続くかと思いきや、次の場面では正反対の行動になっていたりする面白さ。毒のある母親にしても、暴力夫とその友人にしても、かなりのクズばかりなのだが、その常識にとらわれない言動はもはや笑うしかない。事件の渦中にある娘を心配して家を訪れたはずの母のポケットにカセットレコーダーが入っていたのには、もう呆れるしかない。オリンピック前に「ロッキー」と同じトレーニングする場面には笑った。スケートから引退させられたその後のトーニャ。映画はボクシングのリングに立つ彼女を映し出す。パンチを喰らってダウンしたトーニャが、カメラ目線で不敵に笑うラストシーン。なんだ、この不思議なカッコよさ。
 
使用された音楽がいい。特に印象的なのは、ダイアーストレイツのRomeo and Juliet。暴力夫と友人が車の中で聴いていたのは、ローラ・ブラニガンのGloria。「フラッシュダンス」で主人公の友人がフィギュアスケートの試合で使ってたよね。



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オー!ゴッド

2023-10-04 | 映画(あ行)

◼️「オー!ゴッド/Oh ! God」(1977年・アメリカ)

監督=カール・ライナー
主演=ジョージ・バーンズ ジョン・デンバー テリー・ガー ラルフ・ベラミー

初めて映画館で観た一般の外国映画は何だろう🤔。記憶を辿ると、おそらく小学生の時。母親が連れて行ってくれた「モダンタイムス」のリバイバル、夏に「スターウォーズ」を観たはずだ。そして確か秋に「アバ・ザ・ムービー」。その二本立てだったのがコメディ映画「オー!ゴッド」だった。クラシック、ドキュメンタリー映画、当時誰もが観たSWを除いたら、初めて映画館で観たリアルタイムの一般的な外国製劇映画(死語?)は、「オー!ゴッド」ということになるのかな。

TSUTAYAが発掘良品でDVD化してくれたのをレンタルして、2023年9月に再鑑賞。1978年の公開後、テレビで一度観た記憶がある。

主人公はスーパーマーケットの主任ジェシー。ある日彼を呼び出す変なメモが届く。友人の悪戯に違いないと思ったが、捨てたはずのメモが何故か彼の前に蘇る。不思議に思った彼は指定された場所に行くと、存在しない階にある部屋でゴッドだと名乗る声から人間へのメッセージを届けるように頼まれる。そして半信半疑の彼の前にゴッドは小柄な老人の姿で現れた。新聞社に話を持ち込むが狂信者扱いされるが、神と話した男としてマスコミが取り上げ始め、やがて宗教界を巻き込む大騒動に発展する。

「カントリーロード」で有名なカントリー歌手、ジョン・デンバーが主演を務めたのは注目すべきところ。代表曲の中では「緑の風のアニー」が好き。本作以外で映画出演したのは観たことがないが、誠実そうなキャラクターが好印象。しかも得意の歌を封印して神に振り回される男を熱演している。監督は後にスティーブ・マーチンと組んで怪作コメディを連発するカール・ライナー。脇役だけど、ギリシア正教の宗教家でドナルド・プリーゼンスが登場。

ジョージ・バーンズ演ずる神様の言動の面白さでクスッと笑えて、画面に登場するだけでほっこりした気持ちにさせられる。
「Oh, God !」
「呼んだか?」
しかし、上司にクビを言い渡されたり、宗教家と訴訟になったり、トラブルがどんどん大きくなる主人公への同情が先に立って、心から笑えるコメディかと言われたらちょっと違うかも。だが、クライマックスの神が見せる小さな奇跡と言葉はなかなか胸に響く。
「争うことはやめなさい」
神様、プーチンに言ってやってくれませんかねぇ。

旦那の行動がエスカレートするのにオロオロしながらも、寄り添ってくれる妻を演ずるのはテリー・ガー。同年製作の「未知との遭遇」も同じような役柄というのも面白い。好きな女優さん。「トッツィー」もそうだけど、困った顔する彼女にキュンとしてしまう。あ、そっか。初めて観た一般外国映画に出てきた金髪美女が、小学生男子の心に刻まれてたのかも!😂




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アリス

2023-10-03 | 映画(あ行)

