Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ヒーローインタビュー

2024-10-02 | 映画(は行)


◼️「ヒーローインタビュー」(1995年・日本)

監督=光野道夫
主演=鈴木保奈美 真田広之 安達祐実 いしだ壱成 武田鉄矢

エミー賞受賞で真田広之が評価されているのって嬉しい。「翔んだカップル」のチョイ役とか「戦国自衛隊」のチョイ役アクションとか「魔界転生」の初々しさを観てきた僕ら世代に感慨深いものがある。真田広之の過去の出演作のレビューを挙げてお祝いしてる方も多いので便乗しようと思いまする。若い頃観たのは「麻雀放浪記」「里見八犬伝」「彩り河」とかあれこれあるけれど、それはみなさまにお任せして、多分みんな触れないと思うので僕は「ヒーローインタビュー」を。

フジテレビ資本のお気楽恋愛映画じゃねーか、とのご意見はごもっとも。野島伸司脚本によるテレビドラマ出演者が多数出演するテレビっ子に媚びた仕掛け満載。オープニングから"DIAMOND LOVE"とかサブタイトルつけるし、鈴木保奈美と真田広之が屋台で食事する場面の背景は街の灯りがハート型になっているし、映像を見るだけで妙に気恥ずかしくなる。

ヒロイン鈴木保奈美が次第に野球(というか真田広之選手の持論)に惹かれていくのはわかるのだけど、わが身に起きていることになんの抵抗も示さないのが納得いかず。フィアンセの策略によるキャリア丸潰れの人事異動、「結婚して妻としての仕事を」とか言われて嫌なんだろうけど反論もしないし、野球選手を見下す彼氏の言葉を制止することもない。

クライマックスで翻意するまで、男社会に飲まれてるばかりのヒロイン像は、雇用や労働における男女差別をなくそうとしていた90年代の世間の空気を考えるとちと残念な気もする。製作されたのはバブル景気崩壊直後。にもかかわらずこの映画はバブル景気の空気を引きずっている。札ビラ切って取材したり、ヘリコプターをチャーターしたりするヒロインに、自分を重ねて観た人なんてもういないよね。

そんな数々の不満があるのに、僕はこの映画が憎めない。それは真田広之の力演があるからだ。もともとダメ男が頑張る成長物語が好きなのが大きな理由。前半のチャラくて無責任な様子にはイライラするが、かつての栄光から転落した理由、そこから立ち直ろうとする後半の涙ぐましさ。まぁそれもテレビ資本映画のあざとさと言われそう。子役の安達祐実が「私のため?カスミお姉ちゃんのため?」と尋ねて、壁にかけたユニフォームに向かって「あいつのプライドのためだ」と答える場面がたまらない🥹。そこにCHAGE & ASKAの PRIDEが高らかに流れるんだもの(カラオケで会社の同僚とハモってました♪)。デッドボール恐怖症を克服しようとする姿、クライマックスで打席に向かう彼に鈴木保奈美がかける台詞がベッタベタなんだけど泣けてしまう🥹。

真田広之は手品でペンを出したり、卵を隠したりとおチャラけてみせる。(※エンドクレジットに「マジック指導トランプマン」と記載あり。クイズ番組「なるほど!ザ・ワールド」放送されてた時期の映画だよね)東京タワーの展望台でバッタリ会う場面が好き。ここで真田広之はコインを指の上で渡らせるのだが、これは「暗黒街の顔役」でジョージ・ラフトがやってたやつ👍。こういう小ネタ嬉しい。

アクション以外の真田広之出演作で好きなのは「快盗ルビィ」と「つぐみ」、ドラマ「高校教師」。だけどこのベタベタな「ヒーローインタビュー」の轟選手役は大好きだ。ダサいけどカッコいい憎めない男。ヒットドラマの延長線みたいな映画と叩くべからず。照れくさいビジュアルを抜きにすれば、けっこう素敵な映画なんだから。




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はなればなれに

2024-09-17 | 映画(は行)


◼️「はなればなれに/Bande à part」(1962年・フランス)

監督=ジャン・リュック・ゴダール
主演=サミー・フレイ アンナ・カリーナ クロード・ブラッスール

以前から観たかった「はなればなれに」。ゴダール監督作としての興味、アンナ・カリーナ目当てはもちろん。さらにクェンティン・タランティーノのお気に入り映画で自分の会社名を本作のタイトルにしたこと、ベルトリッチが引用したことなど、この映画が影響を及ぼしたという周辺知識が、さらに興味をそそったのだ。配信が始まったので、優先順位に割り込みっ。

