Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

アガサ・クリスティー 奥さまは名探偵〜パディントン発4時50分〜

2024-04-03 | 映画(あ行)


◾️「アガサ・クリスティー  奥さまは名探偵〜パディントン発4時50分/Le Crime Est Notre Affaire」(2008年・フランス)

監督=パスカル・トマ
主演=カトリーヌ・フロ アンドレ・デュソリエ キアラ・マストロヤンニ メルヴィル・プポー

カトリーヌ・フロとアンドレ・デュソリエによるおしどり探偵シリーズ第2作。アガサ・クリスティの原作「パディントン発4時50分」は、ミスマープルシリーズの一編。原作では、家政婦に謎の屋敷への潜入を依頼するのだが、この翻案では好奇心の塊である素人探偵プリュダンスが自ら乗り込んでいく。気難しい屋敷の主人と変わった家族たちに、持ち前の明るさとバイタリティで接していく姿がスリリングで楽しい。前作同様、夫ベリゼールがそれに巻き込まれる。

予告編の編集が実に見事で、細切れでつながれたカットだけで判断すると、とんでもなく危険なお話のように見える。いざ本編を観ると、それぞれがユーモアあふれる場面ばかりだと気付かされる。予告編から観る方々は気持ちよく騙されるw。

皮肉の効いたやり取りは前作同様なのだが、本作は登場人物も多く、お話をテンポよく進める必要もあるから、前作に感じたオシャレ感はやや控えめ。だが、本格ミステリーと出しゃばり夫婦の推理劇の楽しさは、うまい具合にブレンドされていて、死体も殺人も出てくるエンタメ色と、ハッとする謎解きの展開はこちらの方が上かもしれない。まぁ、好みの問題でしょうけど。

キアラ・マストロヤンニ、メルヴィル・プポー、イポリット・ジラルド、それにクリスチャン・バディムと共演陣も名の通った面々。個人的には、謎解きよりも雰囲気に浸りたいタイプの映画だと思えた。そのために繰り返し観てもいいかな。




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アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵

2024-03-11 | 映画(あ行)


◾️「アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵/Mon Petit Doigt M'a Dit...」(2005年・フランス)

監督=パスカル・トマ
主演=カトリーヌ・フロ アンドレ・デュソリエ ジュヌビエーブ・ビジョルド

アガサ・クリスティの「おしどり探偵トミー&タペンス」シリーズの「親指のうずき」。舞台をフランスに翻案した映画化作品。好奇心の塊で疑問に向かって突っ走る妻プリュダンスと、騒動に巻き込まれる夫ベリゼール。ベリぜールの叔母が暮らす施設で、突然親族を名乗る人々に引き取られた老婆。彼女の不可解な言葉と、どこかで観たことのある屋敷の絵が心に引っかかっり、老婆の身に危険が迫っているのでは?と考えたプリュダンス。絵の風景を手がかりにその謎を解き明かす物語。

マクベスの魔女と同じなの。"この親指がうずく。邪悪なものが近づいている。"

この言葉と共にプリュダンスの好奇心がうずき始める。米澤穂信の「氷菓」でヒロインが言う「私、気になります!」を重ねてしまうw。嗜好に偏りがあってすみませんw。

前半は、カトリーヌ・フロとアンドレ・デュソリエの皮肉まじりの会話が楽しくてメモしたくなる。言葉を丁寧に扱ってくれる映画って、やっぱり好みだ。映画用の台詞もあるのだろうが、クリスティの原作では、マクベスの引用を筆頭に気の利いた言葉が選ばれてるんだろうな。未読なので興味がわいた。

面と向かってのお世辞は女をダメにするわ。
あの人の歯嫌い。赤ずきんの狼みたい。
灰色の脳細胞が燃えてるわ。
彼女の興味は処罰されぬ犯罪です。
今日は捻挫でもして寝ててくれ。