■「アリス/Alice」(1990年・アメリカ)

監督=ウディ・アレン
主演=ミア・ファロー ジョー・マンテーニャ ウィリアム・ハート アレック・ボールドウィン

 80年代のウディ・アレン作品は素敵な映画ばかりだけれど、なんか生真面目な印象がある。イングマル・ベルイマン調に物語を哲学的に掘り下げてみたり、お子様を主人公に懐古趣味に走ったり。そんなアレン先生が当時の奥様ミア・ファローを主役に撮ったのが「アリス」。都会で不自由なく暮らしてるお金もちの奥様が主人公。ある日背中に何とも言えない違和感を感じて、友人や夫がよいと勧めてくれる漢方医ヤン先生を訪れた。「心に問題がある」という先生が処方した薬は、控えめな彼女を大胆に変えてしまったり、透明人間体験をさせてくれたり。子供の学校で出会ったサックス奏者との恋、家庭、夫婦の問題をめぐる彼女の不思議な体験を描くコメディ。

 自分に自信がなくてカウンセリングに通う神経質な主人公といえば、アレン映画ではお馴染みのものでアレン先生自身が演じていることが多い。本作はその役割がミア・ファローに置き換わっている面白さ。医師に持論を早口でしゃべり続ける様子といい、相手を見ずに言い訳めいたことを言う様子といい、これはいつもならアレン自身が演じているもの。透明になる時間が切れてソファの陰に隠れる場面は、「SEXのすべて」に似た場面があったよなぁ・・と思えて実に楽しい。

 この映画は、いわばウディ・アレン版「不思議の国のアリス」。性をめぐる不思議の国に迷いこんだ人妻アリスが、様々な薬を使って冒険をする物語だ。ジョーと二人で透明になって街に繰り出す場面。アリスは友達の噂話を聞くのだけれど、ジョーは女性の試着室に忍び込むというのに大爆笑。男ってなんて情けない生き物(笑)。媚薬のエピソードはアレン映画らしいオチが楽しい。そして映画の最後、アリスは新しい人生を選択する。80年代のアレン映画ではミア・ファローに素敵なハッピーエンドは訪れなかった。うちひしがれた彼女は、映画館で笑顔を取り戻すくらい。「アリス」はその穴埋めであるかのような幸せな結末。でもこの映画はそうした成長物語的な結末であることが望ましいのだ。不思議の国から戻って来た少女アリスがちょっとだけ成長したように。



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お嬢さん探偵 ときめき連発!

2023-10-01 | 映画(あ行)

◼️「お嬢さん探偵 ときめき連発!」(1987年・日本)

監督=黒沢直輔
主演=西脇美智子 水島裕子 内藤剛志

80年代に"ボディビル界の百恵ちゃん"と呼ばれて人気のあった西脇美智子と、グラビアアイドル水島裕子を主役に据えたロマンポルノ作品。にっかつが続けてきたこの路線も末期の頃だから、誰を脱がせたって話題に注目が集まっていた時代。今と違ってセクシー路線も表現の場が少なかったから、演技は二の次で映画出演ということになっちゃうのかな。されど美形の西脇美智子は、ヌードばかりでなくプチアクションもこなすし、肝の据わったヒロインはなかなかいい。

帰郷やお見合いを拒否するために、大学院生の主人公が探偵事務所の看板を掲げる。冗談だから依頼を受けずに看板を外したのだが、失踪した女子大生を探して欲しいとの依頼が舞い込んできた。二人は探偵ごっこを始める。それは闇社会がからむ危険な事件だった。ヒロイン危うし!。ストーリーもそれなりに面白い。

脚本を担当したのは柏原寛司。この後「あぶない刑事」シリーズで大活躍することになる。本作は75分で、劇場映画としては短い尺。にっかつ作品お約束の見せ場も押さえた上で、サスペンスドラマとしても楽しい娯楽作になっている。黒幕が現れるクライマックスなんて、ちょっとした刑事ドラマ。蒸気が吹き出す裏町の舞台づくりはギャング映画ぽいし、ヒロインを助けるジャーナリスト青年の活躍も楽しい。ジャーナリスト青年を演ずるのは、若き日の内藤剛志。今の目線だと、「科捜研の女」でマリコの窮地を救うのを見慣れているから、若い頃からこんな役やってるんだなと思ってしまうw。ラストのカッコつけた写真には、ヒロインと一緒に笑うしかないw🤣

