Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM

2024-02-05 | 映画(か行)

◾️「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」(2024年・日本)

監督=福田己津央
声の出演=保志総一朗 石田彰 田中理恵 鈴村健一 三石琴乃 子安武人

あれから20年近く経つ。早いよなあ。SEED、SEED DESTINYは大好きだったから、続きを待ち焦がれていた。そして本作。デュランダル議長が提唱したデスティニープランの復活を目論むコーディネーターの陰謀に巻き込まれたラクスとキラ。かつての戦いが終わっても、根深いナチュラルとコーディネーターの対立は残っていた。おなじみのメンバーが新たな争いを治めるために立ち上がる物語。

前半は罠に堕ちるラクスにハラハラして、彼女が裏切ったと思ったキラのメソメソした様子にイライラ。おい。無双だったキラ・ヤマトはどこいっちゃったんだよ。それだけにアスランの登場と、キラにかける言葉がいちいちカッコいい。僕はマリュー・ラミアス艦長の大ファンだったので、久々に三石琴乃の「てーっ!」が聞けたのが嬉しくて♡。テレビのDESTINY後半は影が薄かったシン・アスカが、ちゃんと活躍するのも嬉しい。懐かしい面々がきちんと出てきて活躍してくれる。公開まで待たせた分、ファンサービスとしては期待以上という印象だ。

また、僕らのようなファーストガンダム世代に響く仕掛けもバッチリ。MSはもちろんだが、台詞の随所にファーストの記憶を呼び起こすワードが散りばめられている。台詞の細かいところ確認したいなぁー。もっかい観ようかな。

それにしても、出てくるみんなが
愛!
愛!
愛っっっっ!
と連呼する、連呼する🤣

「必要だから愛しているのではありません。愛しているから必要とするのです」とラクスが愛を説き、想像以上のポテンシャルを発揮するキラがその原動力を「ラクスへの愛だぁー!」と叫ぶ。アスランは心を読む敵に挑むために予想を超えた想像を働かせるし、シンのために×××まで…!戦闘中に愛を叫び続けるアニメキャラクターって、「宇宙戦艦ヤマト」の古代進のイメージだったけど、彼は一人で愛がわからねぇ敵に叫んでただけ。本作はみんながそれぞれの愛を叫ぶから、シリアスな戦闘シーンなのにクスッ🤭。ガンダムシリーズお約束の戦争に身を投じる若者たちの悲壮感。そこは押さえた上で、それぞれが抱える感情が等身大で描かれるから、キャラクターに親しみがある。それはSEEDの魅力だと思うのだ。

西川貴教with tの主題歌もよかったけれど、Meteor(ミーティア)のイントロが絶妙なタイミングで流れてくるのには、泣きそうになったよ🥹




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2024-01-28 | 映画(か行)


◾️「首」(2023年・日本)

監督=北野武
主演=ビートたけし 西島秀俊 加瀬亮 遠藤憲一

いつの時代でも、時の権力者たる者にクリーンなヤツなんているものか。政治とと金の話がいつまで経っても騒ぎのネタになるわが国。コンプライアンスの名の下でいろんなことが抑え込まれている昨今だけれど、ちょっと前、今のおっさん世代が若い頃でさえ、日常でも、配慮のカケラもないとんでもない言葉が飛び交い、手ひどい扱いを受けてきたものだ。ましてや戦国時代にその覇権を争っていたあまたの武将たちの時代は、もっともっと酷くって、力と威圧にものを言わせていたに違いない。テレビドラマで幾度も描かれる中で、僕らは美化されたものに慣れすぎてしまっている。

われらが北野武は、世の中に固定されつつあるそんな戦国武将のイメージを徹底的にぶっ壊す。男ばかりのキャスティング、映画冒頭から斬首刑シーン。血しぶきが飛び、切り落とされた首が転がる。その時代の命の軽さをその数分間で観客に思い知らせる。

シリアスに話が進むかと思いきや、唐突にコントのようなやり取りが盛り込まれる。大森南朋演ずる秀長、浅野忠信演ずる黒田官兵衛を相手に、いかにもアドリブだと思える珍妙な会話が続く場面。ふざけてる。「風雲!たけし城」を見ているような、楽しい気持ちになってくる80年代育ちw。でもこれが妙な生々しさがある。農民から成り上がった秀吉の育ちや粗暴さが伝わってくるのだ。