いい台詞がいっぱい。

カトリーヌ・フロとアンドレ・デュソリエのコンビが、突っ走る妻と巻き込まれる夫のいいバランス。ウディ・アレンの「マンハッタン殺人ミステリー」が好きな人は向いてるかも。久々に見たジュヌビエーブ・ビジョルド、地味な脇役だが、「私生活のない女」のヴァレリー・カプリスキーが出演。

ユーモラスな描写にクスクス笑えて、仲睦まじい熟年夫婦のやりとりと牧歌的な風景にほっこり。車種がわかんないけど、夫妻が乗る黒いオープンカーがこれまた好み。前半のオシャレな雰囲気、後半のスリリングな展開。最初の思い込みが思わぬ展開に。

ポワロ映画の重厚感とは違うけれど、気軽に楽しめる好編。






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アリスのままで

2024-02-15 | 映画(あ行)

■「アリスのままで/Still Alice」(2014年・アメリカ)

●2014年アカデミー賞 主演女優賞
●2014年ゴールデングローブ賞 主演女優賞

監督=リチャード・グラツァー ワッシュ・ウェストモアランド
主演=ジュリアン・ムーア アレック・ボールドウィン クリスティン・スチュワート ケイト・ボスワース

言語学者として大学で活躍していた主人公アリスが若年性アルツハイマーになってしまった現実と立ち向かう姿と、家族の愛を描いた本作。言葉を扱ってきたアリスから、その言葉が少しずつこぼれ落ちていく。周囲の人が誰かもわからなくなっていく。難病ものの映画というと、どうしても綺麗にまとまりがちなのがこれまでの映画だった。しかしジュリアン・ムーアの素晴らしい演技とその不安な気持ちを描く巧みな演出は、スクリーンのこちら側の僕らを単なる傍観者にさせないところが見事だ。

若年性アルツハイマーを扱った映画というと韓国の「私の頭の中の消しゴム」という秀作がある(元ネタは日本のテレビドラマだが)。ソン・イェジンン扮する美しい妻が次第に自分を失っていく姿が悲しく、彼女への夫チョン・ウソンの愛が心に染みる作品だった。こちらは二人に物語の焦点が絞られているだけにラブストーリーとして美しく仕上がっていた。同じ難病を扱っていても「アリスのままで」が大きく印象が違うのは、いくつか理由がある。ひとつは当事者アリスを物語の中心に据えていること。「消しゴム」はどちらかとチョン・ウソンの目線で彼女を見守る映画だった。対して「アリスのままで」は、当事者の不安やどうしようもない焦り、覚悟が描かれていることだ。

二つめは、彼女を支える"家族の成長物語"であることだ。難病を抱えた家族だが、それぞれに向き合う現実がある。それぞれの生き方、そして成長があるところが感動を生んでいる。扱いにくい存在だった次女が最終的に母アリスを支える立場になる。周囲にいるのが誰かもわからなくなってきた母親に本を読んできかせるラストシーンは美しい。いい映画に登場人物の"成長"はつきものだ。映画の冒頭と最後で印象が変わらない主人公なんて、これほどつまらないものはないだろう。「アリスのままで」は家族が変わっていく姿も印象的だが、認知症の当事者自身の成長を描いた映画もある。介護問題をテーマにした日本映画「老親」がそれだ。介護問題をきっかけに夫と別居した主人公のもとに認知症の義父が突然やってくる。何ひとつ自分でできなかった義父が、次第に変化していく姿が微笑ましく感動に導いてくれた。こちらも機会があれば是非観てほしい秀作。

僕が「アリスのままで」を見終わった後、最も心に残ったのはラストシーンの母と娘の会話。
「愛の話なのね」
「そうよ、愛の話なのよ」
記憶や言葉を失っていっても、人を愛する気持ちは残る。

