Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

キートンの大列車追跡

2023-08-16 | 映画(か行)

◼️「キートンの大列車追跡/The General」(1926年・アメリカ)

監督=バスター・キートン
主演=バスター・キートン マリアン・マック グレン・キャベンダー

トム・クルーズが年齢と戦うかの如くアクションに挑んだ姿も、ジャッキー・チェンが様々なアイディアのアクションに誰よりも先に挑んだ姿も、映画ファンの心に深く刻まれている。そのさきがけでもあるバスター・キートンの偉大さは、もっともっと世に知られて欲しい。

世間からも高い評価を受けているこの「大列車追跡」は、映画と相性のいい鉄道アクションの先駆的題材。何よりもすごいと思うのは、これが徹頭徹尾コメディだということ。しかも演じてる当人はニコリともしない。ドリフターズ育ちの僕ら世代は、舞台装置のドタバタコントには親しんでいるけれど、さすがに鉄橋から本物の機関車を落とさない。それをやってのけて笑いに変えた例って他に何があるだろう。

追跡劇は一方通行の追いかけっこだ。映画の撮り方次第では単調なものになりがち。そこに複数のハラハラさせるものが加わってこそ面白みが増幅していく。本作では本筋の追跡劇に、敵の襲撃を阻止できるか、主人公が周囲に認められる人物になれるか、そして恋人奪還が絡みつく。戦争映画であり、成長物語であり、ドタバタコメディでありラブコメ。いくつもの要素がひとつの線路に乗っかっている。サイレント時代の1926年に、75分の尺でこれをやってのける大傑作。

キートン、もっと観てみたい。






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恋するシャンソン

2023-08-04 | 映画(か行)

■「恋するシャンソン/On Connait La Chanson」(1997年・フランス=スイス=イギリス)

監督=アラン・レネ
主演=アンドレ・デュソリエ アニエス・ジャウィ サビーヌ・アゼマ ランベール・ウィルソン ジャン・ピエール・バクリ

●1998年ベルリン国際映画祭 銀熊賞(生涯貢献賞)
●1997年セザール賞 作品賞・主演男優賞・助演男優賞・助演女優賞・脚本賞・音響賞・編集賞

かつて「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人たち」でジャック・ドミ監督は台詞のすべてを歌にした。それはとてもミュージカルとはひと味違った素敵な試みだった。それとは違うが、普段生活する中でふと歌の文句が頭を過ぎることってないだろうか。人からなにか相談をもちかけられたけど断りたい・・・と思ったとき、中森明菜の「禁区」(♪それはちょっとできない相談ね)心の中で流れたり、吉野屋に立ち寄ると頭の中で中島みゆきの「狼になりたい」が流れてちょっと気だるい気分になったり(僕はおかしいのだろか?w)。

「恋するシャンソン」はシャンソンやフレンチポップスが散りばめられた映画。だが場面を盛り上げるために既成曲が流れるような使い方ではない。それは台詞の一部になっているのだ。映画の冒頭。ヒトラーからパリを焼き払う命令を受けたドイツ人将校が突然綺麗な声で歌い出す。美しいパリの街を焼き払うことなんかできない。そう思った将校は、ジョセフィン・ベーカーの「二つの愛」を高らかに歌い始めるのだ。
♪私は愛するものがふたつあるの/それは故郷とそしてパリ
この映画が面白いのは、演じる役者が自分の声で歌うのではなく、オリジナルの歌の断片が台詞として挿入されること。いかつい男優が突然女性の声で歌ったり、もちろんその逆も。曲はあくまで断片として流れるので、唐突さとアンバランスな感じが面白い。医者にかかる登場人物の一人が症状を述べる代わりに流れるのは「体の弱い僕」。
♪脾臓はぱんぱん/心臓はどきどき
・・・と症状を延々早口で歌い続けるコミックソング。相手を勇気づけようと拳を握って歌うのはフランス・ギャルの「レジスト」。不動産業を営むプレイボーイはジャック・デュトロンの「僕は女の子たちが好き」。意見を聞かずに暴走する妻に別れを切り出そうとする夫が口ずさむのはセルジュ・ゲンスブールの「手切れ」。オリジナルを知らずとも選曲がいい、と思えるのだがサントラでそれぞれの曲をフルサイズで聴くと選んだ理由がよくわかる。シャンソンでは男女の掛け合いがみられるものもある。ダリダとアラン・ドロンの「甘い囁き」(サントラ未収録が残念)、アルレッティとアキスタバスの「そして残りは」も効果的に使われている。