お色気だけを期待して観るには物足りないかもしれない。しかしヌードがどれだけ出てくるかの条件さえクリアすれば、様々なテイストの映画があったのが当時のロマンポルノ。低予算ながらもお色気サスペンスに挑んだのは、個人的には好印象かと。あ、水島裕子好きである私的な加点があることを申し添えておきまする😜。


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美しき運命の傷痕

2023-09-13 | 映画(あ行)

■「美しき運命の傷痕/L'Enfer」(2005年・フランス=イタリア=ベルギー=日本)

監督=ダニス・タノビッチ
主演=エマニュエル・ベアール カリン・ヴィアール マリー・ジラン キャロル・ブーケ

なかなか映画館通いができない日々だが、
その分観てなかったヨーロッパ映画に手を出そうと言う気持ちになることも。
「美しき運命の傷痕」は、「トリコロール」三部作が素晴らしかったキェシロフスキが遺したシナリオ案を、
名作「ノー・マンズ・ランド」のダニス・タノビッチ監督が映画化した作品。

かつての悲劇的な事件を引きずる三姉妹とその母。
それぞれが向かい合う様々な愛憎劇。

長女エマニュエル・べアールのパートでは、
幾度も登場するらせん階段や壁の色彩が不安な彼女の心情を表現して見事。
恋愛に臆病な次女カリン・ヴィアールのおどおどした演技が、
この映画のユーモラスな部分を担当。
愛にまっすぐな三女マリー・ジランは大学教授と不倫関係。

彼女たちの愛のかたちが繊細に描かれて、
「細雪」を観ているような気持ちにさせる。

母キャロル・ブーケは、事件の後で言葉を失っているだけに、
目力だけで説得力ある貫禄の演技。
特にラストシーンで彼女が記す衝撃のひと言。
そこには娘たちを守ってきた母親としての強い思いがあるのだろう。

ジャン・ロシュフォール、ジャック・ペランなど脇役も名優が配置されている。
「007/リビング・デイライツ」のボンドガール、マリアム・ダボが旦那の浮気相手で登場。

美しき運命の傷痕




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アリスとテレスのまぼろし工場

2023-09-03 | 映画(あ行)

◼️「アリスとテレスのまぼろし工場」(2023年・日本)

監督=岡田麿里
声の出演=榎木淳弥 上田麗奈 久野美咲 瀬戸康史 林遣都

製鉄工場の事故をきっかけに時間が止まり、空間的にも閉鎖されてしまった町。大人たちも子供たちも変わらないでいることを強要される。大きな変化を望むと空がひび割れ、その空の隙間を狼の頭をした煙が巻き起こって埋めていく。そしてまた何事もない日常が続く。それがまぼろし工場のある本作の舞台だ。

「うる星やつら ビューティフル・ドリーマー」や「涼宮ハルヒの憂鬱」にも出てくる閉鎖空間。変化を望む心がその壁を打ち砕く。それはこの「アリスとテレスのまぼろし工場」でも同じだ。本作では14歳の彼ら彼女らの知らず知らず知らずに惹かれあう気持ちが、変わろうとするひとつの原動力となっていく。

岡田麿里監督が携わった作品では、過去と向き合う辛さが示されてきた。それは今と対比することで観客の僕らをも巻き込んで、共感の気持ちを湧き上がらせた。これまでの作品をちょっとした共通点は確かにある。出られない空間や過去の人物への片思いは「空の青さを知る人よ」、自分の気持ちを吐き出すような告白は「ここさけ」を思わせる。

でも確実に違うのは、本作はただひたすらにまっすぐ未来を見据えていること。映画の中の街の行末は混沌としているけれど、スクリーンのこっち側も未来もなんなモヤモヤしている。でも、今いる世界がどうであれ、今自分はここにいる。ここにいて人とつながっているし、時には惹かれあっている。その気持ちに嘘はない。上気した頬の火照りや、息づかい、肌が触れるもの、匂い、ぬくもり。これまでのアニメでは見たことのない、生々しさを感じる描写は、確かにそこに彼ら彼女らがいる証を示す。「好き」という気持ちが急に高まる様子や、どれだけ胸をざわつかせる感情なのかを、丁寧に描いてみせる。
「好きって、痛い?」
そうだよ。好きになるって、そういうことなんだよ。主人公の叔父を通じて、大人の「好き」も、ちょっとだけ示される。いいね。