 ★

そのラストシーンで思い出したことがある。私ごとだが僕の祖父のことを書かせて欲しい。僕が最後に祖父に会ったのは亡くなる数年前。自宅の狭い個室で寝ていた。祖父には僕の父を含めて四人の息子がいた。僕は祖父に挨拶したが、僕が自分の孫だとはわかってはいないようだった。その僕に祖父は壁に貼っているお気に入りの写真の話を始めた。その写真は大相撲のカレンダー。当時横綱だった四人の力士が和服姿で並んでいる。祖父は、その写真を指さして微笑みながら、僕にこう言った。
「これはわしの四人の息子だ。」
そこへ祖母がやってきて、祖父はもう誰が誰だかわからなくなりつつある。だけどこのカレンダーの写真の横綱が四人の息子のように見えるんだろうね、と言った。愛する気持ちは最後まで残る。「アリスのままで」のラストシーンでちょっと涙ぐんでしまったのは、じいちゃん、あなたのせいだよ。


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愛の記念に

2024-02-08 | 映画(あ行)

◾️「愛の記念に/A Nos Amonurs」(1983年・フランス)

監督=モーリス・ピアラ
主演=サンドリーヌ・ボネール モーリス・ピアラ ドミニク・ベスネアール

フレンチロリータに弱い私だが、何故かサンドリーヌ・ボネールはどうも苦手としている。「冬の旅」も「刑事物語」も観たし(後者はソフィー・マルソー目当て)、「仕立て屋の恋」や「僕と一緒に幾日か」はかなり好きな映画。だけど、主演作を立て続けに観たいとまでは思えなかった。最初に観た「冬の旅」がいけなかったのかな。働きたくない!楽して生きたい!と言った挙句に凍死する主人公に共感できなかったし。代表作である本作「愛の記念に」は、今回が初鑑賞。

登場人物の誰にも共感しづらい。革細工職人の父と精神不安定な母。ヒロインのシュザンヌは毎夜遊び歩いて、男性とも奔放に関係を結ぶ。昨夜の男失敗だったよなー、みたいなことを女友達に話す場面はあるけれど、単なる遊びではなく、誰が自分にちゃんと向き合って愛してくれるかを、試しまくっているような印象を受けた。そんな彼女を家族も疎ましく思っている。

多くの人も感想で述べている、父親との会話の場面は心に残る。それまで態度がなってないと顔を叩くような父親だが、やっとちゃんと向き合ってくれたとも言えるのか。ヒロインが幼い頃には二つあったえくぼが今は一つ。それを父は「お前は片方でもやっていけるさ」と言う。片方でもかわいいぞ、と言ったつもりだろう。でもその後、父は言い争いが絶えない母の元を去っていく。片方でもやっていけるさ。そういう意味だったのかも。

そこから先は男に身を任せる彼女と、家族の罵り合い。本気でバシバシ叩く場面が長いから、観ていてこっちまで不安になる。結婚を決めた彼女の元に身内が集まる場面は、芸術論を交えたフランス映画らしい会話劇が続く。この場面、ヒロインの兄貴が妙に妹にベタベタ。少し前まで殴りかかっていたくせに、その行動の変化がちょっと理解しがたかった。父が出ていってから、厳格な父親役を兄が演じていたとはいえ、そのベタベタは何?。

娘が旅立つラストシーン。父親が「お前は愛されたいばっかりで、人を愛することをしない」と言う。誰もがそうだと言う娘に、「愛を与える人はいる。選ばれし少数派だけどな」と諭す父の姿。劇中とエンディングで流れるクラウス・ノミのCold Songと共に心に残った。




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哀れなるものたち

2024-01-29 | 映画(あ行)


◾️「哀れなるものたち/The Poor Things」(2023年・イギリス)

監督=ヨルゴス・ランティモス
主演=エマ・ストーン ウィレム・デフォー マーク・ラファロ ラミー・ユセフ

死者を蘇らせる物語。映画史上、多くのマッドサイエンティストたちの手で何人もの死者が息を吹き返した。「フランケンシュタイン」は特に興味があって、オリジナル、関連作、リメイク、多くの派生作品を観まくった時期があった。「ペットセメタリー」や「デッドリー・フレンド」でも死者は蘇った。それらは不幸な結末と、創造主に愛されないモンスターの悲しみがあった。公開前の「哀れなるものたち」のあらすじと作品の噂を聞いて、こうした作品の系譜なのだろうと勝手に思い込んでいた。