ちょっと期待が高すぎたのかもしれない。エンドマークの「FIN」を眺めながら思った。そもそもゴダールなんだから、そう簡単に受け入れられる映画のはずがないじゃない。冷静になればそうだよな。好きな場面とそうでないことが心の中でとっ散らかっている。

オープニング好き。タイトルやクレジットの表示も変なこだわり。ミシェル・ルグランに"最後の映画音楽"みたいな表記。実際ゴダールと組むのはこれが最後になったと聞く。「勝手にしやがれ」みたいに音楽をズタズタにするんじゃないよな?💢といきなり不安になる。

ガールフレンドであるオディールの家に隠されている大金を盗み出そうという計画を、セーヌ川河畔で車を走らせながら話し合うフランツとアルチュール。「無理だよぉ」と言うオディールだが、ちょっとワイルドなアルチュールに惹かれたのか、無謀な計画を受け入れてしまう。3人がプランを話し合う場面、席を取っ替え引っ替えして落ち着かない。役者の顔をちゃんと撮るため?さらに「1分間の沈黙は長い。やってみるか」と言い出して、実際に映画も無音になる。奔放なゴダールのお遊びなんだろうけど、無駄にしか思えない。

されどここで登場するのが、噂に聞いたマジソンダンスの場面。フランツの帽子を被ったオディールを真ん中に3人が並んで踊る。なんだこの楽しさ、一緒に踊り出したくなる。ナレーションが途中で何度も挟まり、その度にルグランの華麗なジャズが切り取られる。ゴダールまたやりやがったな💢。しかし、映画全体では劇伴が綺麗に使われていて好印象。

ルーヴル美術館を疾走する場面。ゲリラ撮影だったらしい。申し訳ないがちっともいいと思えなかった。これが自由?いやいや迷惑千万だろ。そこから先の犯罪シーンも無鉄砲な行動に結局イライラしてしまった。いい歳こいた自分は、危うい若者の行動を映画で楽しめなくなってるのかも。それでも割と映画の印象がいいのは、セーヌ川周辺の風景が楽しかったから。パリ五輪開会式でじっくり見たばかりだったし。それでも幕切れの先を匂わすエンディングは嫌いではないかな。



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劇場総集編 ぼっち・ざ・ろっく!Re:Re:

2024-08-24 | 映画(は行)


◼️「劇場総集編 ぼっち・ざ・ろっく!Re:Re:」(2024年・日本)

監督=斎藤圭一郎
声の出演=青山吉能 鈴代紗弓 水野朔 長谷川育美

バンドをやる理由にたどり着く前編「Re:」は、一本筋の通った映画に仕上がっていた。テレビアニメの総集編だとナメたらあかん。後半も見届けないと!と、いう訳で。またお仕事半休にして初日初回!、いい歳こいて行って参りました!映画館に着いたら、グッズ売り場既に行列できてる😳。スーツケース引いてるおばさんもいたぞ。前に並んでた男性、いっぱいグッズ買ってたから、確認のために商品名読み上げられ、それにうなづいていた。
👤「山田リョウ、クリアファイル。山田リョウ、アクリルキーホルダー。山田リョウ…」
周囲に推しがバレバレです。おにいさんw。

後編「Re:Re:」は、バンドメンバーで江ノ島に遊びに行くエピソードと、学園祭のエピソード中心に編集されている。テレビと違って、この構成でつなぐことで、バンドの面々がまさに"結束"に向かっていく姿が見えてくる。このパートは、ぼっちちゃんの陰キャネタが笑わせ要素にたくさん登場する部分。だけど陰キャを嘲笑するのではなく、何故そうなってしまうのか、本人側の理屈でちゃんと述べているのがいい。

また廣井きくりさん率いるSICKHACKのライブシーンも素晴らしい。きくりさんの言葉に勇気をもらう場面に、いい歳こいたおっさん、また涙がにじむ(恥)。

学園祭ライブで演奏する「忘れてやらない」「星座になれたら」。何度も見てる場面だけど、危機を乗り切るぼっちちゃんと、それをカバーする喜多ちゃんに改めて感激する。演奏中のアイコンタクト。バンド経験者はわかると思うけど、あれって日常とは違った通じ合える瞬間。そこで喜多ちゃんの成長も見せつける名場面。そして圧巻のギターソロ🎸⚡️。これを劇場で観られるって最高よ🤣