男色の描写は、これまでの北野武作品にも見られた。「座頭市」の少年の場面は短いけれど印象深い。本作では、遠慮なくストレートに描く。芸能界を揺るがした性加害問題報道の後だけに、力ある者は好き放題やるんだよと言わんばかり。これまた妙な生々しさ。

タイトルにまで挙げた「首」を、「どうでもいい」とテキトーに扱うラストシーン。弔いや悼む気持ちなんてカケラもない。その荒々しさは可笑しいし、痛快に思える人もいるだろう。でもシアターを出て冷静になると、背筋がちょっと寒くなる。

武内英樹監督の新作は、徳川家康や秀吉など歴史上の人物が内閣を組閣するんだって?。「首」を観た後の今。あんな戦国武将たちにニッポンを任せられるもんか。80年代育ち世代なら、たけちゃんが「オレたちひょうきん族」で演じていた鬼瓦権造のポーズでこう言うに違いない。
🖐️「じょーだんじゃないよ」💦


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帰れない山

2023-12-26 | 映画(か行)

◼️「帰れない山/Le Otto Montagne」(2022年・イタリア=ベルギー=フランス)

監督=フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン、 シャルロッテ・ファンデルメールシュ
主演=ルカ・マリネッリ アレッサンドロ・ボルギ フィリッポ・ティーミ エレナ・リエッティ エリザベッタ・マッズッロ

両親に連れられて、イタリア北部のモンテローザの村に夏を過ごしに来たピエトロ。彼は牛飼いの少年ブルーノと出会い、仲良くなる。都会育ちのピエトロと、学校にも通えていないブルーノ。興味や知識、体力や山で暮らす知恵など様々な差があったが、一緒に過ごす中でお互い大事な存在になっていた。しかし思春期になり、親と関わらなくなったピエトロは、山からも距離を置くようになる。父親が亡くなったことから、再び村を訪れたピエトロはブルーノと再会。ブルーノはピエトロの父親と生前にある約束をしていたと明かす。

慣れ親しんだ土地に根をはって生きるブルーノと世界をめぐるピエトロ。生き方が違う二人だが、決してそれが原因で対立することはない。それはお互いの生き方やこだわりに一目置いているし、認めあっているからだろう。劇中、取り囲む8つの山をめぐる生き方と、真ん中の高い山に居続ける生き方で、どちらがより得るものがあるかという例え話が出てくる。なにが幸せなのか、どう生きるのが自分がらしいことなのか。文字通り山に"還った"結末が印象深かった。

ピエトロが親と離れてから、ブルーノと父が親しく関わっていたことを知るピエトロ。大切な時間を親と過ごさなかったことを省みる気持ちはあっただろうが、だからといって親と親しくしてくれたブルーノを妬む気持ちはない。

長いこと人間やってると、どうしても僕らは人と自分を比べてしまう。そしてどこかで優劣をつけたがり、自分を肯定しようとしがちだ。おまけに男って見栄をはったり強がったりしたがる生き物だからなおさらタチが悪い。この映画の2人の関係を見ると、そんな自分が戒められているような気持ちになる。

美しい風景を映画館で観たかったな。高所恐怖症の僕には氷河を登るシーンがちょっと怖かった😰。






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グリニッチ・ビレッジの青春

2023-11-25 | 映画(か行)

◼️「グリニッチ・ビレッジの青春/Next Stop, Greenwich Village」(1976年・アメリカ)

監督=ポール・マザースキー
主演=レニー・ベイカー シェリー・ウィンタース ルー・ジャコビ クリストファー・ウォーケン

ポール・マザースキー監督作は、「ハリーとトント」しか観たことがなかった。主人公ラリーは過保護で過干渉な母親がいる家から逃れ、マンハッタンのダウンタウン、グリニッチビレッジのアパートに移り住む。当時のビレッジは芸術活動に熱心な若者であふれた街。女優を目指すサラ、インテリ詩人のロバート、ゲイの黒人バーンスタインなど、個性ある仲間たちと過ごす日々を描く。