ところがどっこい。確かに怪奇趣味的な物語の導入だし、風変わりなキャラクター、部屋の造形、不思議な街並みに彩られてはいるが、ストーリーの主軸は普遍的な成長物語だ。亡くなった大人の女性に胎児の脳が移植された主人公ベラ。初めは歩く動きすらぎこちない彼女だが、映画が進むにつれて急速に知識を得て、経験を積み、大人の女性へと変わっていく様子から目が離せない。

性にまつわるエピソードが過剰に多い印象を受ける。しかし性への興味は成長していく過程で誰しもが夢中になってしまうものではある。またその快感を自分で発見して言葉にする喜びがストレートに表現されて(熱烈ジャンプ🤣)、おかしいけれどうなづけるところ。

さらに、ベラが船旅で老婦人(ドイツの名女優ハンナ・シグラ)に出会って社会に対する知識欲が旺盛になり、世界の現実を知りたいと望むようになる変化。その大きな前振りとなっている。昔読んだ山田詠美の小説に出てくる、「セックスはお菓子、愛はパンなのよ、ベイビー」って台詞を思い出した。ベラはお菓子を卒業しつつある時期に近づいていたのか。老婦人がその年齢での性に触れるサラッとした台詞は見事だった。

本作が面白いのは、主人公の成長物語だけで終わらないところ。ベラは最終的に自分のルーツに触れることになる。その流れは実にスリリング。また、科学者としての立場に固執していたウィレム・デフォーが愛を知るまでの物語でもある。「フランケンシュタイン」原典は、創造したのに愛をくれなかった者へのモンスターの怒りと孤独という悲劇。その原典に着想を得た本作は、その先の成長と愛に触れようとした冒険物語。

エマ・ストーンが姿勢と喋りと歩き方でベラの成長を演じ分けているのは、本当に見事。どういうアプローチをしてこの演技にたどり着いたのだろう。圧倒された。刺激的な会話と映像、一度聴いたら気になって仕方ないピッチが揺れ動く音楽。センスのいいタイトルバックと、絵画を見ているような美しいエンドロール。万人に勧められる映画ではないけれど、他では味わえない魅力がある。




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宇宙戦艦ヤマト劇場版 4Kリマスター

2024-01-06 | 映画(あ行)

◾️「宇宙戦艦ヤマト劇場版 4Kリマスター」(1977年・日本)

監督=舛田利雄
声の出演=富山敬 納谷悟朗 麻上洋子 伊武雅刀

2023年映画館納め。最終日最終上映にヤマト好きの仲良しと滑り込みっ!ちゃんと観たことがなかった劇場版第1作。4Kリマスター版がスクリーンで観られるなんて機会はもうないだろうから、これは観ておかねばっ!😆

最初のテレビシリーズが放送された1974-75年、僕は小学生。時期的には永井豪のロボットアニメにギャーギャー言ってた頃だが、ヤマトはしっかりと覚えている。赤い地球に滅亡までのカウントダウンが重なり、「真っ赤なスカーフ」が流れるエンディングをすっごく寂しく感じながら、毎週テレビを見ていた。その後も再放送があれば見ていたな。そうそう、小学校6年の鼓笛隊では主題歌を演奏したっけ(懐)。

本作はテレビシリーズの総集編だから、話の進行が駆け足なのは仕方ない。木星で浮遊大陸を波動砲で吹っ飛ばす場面はあっても、その強大なエネルギーの怖さには触れていない。反射衛星砲で苦戦するエピソードもすっごく悲壮感を感じていただけに、本作ではあっさりとしている。それでもストーリーの軸となる見せ場はしっかり押さえている。特に七色星団のドメル戦のど迫力と、もうダメかも…と子供心に思った危機感はそのまま。ガミラス星での死闘も、4Kリマスターのノイズのない綺麗な映像で味わえたことがありがたい。それにしてもこうして話をつなぐと、見せ場ばっかりだから130分は実に濃密。リメイクの「追憶の航海」でも同じことを思ったな。