実は映画の存在を知ってサントラを先に購入していた。だけどなかなか観る機会がなくってやっと観ることができたんでした。フランス映画らしい恋の群像劇。でもそれをあの静寂の映画「去年マリエンバートで」を撮ったアラン・レネが撮ることが観る前から不思議で仕方がなかった。僕は「マリエンバート」と「恋するシャンソン」に共通するレネ監督らしさを見いだせる程レネ作品を観ていないが、敢えて言うならば遠景でストーリーを描いているところかな。皿の積み重なった不思議なオブジェがある広場を見下ろす借家のバルコニー。上から見る風景とそこで小さく動く人。群像劇の面白さは、観客である僕らが多くの登場人物とそれぞれの交錯する思いを遠くから見守っているようなもの。それはマリエンバートで城の中庭で位置を変え続ける男女を見つめ続ける遠景とどこか似ているのではなかろうか。ともかく音楽と恋模様を楽しむのがこの映画は吉。さぁサントラ聴こう。



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君たちはどう生きるか

2023-07-21 | 映画(か行)

◼️「君たちはどう生きるか」(2023年・日本)

監督=宮崎駿

さあて何を書こう。レビュー書くのに本当に困っている。他に観たい映画があったのだが、「君たちは…」があまりにも情報がないもので落ち着かなくなって結局仲良しと一緒に映画館へ出かけた。僕みたいな輩を公開1週目に動員できたのは、宣伝なしの効果かもしれないぞw。にしても、うまく感想を書けるかな。何から書いていいやら。ともかく思いつくままに。

お話の外形だけを捉えるならば、異世界に行った少年が冒険を通じて成長するというもので、「千と千尋の神隠し」と同じようなフォーマットだと言える。しかしそこだけでこの映画を捉えてしまうと明らかに物足りない。だって千尋が経験する出来事や出会う人々に比べたら、「君たちは…」は派手さもないしキャラクターたちもどこか地味だ。しかも関係性を理解するのに十分な時間と挿話が観客に与えられずにお話は進行する。

確かに映像はすごい。特に冒頭の火災シーン。火の粉が飛んでくる様子や、それが建物に引火しないように捕虫網みたいなもので集めてる様子など、緊迫感と主人公の昂る感情と戦時中の厳しさが一体となる場面だ。幼い頃に戦争の被害や疎開を経験している宮崎駿だからできる表現かも、と思うと劇場で観てよかったと思えた。

そこから先も、ところどころに過去のジブリ作品を思わせる描写を挟みつつ、アニメだからできる表現や迫力が確かに面白い。過去作へのオマージュとの感想をたくさん見かけるけれど、決して露骨に狙ってはいないように思える。単に宮崎駿はこういう絵や展開が好きなだけだろう。歴代おばあちゃんキャラが揃い踏みしたのかと錯覚したし。寝る時に魔除けに置けるように、商品化を希望しますw。

それにしても、何故このタイトルなんだろう。北米公開が決まったそうだが、タイトルは「少年とサギ」。なんで日本人にはこのタイトルを突きつけるのだ。誰もがこのタイトルで、新作は宮崎駿翁のお説教映画に違いないと思っただろう。劇中出てくる吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」。主人公に母が用意してくれていた本だ。戦前に書かれたものだし、宮崎駿少年もきっと読んでいたに違いないし、ここからインスパイアされてこの映画が製作されているのは間違いない。