母親が絶妙なタイミングで現れて主人公の日常を引っ掻き回す。見ようによってはコメディなんだけど、主人公にとっては本音ゲームやら別れ話の真っ最中。帰宅を促す夫をよそに干渉をやめない。シェリー・ウィンタースは、「陽のあたる場所」「アンネの日記」の若い頃から「ポセイドン・アドベンチャー」など脇役として印象的な仕事が多い人。この母親役もやり過ぎだけど憎めないキャラクター。

青春群像劇って、自分が共感できる誰かを探しながら観てしまいがち。ひと癖ある面々は確かに面白い。だけど、主人公ラリー君も物事に真剣に向き合っているのかわからない軽さが気になるし、クリストファー・ウォーケンがカッコいいロバートもなかなか素の自分を見せたりしない。自殺未遂を繰り返すアニタのエピソードにしても、その後の彼ら彼女らに何か変化をもたらすこともない。一緒にいる楽しさや居心地の良さが伝わってこなくて、青春映画としてはちょっと残念な気もする。西海岸に向かうラリーの将来に待つのは成功か、それとも。



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ゴジラ-1.0

2023-11-21 | 映画(か行)



◼️「ゴジラ-1.0」(2023年・日本)

監督=山崎貴
主演=神木隆之介 浜辺美波 吉岡秀隆 佐々木蔵之介

これまで「ゴジラ」は新作が製作されるたびに賛否が分かれてきた。ドラマ部分が掘り下げられると「もっと暴れるところが見たかった」と言われ、怪獣を見せることに力を入れすぎると「ドラマがない。お子様向け」と言われる。どこをターゲットにするかは非常に難しい。

今回の「ー1.0」は、元来特撮屋である山崎貴監督の本領発揮。エンタメ全振りな作風とは違って、人間ドラマ部分に力が入っている。敗戦後の日本に舞台を設定して、占領しているアメリカの力が借りられず、日本人だけで立ち向かわなければならないというストーリーが基軸。嘘をついて特攻を逃れた主人公と、戦争を生き延びた人々の群像が描かれる。対抗する術が限られている中、精一杯の作戦でゴジラに立ち向かうのは、これまでになかった展開だけになかなか面白い。そこにはオキシジェンデストロイヤーもメーサー砲もないのだ。

日本人って強大な敵や権力、陰謀に、一見無力な存在が、時に束になって立ち向かう話に感動しがち。そうした作品は数々あるが、例えば「サマーウォーズ」の花札対決や「ドラゴンボール」で元気玉に思わず感激しちゃうのはその典型だろう。そこには主人公に協力する人、携わる人々の顔が見える。この「ー1.0」のクライマックスもまさにそれで、作戦を立案して現場に実行させるだけだった「シン・ゴジラ」のクライマックスとは印象が全く違う。「ー1.0」は観客の情緒に訴えかけてくるのだ。これは山崎貴監督がこれまで手がけてきた作品たちで培った作風が生きているのだろう。日本人だから響く部分かもしれない。戦争を生き延びてしまったことを後ろめたく思う当時の心持ち。海外の鑑賞者に理解してもらえるだろか。

されど、本作最大の見どころは今のVFX技術だから実現できたゴジラの描写。これまでにないド迫力だ。熱線を吐く前に背びれが光を放つデザインも好き。劇場で観る価値は十分にある。過去作へのオマージュも随所に見られる。伊福部昭のテーマ曲はもちろん、「キングコング対ゴジラ」など過去の作品の音楽のメロディが見え隠れするのが嬉しい。列車を襲う場面や実況中継する記者たちは、もちろん初代。大戦中に南の島に現れた生物というエピソードは「ゴジラVSキングギドラ」、海中から再び浮上したゴジラが白眼むいてるのは金子修介監督版のイメージなのだろう。

お涙しぼる映画ばっかり撮る人だと山崎貴監督作を避けているけれど、本気が感じられてよかった。でもなぁ。宇宙戦艦ヤマトをあんなチンケな実写版にした恨みだけは忘れてねぇからな、監督。



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孔雀夫人

2023-11-19 | 映画(か行)

◼️「孔雀夫人/Dodsworth」(1936年・アメリカ)