「好き」が行動の根底にあるお話だけど、正宗が絵を描くのが得意なのも「好き」→イラストレーターになりたいって変化につがっている。惚れた腫れただけの話だけではない。

多くの方の感想にもあるように、タイトル回収してくれないことに、正直僕も戸惑っている。岡田麿里監督のインタビューを読んで、そもそもの構想(狼少女2人の物語)や言葉を選んだ気持ちはなんとなくわかった。哲学者の名前が二人組の名前だと勘違いしていた幼い頃の記憶が発想の元にあるのだそうだ。

映画館を出て、なーんとなく浮かんだ落としどころ。自分の存在、憧れ、未来、生きる意味について深く考えている正宗と睦実たちこそ、結論を出せずにいる悩める哲学者コンビ。そしてその世界に現れた謎の少女は不思議の国に迷い込んだアリスなんだ。こんなことを考えちゃうのは、「空の青さを知る人よ」のタイトル回収場面で泣いてしまった自分😭だからなのかも。

なーんかまとまりのないレビューになったけれど、なかなかの力作なのは間違いないです。はい。

試写会にて鑑賞。
 


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犬神家の一族

2023-08-28 | 映画(あ行)

◼️「犬神家の一族」(1976年・日本)

監督=市川崑
主演=石坂浩二 高峰美恵子 島田陽子 あおい輝彦 加藤武

言わずと知れた大傑作。角川映画初の作品となる本作が1976年に公開されて以来、メディアミックスによる大規模な宣伝が主流となり、まだお子ちゃまだった僕もここから始まる一連の角川映画には思い入れがある作品が多い。中でも「犬神家の一族」は、高校時代にテレビで観て以来繰り返し観ている、フェバリット中のフェバリット。

日本映画も数あれど、金田一耕助シリーズ程リメイクやドラマ版を毎回追いかけている作品は他にない。時代とともに改変が加えられても、ジャニーズ枠があるドラマ版にイライラしても、好みでない役者の金田一耕助でも、とりあえず観てしまう。もちろんそれぞれに文句はあるのだが、こんな行動をとるのは、市川崑監督による76年版「犬神家」の強烈なインパクトがあってこそだ。それは犬神佐兵衛が登場人物にもたらした呪縛にも似ている(笑)。そして「犬神家」は76年版をスタンダードにして比較しながら観てしまうのだ。

繰り返し観るもんだから、台詞もところどころ覚えてしまって(恥)。同じ脚本を使った市川崑監督による2006年のリメイクは映画館で観た。佐清の奉納手形があるのを思い出したのは誰かと尋ねる神主とのやりとり場面。大滝秀治の演技の間が我慢できなかった僕は声を出してしまった🤣
「珠世さんです。」
急に台詞が前後から聞こえたせいで、前の席のオッさんがキョロキョロ。ごめんなさい!ww

ビジュアルのイメージに惹きつけられる。これはこの映画の大きな魅力だ。水面から伸びる足、ネガポジ反転する殺人シーン、金田一耕助のキャラクターを印象づけるディティールの細かさ。そしてデーンと明朝体の文字が並ぶタイトルバック。これに「エヴァンゲリオン」が影響を受けたのは有名な話。全編に漂う怪奇ムード、哀愁漂う大野雄二の音楽。その魅力は今さら語ることもない。でも年齢を重ねて観ると、親の情が心に刺さる。クライマックスの謎解きの緊張感は何度観てもたまらない。因縁、血縁の避けられない業の深さに心が震える。

先日久々に観た「社葬」。取締役の一人を演ずるのは、「犬神家」の警部役である加藤武。「社葬」の中で、金田一シリーズの名文句と同じ「よし!わかった!」って台詞があって、思わず吹き出した🤣。絶対金田一シリーズ意識しとるやろw





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