数年前にベストセラーになった漫画版で読んでいる。確かに主人公の少年はどちらも片親の男子中学生で、経験と失敗から人間関係を学んで成長するストーリーは共通だ。そのテーマは現在にも通ずるものだし、うちの子供が今小学生だったら朝読書に持っていきなさいと渡していたかもしれない。じゃあ、宮崎駿翁もこの本の主人公が人間関係を学ぶ姿勢を、得意のファンタジーの形にすることで観客に触れて欲しいとでも思ったのだろうか。いや、だったらもっと堅苦しくて、多くの人がイメージした説教くさい映画になっていたに違いない。

この映画の何に僕が悶々としているのか。宮崎駿監督作につきものだったものがほぼないからだ。それは空への憧れを感じさせる飛行(又は浮遊)シーン。飛行機のパーツは出てくるけれど。あとは多くの感想にあるように、主人公の心の動きが見えないところかな。叔母を「お母さん」と呼べるようになるまでの葛藤があるはずなのに、そこが感じられない。「思い出のマーニー」のラスト、やっと「おばちゃん」と呼ばなくなる場面につながる、ジーンとくる感じを期待していたんだけれど、宮崎駿監督にはとっては、それも作品に散りばめるジブリ的な要素の一つに過ぎなかったのかもな。

藪のトンネルをくぐり始めるところで「トトロ」をイメージした人は多かったと思うのだけど、僕はひねくれているのか「海辺のカフカ」を思い浮かべてしまった。でも他の映画友達はこの作品を観て村上春樹の最新作が頭に浮かんだと言う。思考回路が似ているのかもしれないw。




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彼女とTGV

2023-07-17 | 映画(か行)

◼️「彼女とTGV/La femme et le TGV」(2016年・スイス)

監督=ティモ・ヴォン・グンテン
主演=ジェーン・バーキン ルシアン・ギニャール ジル・チューディ

ジェーン・バーキンの訃報を昨夜目にした。今年は本当に辛い訃報ばかりだ。子供の頃から憧れて、いろんな影響を受けてきた大人たちが次々旅立たれていく。ジェーン・バーキンもその一人。銀幕での美しいお姿も、セルジュと創り出した音楽も、心に残るものばかりだ。飾らないのにスタイリッシュで、心に素直な発言と行動がカッコよくて。

セルジュの言葉遊びが美しい名曲。


「スローガン」「ガラスの墓標」も「太陽が知っている」も好き。だけど、個人的に印象深かったのが幼い娘の友人男子に恋をする「カンフー・マスター!」。年齢を重ねてもときめきを忘れないヒロイン像を素敵だなと思った。

ショートフィルム「彼女とTGV」は、スイスの田舎にポツンと建つ家の窓から、毎日特急列車に手を振る女性の物語。ある日、列車の運転手からお礼の手紙が届く。そこから手紙を通じて始まったやりとりは、彼女を生き生きとさせる。クロワッサンとトリュフが評判だった彼女のパン屋は安売り店に客を奪われている。彼女の誕生日に久々に息子がやって来るが、投げかけられたのは高齢者施設への入所を促す言葉。その日を境に毎日手を振っていた列車が通らなくなる。

実話に基づくお話とのこと。わずか30分の映像の中に喜怒哀楽と人情、老いと社会の変化、美しい風景と人間模様が詰め込まれている。トリュフチョコが詰められた小箱のように、小さいけれどスイートな幸せとビターな切なさが並んでいる。一瞬しか映らない街の人々までもが愛しくて感じられる。花に水をやる男性も、毎朝枕を叩く女性も、郵便配達人も。店の前に迷惑駐車するシトロエンの主が、罪滅ぼしにトリュフを買い求めにやって来る。そのトリュフをバレエを練習する女性に渡す様子がカーテンに影絵のように映す演出が粋でオシャレ。

クライマックスのチューリッヒ駅。ほっこりするラストシーン。ラッセ・ハルストレム監督の「ショコラ」はファンタジーだったけど、現実世界にも同じような人情物語がある。幸せな気持ちをくれる30分。ジェーン、晩年にこんな素敵な婆さんを演じてくれてありがとう。

セルジュ・ゲンスブールの名曲「手切れ」を、ジェーンはセルジュ追悼コンサートで歌った。手切れなんて冷たい邦題だが、直訳は「私はさよならを言うためにここに来た」。僕は昨夜この曲を久しぶりに聴いた。自分の葬式で流したいと密かに思っている曲でもある。

R.I.P.