監督=ウィリアム・ワイラー
主演=ウォルター・ヒューストン ルース・チャタートン ポール・ルーカス メアリー・アスター

ウィリアム・ワイラー監督作は、映画に夢中になり始めた頃からけっこう意識して観ていた気がする。雑誌が名作映画として紹介する記事には「ローマの休日」を筆頭に「ベン・ハー」や「大いなる西部」など名前が挙がる。一方でサスペンスタッチの「必死の逃亡者」や、サイコスリラーの「コレクター」など異色な作品にも魅了されてきた。淀川長治センセイの著作でちょくちょく名前が挙がっていて絶賛されていたのが本作「孔雀夫人」。どんなんだろうと気になっていた。僕が20代の頃、BSで放送されて初めて観賞した。

実業家の主人公ドッズワース氏は長年経営してきた会社を人に譲り、第二の人生を探すべく、妻と世界一周旅行へ。仕事ひと筋だった彼は見るもの全てに興奮しっぱなし。一方、常に若くありたいと願う妻は孔雀のように着飾って毎夜のパーティに興じている。滞在先のパリで妻に恋人ができてしまう。妻はパリに残ると言い出し、夫婦は遂に仲違い。次第に二人の考え方の違いが明らかになっていく。次のウィーンで妻は若い男に言い寄られてのぼせ上がってしまう。妻を残して訪れたベニスで彼はある未亡人と出会う。

ラストの主人公の決断。自分にとっての幸せとは何か。妥協ではなく、幸福を追い求めることの大切さを訴える。とても引き込まれる映画だった。初見だった20代とは違って今の年齢目線だと、奔放な妻だけが悪いのではなくて、夫婦の長年のすれ違いが招いたことだと理解できる。それだけにこの映画みたいな状況ならば、それぞれが幸せになりたいと思うことに理屈なんてない。気持ちが同じベクトルに向かってる人と一緒にいるって幸せ。



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キャバレー

2023-11-11 | 映画(か行)

◼️「キャバレー/Cabaret」(1973年・アメリカ)

監督=ボブ・フォッシー
主演=ライザ・ミネリ マイケル・ヨーク ヘルムート・グリーム ジョエル・グレイ

高校時代にFMの映画音楽番組でライザ・ミネリのパワフルな歌声を聴いて、数々の名作映画を紹介する書籍でボブ・フォッシー監督の凄さを教えられ、いつか観なきゃ!と思っていた「キャバレー」。2022年の「午前10時の映画祭」で上映すると聞いて行く気満々だったのにスケジュールの都合で行けなくて、生息地のレンタル店には置いてない、配信もない。宅配レンタルでやっとありつけた🥲。

1930年代のベルリンが舞台。スターを目指して夜な夜なキャバレーで歌うサリーの下宿に、イギリスから学生で作家のブライアンがやって来た。二人は意気投合し誰よりも仲良くなる。女性とうまくいかなかった過去を持つブライアンだったが、サリーとは恋人として結ばれた。二人は裕福なドイツ人男爵と知り合うが、それが2人間に亀裂が入るきっかけとなっていく。

この映画最大の魅力はキットカットクラブのステージで繰り広げられるミュージカル場面。気味の悪いメイクをしたジョエル・グレイが、踊り子たちを紹介し、自らも歌い踊る。それは下品でいかがわしいものから、芝居がかったもの、ナチスが台頭する世相を扱ったものまで幅広い。小編成バンドの軽妙な演奏と、サリーの力強いボーカルに惹きつけられる。

そうした音楽と並行して、ナチスがだんだん世間で幅を利かせていく様子が無言で描かれる。映画の前半で店を追い出された党員が、今度は仲間を引き連れて店のスタッフをボコボコにする。ユダヤ人であるナタリアに迫る危険。そして映画の最後には、クラブの壁に映る像に鉤十字の腕章をした者が増えているのが見てとれる。その不気味な雰囲気が、この物語の先にある未来が暗く厳しいものであることを、声高に示すことなしに感じさせる。