ラストの楽器店のエピソードが好きだったから、端折られたのは残念だった。保健室で目覚めると喜多ちゃんがいるって場面が、この編集だと反復になっているのも効果的。学園祭出場ときっかけと演奏後。そこにはきちんとぼっちちゃんのとても小さな成長物語がある。

そしてエンドクレジットで、アジカンのカバー再び🥲。そうくるとは思ってたけど、いざ聴くとグッときてしまった。入場者特典のミニ色紙、虹夏&リョウでした。よっしゃー!(😆虹夏推しです)





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ボルサリーノ

2024-08-20 | 映画(は行)


◼️「ボルサリーノ/Borsalino」(1970年・フランス=イタリア)

監督=ジャック・ドレー
主演=アラン・ドロン ジャン・ポール・ベンモンド ミシェル・ブーケ

2024年8月18日の午後。アラン・ドロンの訃報が届いた。ドロン全盛期の頃、僕はまだお子ちゃまだが、美男の代名詞として多くの場面で名前が挙がるのを聞いて育っただけに特別な存在だった。ドロンがナレーションで参加したダリダの「甘い囁き」(ぱろーれぱろれぱろーれ♪って歌ね)を聴いたのも、ドロン映画を初めて観た頃だと記憶している。初めて主演作をちゃんと観たのは「ブーメランのように」だと鑑賞ノートに書いていたが、実は「ショック療法」が初ドロン映画(恥)。「太陽がいっぱい」は数えきれないくらい繰り返し観てる大好きな映画。親父に何度もビデオで観させられたのは「シシリアン」と「スコルピオ」。

訃報を聞いて「ボルサリーノ」を改めて観た。子供の頃に断片的に観てると思うのだけど、実はちゃんと観てなかったようだ。出所間もないロックは元カノが今付き合っているフランソワと出会う。派手に殴り合った後、お互いを認め合い相棒となった2人が、機転と度胸で裏仕事からマルセイユの大物に成り上がっていく物語。

この頃のドロンは、アメリカ進出したがうまくいかずにフランスに戻り、自身のプロダクションを設立している。そして製作されたのが「ボルサリーノ」。プロデューサー業に乗り出すと自分をうまく魅せることが思い通りにできるようになる。今のトム・クルーズがええカッコしいしてるのと同じ(一緒にするなw)。

改めて観て男として惚れ惚れしてしまったのが衣装🤩。各場面で着るスーツがカッコいいのはもちろんだけど、帽子のヴァリエーションがすごい。タイトルのボルサリーノはイタリアの帽子ブランドの名前。2人が被ってる中折れ帽がそれ。麻生太郎が被ってる中折れ帽もボルサリーノ製。お値段気になる。仲間を連れてドライブに行く場面のハンチング姿もカッコいい。個人的にハンチング大好きなので、真似してみよっかな。

ジャック・ドレー監督とドロンというと犯罪映画のイメージだけど、改めて「ボルサリーノ」を観ると他のギャング映画とはどこか違う。あれこれ観た今の目線だからかもしれないけど、この前年に製作された「明日に向かって撃て!」と重なって見える。三角関係とも違う男女の構図といい、女子そっちのけな男の友情といい、同年代スタア共演と共通点多数。そうした点がいわゆるフレンチノワールとは違う雰囲気になっている。ジャズピアニスト、クロード・ボリングによるホンキートンクピアノがいい。そのどこかコミカルな響きがこの映画の印象を明るくしてくれる。これ弾けたらカッコいいだろな、と元鍵盤弾きの僕は妄想してしまう。

ベルモンドがコイントスで方針を決める場面、ローラが食事で2人をつなぐ場面、素敵な場面がたくさん。アラン・ドロン、ベルモンドの陰と陽の魅力を再認識。そんな僕は帽子を被りたがる男子になりそうw。そうやってドロンの残したイメージはみんなに受け継がれていくんだから。小遊三師匠かww

ご冥福をお祈りします。




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北京原人の逆襲

2024-07-24 | 映画(は行)

◾️「北京原人の逆襲/猩猩王」(1977年・香港)

監督=ホー・メンホア
主演=ダニー・リー イブリン・クラフト クー・フェン

ジョン・ギラーミン監督の「キングコング」が大ヒットした1976年。その人気にあやかって翌年に製作された香港映画が本作「北京原人の逆襲」である。巨大な類人猿が暴れるだけでなく、半裸の金髪美女、探検隊を襲う猛獣、象の大群、そして描かれる人間のエゴ。刺激に満ちたまさに商魂の塊のような映画。初めて観たのはフジテレビ系の映画番組だった。