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ゴジラvsビオランテ

2023-07-06 | 映画(か行)

◼️「ゴジラVSビオランテ」(1989年・日本)

監督=大森一樹
主演=三田村邦彦 田中好子 高嶋政伸 高橋幸治

平成ゴジラ"vsもの"第1作「ゴジラvsビオランテ」は、これまでになかった発想の面白さが光る作品。バイオテクノロジー技術の暴走が描かれるのは、当時からすればかなり先進的だ。クローン羊ドリーやヒトゲノムなんてもっと後の出来事だし、しかもゴジラの細胞から人間の手によって新たな脅威が生まれるのがなんとも皮肉な展開。さらに核エネルギーを喰らうバクテリアでゴジラに対抗する発想が面白い。そしてG細胞の設定はその後の作品にも継承される。

ビオランテとの対決が物足りないとか、シリーズに幾度も登場するスター怪獣の魅力には及ばないとの感想もあるだろう。けれどビオランテの悪魔的な造形美は他にない唯一無二のもの。二体に自衛隊の新兵器が絡むバトルも他の作品にはない面白さがある。

けれどテーマを盛り込み過ぎで消化不良の感もある。神をも恐れぬ企業の商魂、三田村邦彦と田中好子の間柄にしても、自衛隊の新旧すれ違いにしても、それぞれの要素は面白いのにどれも後一歩踏み込めない印象。ビオランテを生み出した博士は全く悪びれてない。相楽晴子演ずるテレビのリポーターに悪態をつく。いや、あんたがあれを生み出したんでしょうが。企業も徹底した悪になれないし、古参の自衛官が若手の高嶋政伸を認めてあげるひと言もない。

こんだけあれこれあったのににこやかに言葉を交わす二人だけは印象的だった。
「これからどうする」
「ずっと一緒にいるわ」
「家に帰って寝る」
「私も寝るわ」
田中好子のラストのひと言にドキッとするお父さんいただろなw(考えすぎです)。

ゴジラと通じ合える超能力少女が本作で初登場。序盤で姿を消す沢口靖子は、科学者の娘役。この作品からウン十年、僕らは白衣姿の沢口靖子をテレビで見慣れているだけに(笑)、研究室に登場する場面はあの頃にはない説得力w。関西国際空港がまだ建設予定地として登場することに、時代を感じる。





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岸辺露伴ルーヴルへ行く

2023-06-04 | 映画(か行)

◼️「岸辺露伴ルーヴルへ行く」(2023年・日本)

監督=渡辺一貴
主演=高橋一生 飯豊まりえ 木村文乃 長尾謙杜 安藤政信

ジョジョのスピンオフである岸辺露伴の物語を実写ドラマにするなんて大丈夫?と、初めてドラマを見る時に思った。高橋一生のキャスティングもどーせ人気者を据えただけだろう。かつてジブリアニメで、中坊のくせに同級生にプロポーズするバイオリン小僧を演じて、僕をドン引きさせた男やぞ(笑)。ところが。初回「富豪村」を見てぶっ飛んだ😳。やばっ。かっけー。何度か見て、最後はテレビに向かって「だが断る!」を唱和してしまうお気に入りに。その劇場版である。

この世で最も黒い色で描かれた絵をめぐって、露伴自身の過去の因縁が絡むエピソード。若い頃に聞いた黒い絵に出会うために絵画オークションに参加した露伴は、事件に巻き込まれる。取り返した絵のキャンバスの裏側には、"ルーブルで見た黒、後悔"との文字が。漫画の取材、そして絵の謎を解くために岸辺露伴と担当編集者泉は、パリへ。