やがて、サリーとブライアンの恋物語もすれ違いの結末を迎える。再びステージに立つサリーが歌うのはタイトルソングCabaret。

人生はキャバレー、
キャバレーにおいでよ♪

それは、サリーがこれからも歌い続ける決意の歌でもあり、一方でこれから先の暗い時代を憂いて刹那な喜びでもみんなで楽しもうという歌でもある。高校時代に初めてラジオで聴いた時は、単にパワフルで楽しいミュージカルナンバー。こうして物語を経ることで、歌の裏側にある寂しさが胸にしみて、涙があふれそうになる。オリジナルの舞台の良さがあるのはもちろんだが、時代背景や悲しい人間ドラマを巧みな編集で織り上げた傑作。何度も観たい楽しいミュージカルとは違うけれど、忘れがたい映画であるのは間違いない。





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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

2023-10-25 | 映画(か行)

◼️「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン/Killers Of The Flowermoon」(2023年・アメリカ)

監督=マーチン・スコセッシ
主演=レオナルド・ディカプリオ ロバート・デ・ニーロ リリー・グラッドストーン ジェシー・プレモンス

マーチン・スコセッシ監督が描くアメリカの黒い歴史劇。「ギャング・オブ・ニューヨーク」ではアイルランド系移民とイギリス系の対立と抗争を描いた血生臭い物語だった。その映画で先に新大陸に来たから"ネイティブ"と名乗っていた白人が、先住民であるネイティブアメリカンに何をしてきたのかを描いたのが本作「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」である。

オイルマネーという富を得た先住民オセージ族。白人たちはその財産から恩恵を受けようと町に集まり、そして財産を奪おうと近づいていく。部族の娘に言い寄る者が現れ、やがて相次ぐ殺人が起こる。部族の協力者として信頼を得ていたヘイル。その甥アーネスト、彼と親しくなる部族の娘モリー。連続する不可解な死に、ついにFBIが動き始める。

ヘイルを演じたロバート・デ・ニーロのしたたかな黒幕ぶり。世間的には先住民のよき理解者でありながら、合法的な手段で財産を狙う。一方で汚い仕事を町のゴロツキに依頼して、着実に事を進めていく怖さ。そのヘイルに利用される甥アーネストを演ずるのがレオナルド・ディカプリオ。汚れ仕事を依頼して、事の重大さや叔父の真の狙いがわかる立場であったのだろうが、妻の親族が一人また一人姿を消す中で、適当にはぐらかすダメ男ぶり。クライマックスで妻に投げかけられた問いに、まともに答えることもできない。叔父の言いなりであったが、妻への愛だけは別だと本人は思っていたのだろうか。しかし彼らには先住民を見下す差別的な意識が確実にあったし、白人社会全体もそうだった。KKKのやり方は気に入らないとヘイルが言う場面があるが、先住民を利用したいだけの彼だ。自分たちとは違う民族を見下していることに何の違いもない。

歴史に埋もれ、忘れ去られそうなこうした愚かな出来事。しかしこうした過去があったことを映画は語り継ぐことができる。史実と違って脚色があるのは百も承知だが、実話に基づくことを謳うだけでも大きな意義がある。

前作「アイリッシュマン」同様3時間超の大作だが、決して飽きさせることはない。むしろ配信で観たらここまで物語に没入することはできない。Apple資本で製作されてるから配信されるのは間違いないが、時間が許すなら劇場で味わって欲しい。配信のみになるところを、パラマウント社が劇場でかけるべきと主張してくれたと聞く。本当に感謝。

音楽担当は、ザ・バンドのメンバーで、2023年に亡くなったロビー・ロバートソン。スコセッシ監督がザ・バンドのドキュメンタリー映画を撮り、長く続く縁ある人物だ。またロビー・ロバートソン自身はカナダ人とインディアンの混血であることを明かしており、先住民の伝統音楽を伝承することにも努めていた。本作ではその手腕も発揮されている。




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キングダム 運命の炎

2023-08-20 | 映画(か行)

◼️「キングダム 運命の炎」(2023年・日本)

監督=佐藤信介
主演=山崎賢人 吉沢亮 大沢たかお 清野菜奈 橋本環奈

原作が長いだけに、この実写映画化も長いシリーズになっちゃうのだろうか。でも山崎賢人がおっさんになる前に撮らないと話が進まないぞ。大沢たかおも毎回体型を整えるの大変だろうしw。それはさておいても、次も映画館で観たい!と思わせる日本映画のシリーズものって今どき珍しい。