最後の戦闘でガミラス星を滅ぼしてしまったヤマト。「戦うべきではなかった。愛し合うべきだった。」古代進の台詞は、初めて見た時も子供心に強く刻まれたけれど、今回はその直前の森雪のひと言、「あたしにはもう神様の姿が見えない」も重く感じられた。ヤマトシリーズの作品には様々な魅力があるけれど、貫かれたのは、誰かのために自分に何ができるか。戦闘シーンや戦術の面白さはもちろんあるけれど、作品を通じて君ならどう考える?どうする?と突きつけられているような気持ちにさせられる。

何よりも、今回映画館で観られた喜びは大きい。宮川泰のオリジナルの音楽を映画館の大音量で聴けるなんて。シリーズ最初の方で見られる肌の色の塗り違いが語り草となっているが、今回のリマスター版でも修正はされずに場面が変わると肌が青く変わったりもそのまま。物足りなかったのは、帰路でのデスラー逆襲シーンと「古代君が死んじゃう!」がなかったこと。でもあの場面があったら、たっぷり2時間半超の長尺だったな。



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あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

2023-11-17 | 映画(あ行)

◼️「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」(2023年・日本)

監督=成田洋一
主演=福原遥 水上恒司 伊藤健太郎 松坂慶子 中嶋朋子

予告編で観たときの印象。
あー、またタイムスリップものかぁ
若い子の恋愛絡めた戦時中の話だけに
ターゲット明確だよなぁ
にしてもタイトル長ぇよなぁ
松竹が若者意識してきたなぁ

その印象どおりの映画だった。

でもさ、予告編で大上段に振りかぶっておきながら期待を裏切る映画よりよっぽどいいやん。本編観て潔い予告編だったんだなと思った。朝ドラ女優とイケメン役者揃えた映画を、もっと冷めた気持ちで観てしまうと思っていたのだが、思っていたよりもきちんと観られた。予定調和だとかベタだとか言われようが、期待したものが期待値ちょい上くらいで観られたならそれでいいじゃん。

確かにベタだとは思うけど、戦争がどれだけ社会や人間を歪めてしまうものかを、若い世代に向けて、これだけソフトタッチで描けるって実は立派なことでは。「ジョジョラビット」をこれじゃない!と評した自分が言うのもなんですがw。東映、東宝がかつて夏に上映していた戦記ものもいいけれど、若い世代に戦争の歴史を語り継ぐ最初のステップという目的なら十分に役割を果たせる映画だと思った。

家庭と進路に悩む女子高生が終戦間際の日本にタイムスリップ。出撃を待つ特攻隊の若者に助けられるというお話。親ガチャにハズレたと言わんばかりに、母親にあたり散らしていた主人公。彼女が「生まれた時代が違っていたら…」と呟く飛行兵と出会う。これ以上のハズれなんてないだろう、それでも彼は懸命に今を生きている。

「あー、そうくるか。はいはい」と思った場面も正直あれこれあるけれど、クライマックスとその後のエピソードは素直に受け止めました🥲。

松坂慶子が主人公たちを見守る役柄でこれまたイメージどおりのいい仕事。水上恒司くんは朝ドラも気になる。特攻兵の一員に"若君"伊藤健太郎。いい仕事して立ち直って欲しい。そして福原遥は不安しかない状況の中で、迷いながらもまっすぐなヒロインを好演。クッキンアイドルまいんちゃんの頃からみんなが見守っている。キュアカスタードもいい仕事だったけど、今後どんな役者になっていくのか楽しみ。

試写会にて。





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栄光の彼方に

2023-10-16 | 映画(あ行)


◼️「栄光の彼方に/All The Right Moves」(1983年・アメリカ)