若き日の露伴がある夏出会った黒髪の女性。彼女の口から聞かされた黒い絵。彼女をモデルに描いた露伴の絵に対する過剰な反応。記憶と目の前の事件で頭の中が混沌とする中で、さらにルーヴル美術館の地下倉庫という迷宮的な舞台が用意されて、雰囲気はさらに高まっていく。

「岸辺露伴は動かない」はスピンオフでありながら、バトルが楽しい「ジョジョ」本編とは違う怪奇ミステリー。僕は「Fate」シリーズの中でも、同じようにミステリー要素が強い「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」が大好きなだけに、そもそも原作のテイストが自分に合っている。地下倉庫で「プロットを思いついたよ」と語り始める露伴先生。それは事件の謎解きの始まりだ。でも映画はそこで終わらず、露伴の記憶の謎解きが控えている二重構造。本物と偽物が本編を貫くキーワード。それを骨董屋でのエピソードで見せつける巧さ。ドラマの尺に慣れているから映画が冗長に感じるのではないかと思ったが、全くそんなことはなく、エンドクレジットが名残惜しくさえ思う。

そしてこの作品は映画館でこそ観るべき。本作を彩る黒は、テレビでは表現できない黒であるべきだからだ。「チコちゃんに叱られる」でも言っていたが、映画館の暗闇は深みのある究極の黒を表現するために必要なもの。映像の陰影が全く違うし、白黒の深みもより黒いものが表現できるという。露伴先生が落札するフランス人画家の黒い絵、木村文乃の美しい黒髪、露伴が描いた原稿のベタ塗り、飯豊まりえの黒いリボン(泉京香役の髪型好き♡)、ルーヴル美術館のモナリザの黒髪。そしてクライマックスに登場する黒い絵、そこに描かれたもの。画面が暗すぎてなんかわからんという感想もあるだろうが、明度の高いテレビ画面では味わえない黒がそこにはある。

映画館で黒とミステリーを味わうべし。




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キングコング対ゴジラ

2023-05-05 | 映画(か行)

◼️「キングコング対ゴジラ/King Kong vs Godzilla」(1962年・日本)

監督=本田猪四郎
主演=高島忠夫 佐原健二 浜美枝 若林映子 藤木悠

初めて映画館で一人で観た映画って何ですか。

僕は小学生の頃、1977年春の「東宝チャンピオンまつり」で観た「キングコング対ゴジラ」だった。
😫「ゴジラとキングコングやぞ。観たい。連れてけ」
😾「忙しい。金渡すから一人で行ってこい」
そう親に言われて地元の東宝へ。チケット買う時に「お父さんやお母さんは?」とか尋ねられないだろうかとドギマギ。お子ちゃまには大劇場がものすごく広く感じられて、どこに座ろうとキョロキョロ。併映は「巨人軍物語 進め‼︎栄光へ」「円盤戦争バンキッド」「まんが日本むかしばなし(桃太郎)」「ヤッターマン」。正直言うと、ヤッターマン2号アイちゃんの変身シーンを大画面で見られたことに異常に感動した(恥)。

さて。お目当てだった「キングコング対ゴジラ」。今回BS 12の放送でウン十年ぶりに観た。なにせ東宝チャンピオンまつりは短縮編集版だから初めて目にする場面やら、こんなんだっけ?と思うことあれこれ。子供心に強烈に残っていたのは、南の島人たちの歌声。
♪あーしーあのらい、あせけーあのらい
大劇場の暗闇、お子ちゃま一人であれを聴くオープニングに、なんか心細い気持ちになったのを思い出した。

二大怪獣の出現に右往左往する人間たちの姿も描かれるけど、あの手この手で応酬する初期の昭和ガメラよりもどこか残念な感じがするのは何故だろう。北極の氷山からゴジラが登場していきなり砲火が浴びせられるけど、そんな軍事基地が近くにあるもん?平田昭彦ら科学者の意見もなんか投げやりに聞こえるし、クライマックスでキングコングがパワーアップするくだりも強引にしか思えない。こんなんだっけ?パシフィック製薬の有島一郎部長を中心としたコメディパート、高島忠夫と藤木悠のお気楽ムード。ゴジラ第3作にしてここまでゴジラ=核の脅威の色彩が薄まっていたのか、と改めて思う。