お話が面白いのはもちろんだけど、この映画化が成功しているのは、他の映画とは没入感が全然違うのだ。戦況を一緒に見守っているような気持ちにさせる。今回は前作以上に戦況の説明が(くどいくらいに)分かりやすい。両国の総大将が見る戦況だけでなく、軍師見習いの二人が事細かに解説する。悪い例えで恐縮だが、実況中継に加えて、両軍の監督が作戦を視聴者に解説している野球みたいなもの。

百人将となった信の活躍が描かれるが、前作でお馴染みの面々が彼を盛り立ててくれるのが楽しい。清野菜奈演ずる羌瘣と、最前線で見せるコンビネーションは見事。これまた例えが悪いが、「日本侠客伝 花と龍」の高倉健と藤純子が黒田節を歌いながら戦うクライマックスみたいに、緊張感と華麗さが同居する場面だ。

新キャラも続々登場する。メフィラス星人…じゃなくて山本耕史演ずる不敵な軍師、焦らしに焦らして姿を現す吉川晃司は、次回どれだけ引っ掻きまわすか楽しみな存在。紫夏を演ずる杏が熱演する前半の回想シーンもドラマティック。それにしても、小栗旬が演ずる役って、どうして出てくるだけで場の空気をチャラけさせてくれるのかな💢。

ともあれ続編を待つ。
やっぱり王騎将軍、最高ですっ😆


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現金(げんなま)に手を出すな

2023-08-18 | 映画(か行)

◼️「現金に手を出すな/Touchez pas au Grisbi」(1954年・フランス=イタリア)

監督=ジャック・ベッケル
主演=ジャン・ギャバン ルネ・ダリー ジャンヌ・モロー リノ・ヴァンチェラ

フレンチノワールの先駆けとも言える「現金(げんなま)に手を出すな」は今回初めて観た。

主人公の初老ギャング、マックスを演ずるジャン・ギャバン。「地下室のメロディー」や「シシリアン」で演じた暗黒街の大物と同じく貫禄ある役柄だ。映画好きの親父殿は、暗黒街ものが放送されると録画してよく観ていた。おかげでジャン・ギャバンと言えばこういう役か、トラックの運転手(「ヘッドライト」)のイメージしかない。そもそも初めて観た「望郷」(これも親父殿のオススメ)もモロッコに逃げた犯罪者役だったし。

マックスは引退をしようと考えている。年齢を意識した台詞があちこちに出てくる。若くないと何度も言うし、慕ってくれる女性にもどこか距離を置く。なじみの店に入れば顔見知りが声をかけてくれるし、キツい仕事を頼める若い知り合い、自分に何かあった時のことを頼める店主、裏方稼業のコネクションと信頼関係。一方でいざと言うときはタフな立ち回り。チンピラ野郎を縛り上げ。口答えする踊り子(なんとジャンヌ・モロー姐!)には有無を言わさぬ平手打ち。そして容赦なく機関銃をぶっ放す。結果としてヘマをやった長年の相棒には友情も忘れない。心優しきタフガイだ。

撮影当時ジャン・ギャバン50歳😳。…いやー、わたくし、その年齢は既に超えちゃったけど、こんな貫禄も人脈も落ち着きもありゃせんですわー💧。

敵役アンジェロを演ずるのは、本作がデビューとなるリノ・ヴァンチェラ。独特な面構えが印象に残る人だが、決して短い出番ではなく、最後まで話を引っ掻きまわすキーパーソンだ。「死刑台のエレベーター」で最後に登場する刑事も、「モンパルナスの灯」の画商も、短い出番に強烈な印象を残すが、それ以前にこんな大役をやっていたとは。「こいつは元レスラーなんぞ。そげな顔しちょんやろが」と、リノ・ヴァンチェラを見る度に親父殿に説明された記憶がある。好きなんだろな。

虚しさの残るラスト。何事もなかったように振る舞わねばならないマックスだが、表情の翳りは隠せない。無言のジャン・ギャバンが何とも言えない余韻を残す。渋いっ。



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