監督=マイケル・チャップマン
主演=トム・クルーズ リー・トンプソン クリス・ペン クレイグ・T・ネルソン

日本では劇場未公開のトム・クルーズ主演作。地味なのだが生真面目な作風なだけに、他の主演作とは違うええカッコしいでないトム君が意外と好印象だった。

貧しい鉄鋼の町から出て行きたいと願う若者たち。しかしフットボールで活躍して大学への奨学金を得るとか、スカウトされるとかでもなければ、将来は地元の鉄工所で働くというレールが敷かれたような町。主人公は活躍できるようフィールドでの戦いを続ける。しかし大一番で失敗してしまう。果たして彼の将来はどうなるのか。

現実がよく出ている映画だと思った。親の経済力だけでは大学に行けないので、進学したいなら奨学金を手にするしかない。リー・トンプソン演ずるヒロインは、そこに向かって地道に頑張ってる女の子。トム君も大人を黙らせる大活躍をするどころか、対立したはずの大人からのアドバイスで、将来を見出そうとする。田舎町にはよくあるお話でしかない。「卒業白書」や「カクテル」の派手なトム君をイメージしたら、確かに地味な印象。ビデオスルーだったのもわからなくはない。しかし現実味がある作風だけに、納得させられたり、現状から飛び出したい気持ちに共感できる映画。

この手の映画って、主人公を慕って応援してしくれるヒロインは町に残る決断をしちゃいがちで、主人公との扱いの差をすっごく感じてしまう(最近なら「カセットテープ・ダイアリーズ」とか)。二人の将来を暗示させるようなラストを期待しちゃったんだけどな。リー・トンプソンとトム君のラブシーンあり。監督マイケル・チャップマンは、「タクシードライバー」など有名作で撮影を担当した人物。この映画では「スピード」のヤン・デボンが撮影を担当している。



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アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

2023-10-12 | 映画(あ行)
◾️「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル/I, Tonya」(2017年・アメリカ)
 
監督=クレイグ・ギレスビー
主演=マーゴット・ロビー セバスチャン・スタン アリソン・ジャネイ マッケンナ・グレイス
 
オリンピックにも出場したフィギュアスケート選手、トーニャ・ハーディングの半生を描く物語。ライバル選手だったナンシー・ケリガン襲撃事件でその名を語られることがどうしても多いだけに、ダーティなイメージが映画を観る前からあった。おそらく多くの人も同じではないか。しかも、邦題はご親切なことに「史上最大のスキャンダル」とつけてくれている。アメリカ女子選手で初めてトリプルアクセルを成功させた偉業は知らなくても、少なくともなんか"やらかした人"という先入観を持った上でスクリーンに観客は向かうのだ。ところが全編観終わると、印象が変わる。"やらかした人"なんだけど、この2時間で彼女の不屈の姿勢を知ったら、映画のラストには何故かカッコよく見えるから不思議だ。邦題で植えられたネガティブな先入観がもたらした化学変化だ。
 
大好きな村主章枝選手が、スポンサーなしに現役にこだわり続けて親の貯金を出させたエピソードを語っていたけど、フィギュアスケートはお金のかかるスポーツ。恵まれた家庭の子供が多い中、ワーキングクラス出身のトーニャは度胸と高い身体能力を武器に手作りの衣装でリンクに立ち続ける。だから技術点は高いのだが、芸術点で劣る。「三回転が跳べるのに何故私は負けるのか」と、審判団を挑発するような抗議を続ける。しかも当時国際大会では歌詞付きの曲を使用するのは減点となっていたのだが、トーニャはZZトップのSleeping Bagをバックにリンクを駆け回る型破りな選手。平昌五輪で歌詞付き楽曲が解禁されたのは記憶に新しく、羽生結弦選手がプリンス殿下を使用したのだが、トーニャはその遥か前。イメージダウンのリスクはかなりのものだっただろうに。
 