キングコングが浜美枝を握って国会議事堂に登る場面は、オリジナルへの敬意の表れ。浜美枝と若林映子の「007は二度死ぬ」ヒロイン揃い踏み。この辺は加点要素😊。そもそもはパシフィック製薬がスポンサーをするテレビ番組の視聴率稼ぎから始まった騒動。企業名の冠がついたテレビ番組の裏側では、今もこういうすったもんだがあるんだろうか。






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激突!

2023-03-14 | 映画(か行)

◼️「激突!/Duel」(1971年・アメリカ)

監督=スティーブン・スピルバーグ
主演=デニス・ウィーバー キャリー・ロフティン エディ・ファイアストーン

小中学生でスピルバーグに未知との遭遇してしまった僕ら世代の映画ファンは、スピルバーグのフィルモグラフィーを追いかけて育ったようなところがある。初期の作品が放送されたらテレビの前にかじりつき、監督を担当した唯一の「刑事コロンボ」はきっちり録画し、新作が封切られたら映画館へ。長いキャリアの半分以上をリアルタイムで追いかけている映画人はおそらく他にいない。観てないのは数える程だろう。

初期の作品はどれもすごいのだけれど、中でも忘れられないのが「激突!」。元々は低予算テレビムービーとして製作されたのだが、日本では劇場公開された。そのせいで劇場デビュー作の邦題が「続・激突!」になった。

タンクローリーを追い越したら、その後執拗に追い回されて、恐怖を味わう主人公デニス・ウィーバーをひたすらカメラが追い続ける映画。何がすごいって、会話するのは冒頭、途中から立ち寄るガソリンスタンドやドライブインのシーン程度で、後は疾走する車、車内での叫び。長距離ドライブする理由は申し訳程度に説明され、とにかく車中のシーンが続く。不気味なタンクローリーに追い回され、背後からプッシュされ、踏切ではグイグイ線路に押し込まれそうになる。デカい車が路肩に停まってるだけなのに、観ているこっちまで戦慄してしまう。

巨大な自動車が生きているみたいに見えてくる。さらに相手のドライバーは姿を見せない。窓からのぞく腕を除いて、最後まで全く映らない。そして主人公が追われる理由も具体的に示されることもない。ドライブインで客の中にタンクローリーのドライバーがいると疑う場面。カメラは主人公の視線となって、客の表情や目線、茶色のウエスタンブーツを追う。疑心暗鬼ってこういうことだよなー、とつまらないことを考えながらクッションを抱きしめる私💧

親父殿が見ていたドラマ「警部マクロード」で活躍する姿を知っているデニス・ウィーバー。テレビのヒーローが、恐怖で歪む表情を見せ、絶叫し逃げ惑う姿は、子供心に強烈に焼きついた。怖いのに面白い。クッション抱きしめながら観るくせに、何度も観たくなる。テレビで放送された翌日は、同級生たちと「激突ってすげえな」と興奮気味に話したっけ。




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カンゾー先生

2023-03-10 | 映画(か行)

◼️「カンゾー先生」(1998年・日本)

監督=今村昌平
主演=柄本明 麻生久美子 ジャック・ガンブラン 世良公則 松坂慶子 

敗戦色が濃厚になってきた時代に、岡山の町医者として日々奔走していた赤城医師を主人公にした人間ドラマ。診てもらった患者がほぼ肝臓炎と言われるから、カンゾー先生と呼ばれている。現在のようにウィルス性肝炎が知られていない時代だけに、誰にでも肝炎と言うヤブ医者と誤解されていたのだ。日々駆け回るカンゾー先生は、親を亡くしたソノ子を看護婦として雇うことになった。生活のために淫売を繰り返していた彼女は、肝炎撲滅の為に情熱を傾ける先生を知り、その助けになりたいと思うようになる。

先生をとり巻く個性的な面々が楽しい。女好きな和尚、オンナの武器をチラつかせる遊廓の女将、女将に言い寄る軍医、モルヒネ中毒の外科医。厳しい時代に庶民が懸命に生きている姿も描かれている。今村昌平監督作は70年代以降の有名作4、5本しか観ていないけれど、こうした描写は共通しているように思える。

脱走してきたオランダ兵捕虜を交えて、男たちとソノ子が肝炎を引き起こす正体を解き明かす為に顕微鏡を囲む。その後に続く理不尽な出来事。戦争が人を狂わせる。身勝手にさせる。カンゾー先生はわかってくれる人がいない日常から、学会で仲間に認められて喜びを味わう。しかしそれがさらに研究に没頭させ失敗につながってしまう。

キャスティングがいい。クセのある脇役が多い柄本明が、信念ある赤城医師を力強く演じている。若々しい麻生久美子がまぶしくて仕方ない。世良公則演ずる外科医、フランスの俳優ジャック・ガンブランもいい仕事。ラストには、ユーモラスな味を持たせながらも、反戦のメッセージを強く印象づける。

今まで敬遠してたけど観てよかった。





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心の旅

2023-02-26 | 映画(か行)

◼️「心の旅/Regarding Henly」(1991年・アメリカ)

監督=マイク・ニコルズ
主演=ハリソン・フォード アネット・ベニング ビル・ナン ミッキー・アレン

仕事に没頭する敏腕弁護士ヘンリー。勝訴に導く雄弁な語り口を映画はまず冒頭で見せつける。医療過誤訴訟と思われる法廷で、被告席のいかにもか弱そうな老夫婦をカメラは見せた後、ヘンリーは「彼らが招いたことです」と冷たく言い放ち病院側を勝訴に導く。家庭では家族を顧みず、妻が買ったテーブルに文句を言い、娘にも威圧的な態度をとる。短い時間で主人公の性格と立場を明確に示してくれる。悪役イメージがあまりないハリソン・フォードが嫌なヤツとして現れるのだ。マイク・ニコルズ監督、さすがに最初の掴みは見事。

ある晩、煙草を買いに外出した先で強盗に遭遇し、銃弾に倒れるヘンリー。一命はとりとめたものの、記憶を失ってしまい、彼にとって家族は知らない人でしかない。リハビリを助けてくれる明るい理学療法士ブラッドレー(「天使にラブソングを…」の刑事役ビル・ナン)が、唯一心を許せる存在だ。しかし娘との触れ合いから記憶が戻り始めたヘンリーは、自宅に戻ることを決心する。今までとは全く違う優しい人柄のヘンリーは、過去と向き合い始める。

主人公が記憶を失う話は、いかに記憶を取り戻して元の生活に戻るのかに主眼が置かれるのが典型。周囲が思い出させようと必死になるのは、テレビドラマでもよく見かけるシーンだ。だけど、世間で評判のよい記憶喪失ものってそんな簡単な話ではないはずだ。ハリウッドクラシックの「心の旅路」は、本来の記憶を取り戻してからがドラマティック。アキ・カウリスマキの「過去のない男」は、記憶喪失後の日常がとってもユーモラス。記憶は失っても生きていく日々は毎日やってくる。

この「心の旅」もただの記憶喪失ものじゃない。J・J・エイブラムスが脚本を手がけた本作は、記憶を失う前の自分に戻るのではなく人間性を取り戻す物語だ。そこには世間で成功者として称えられているハイソな人々や社会に対する皮肉や批判が込められている。過去の自分を知れば知るほど嫌いになるヘンリーに、ブラッドリーが「そのうち本当の自分が見つかるさ」と言う。事故後のヘンリーが"なりたい自分"となる物語。ファンタジーと言われればそれまで。だけど、日々いろんなことに追われてる身には、幸せって何だろ?と振り返るにはいい機会をくれる映画だと思うのだ。

音楽担当はハンス・ジマーだが、デイブ・グルーシンぽいしゃれた劇伴。






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