映画は登場人物にインタビューする場面が挟まる、セミドキュメンタリー的な演出。映画冒頭からみんな持論を展開し続けるのだが、どれも身勝手な言い分でイラッとさせる。しかも本人の主張を裏付ける場面が続くかと思いきや、次の場面では正反対の行動になっていたりする面白さ。毒のある母親にしても、暴力夫とその友人にしても、かなりのクズばかりなのだが、その常識にとらわれない言動はもはや笑うしかない。事件の渦中にある娘を心配して家を訪れたはずの母のポケットにカセットレコーダーが入っていたのには、もう呆れるしかない。オリンピック前に「ロッキー」と同じトレーニングする場面には笑った。スケートから引退させられたその後のトーニャ。映画はボクシングのリングに立つ彼女を映し出す。パンチを喰らってダウンしたトーニャが、カメラ目線で不敵に笑うラストシーン。なんだ、この不思議なカッコよさ。
 
使用された音楽がいい。特に印象的なのは、ダイアーストレイツのRomeo and Juliet。暴力夫と友人が車の中で聴いていたのは、ローラ・ブラニガンのGloria。「フラッシュダンス」で主人公の友人がフィギュアスケートの試合で使ってたよね。



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オー!ゴッド

2023-10-04 | 映画(あ行)

◼️「オー!ゴッド/Oh ! God」(1977年・アメリカ)

監督=カール・ライナー
主演=ジョージ・バーンズ ジョン・デンバー テリー・ガー ラルフ・ベラミー

初めて映画館で観た一般の外国映画は何だろう🤔。記憶を辿ると、おそらく小学生の時。母親が連れて行ってくれた「モダンタイムス」のリバイバル、夏に「スターウォーズ」を観たはずだ。そして確か秋に「アバ・ザ・ムービー」。その二本立てだったのがコメディ映画「オー!ゴッド」だった。クラシック、ドキュメンタリー映画、当時誰もが観たSWを除いたら、初めて映画館で観たリアルタイムの一般的な外国製劇映画(死語?)は、「オー!ゴッド」ということになるのかな。

TSUTAYAが発掘良品でDVD化してくれたのをレンタルして、2023年9月に再鑑賞。1978年の公開後、テレビで一度観た記憶がある。

主人公はスーパーマーケットの主任ジェシー。ある日彼を呼び出す変なメモが届く。友人の悪戯に違いないと思ったが、捨てたはずのメモが何故か彼の前に蘇る。不思議に思った彼は指定された場所に行くと、存在しない階にある部屋でゴッドだと名乗る声から人間へのメッセージを届けるように頼まれる。そして半信半疑の彼の前にゴッドは小柄な老人の姿で現れた。新聞社に話を持ち込むが狂信者扱いされるが、神と話した男としてマスコミが取り上げ始め、やがて宗教界を巻き込む大騒動に発展する。

「カントリーロード」で有名なカントリー歌手、ジョン・デンバーが主演を務めたのは注目すべきところ。代表曲の中では「緑の風のアニー」が好き。本作以外で映画出演したのは観たことがないが、誠実そうなキャラクターが好印象。しかも得意の歌を封印して神に振り回される男を熱演している。監督は後にスティーブ・マーチンと組んで怪作コメディを連発するカール・ライナー。脇役だけど、ギリシア正教の宗教家でドナルド・プリーゼンスが登場。

ジョージ・バーンズ演ずる神様の言動の面白さでクスッと笑えて、画面に登場するだけでほっこりした気持ちにさせられる。
「Oh, God !」
「呼んだか?」
しかし、上司にクビを言い渡されたり、宗教家と訴訟になったり、トラブルがどんどん大きくなる主人公への同情が先に立って、心から笑えるコメディかと言われたらちょっと違うかも。だが、クライマックスの神が見せる小さな奇跡と言葉はなかなか胸に響く。
「争うことはやめなさい」
神様、プーチンに言ってやってくれませんかねぇ。

旦那の行動がエスカレートするのにオロオロしながらも、寄り添ってくれる妻を演ずるのはテリー・ガー。同年製作の「未知との遭遇」も同じような役柄というのも面白い。好きな女優さん。「トッツィー」もそうだけど、困った顔する彼女にキュンとしてしまう。あ、そっか。初めて観た一般外国映画に出てきた金髪美女が、小学生男子の心に刻まれてたのかも!😂




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