当時の僕は中学生。破壊される村のチープなセット、襲うどころかジャれてるとしか見えない猛獣たちに唖然としながらも、亜流の大猿映画に見入ってしまった。だって、ヒロインを演じたイブリン・クラフトのお姿がとにかくお子ちゃまには刺激的でw。わずかな布面積にドキドキ。

2024年7月にDVDで再鑑賞したのだが、特撮スタッフには「ウルトラマンエース」の関係者が参加していると知る。改めて観ると北京原人の操演はなかなか。また、主役の冒険家は「狼/男たちの挽歌 最終章」の刑事さん。あの葛藤の演技はよかったよなぁ…と周辺情報を得て、あんまりこの映画をバカにしちゃいけないのでは?と思った。だが、いかんせん本筋のストーリーは、本家の良いところにギラギラした大人の汚さが加わって、大人になった今の寛大な視線でも、キツいなぁと感じる。まぁそれも楽しめばよし。

(以下、蛇足)
ヒロインの露出が気になって仕方なかった方へ。DVDの特典映像にある予告編は、本編よりも露出過多ですよっ♡






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破局

2024-07-18 | 映画(は行)


◾️「破局/Rupture」(1961年・フランス)

監督=ジャン・ピエール・カリエール ピエール・エテックス
主演=ピエール・エテックス

フランスのマルチアーティスト、ピエール・エテックス。僕はよく知らなかったが、コメディアンとしてだけでなく、グラフィックデザイナーなど様々な才能を発揮した人物。近頃、往年のフィルムが修復されて、日本でもレトロスペクティヴが催され、本邦初公開作品もあったとか。ジャック・タチともつながりがあると聞き、興味があった。「ル・アーブルの靴みがき」でお医者さん演じてた方なのか。

本作は12分の短編で一切台詞はない。別れの手紙を書くために悪戦苦闘する男の姿を追うだけの映画だ。ペン先、インク壺など文具に弄ばれているようなギャグの応酬はクスクス笑えるのだが、これが次々に繰り出されるから、ずーっと面白い。

物事がうまくいかない時って、次々に失敗をやらかす。切手のギャグなんて、実際やらかしても不思議じゃない。手紙一枚のために部屋が散らかっていく様子が面白い。「ミラクルワールド/ブッシュマン」のクライマックスで、ド緊張した動物学者の男性が告白する場面を思い出した。彼女から送られてきた、破った写真を送りつける別れの手紙。これに復讐してやろうとする動機から、女性の目線に気づかない鈍感さまで、多くの方が共感できる小市民の笑い。

車の間を縫うように歩き回るオープニングから、なんかワクワクさせられた。そしてこっちまで声をあげてしまいそうなラストシーン!🤣



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暴力教室

2024-07-14 | 映画(は行)


◾️「暴力教室/Blackboard Jungle」(1955年・アメリカ)

監督=リチャード・ブルックス
主演=グレン・フォード アン・フランシス シドニー・ポワチエ ビック・モロー

両親の影響でいわゆるオールディーズをあれこれ聴いていたもので、Rock Around The Clockが使われた映画として本作の存在は知っていた。


One Two Three O'clock
Four O'clock Rock♪

実際に観るのは今回が初めて。不良の巣窟のような高校で働くことになった新任教師が、学ぶ姿勢のない生徒たちにいかに接するかを悩みながらも、次第に信頼を勝ち取っていく姿を描いた作品。

音楽から知ったせいで、不良少年のロケンロール映画だと勝手な先入観を持っていた。とんでもない。扱うテーマは実に重い。映画冒頭には、現場の問題を世間に知って欲しい…めいた内容のテロップが流れる。50年代のアメリカでは社会問題となっていたことがうかがえる。

「暴力教室」とのセンセーショナルな邦題がつけられたのも理解できる。女性教師への強姦未遂から始まって、路地裏で主人公がストリートギャングに囲まれ、彼の家庭への嫌がらせ。公開当時の日本でも国会議員が内容を問題視して、上映制限や禁止を働きかける事態が起こったと聞く。当時としては衝撃的な映画だったのだろう。僕は「3年B組金八先生」第2期の"腐ったミカンの方程式"をリアルタイムで見ている80年代青春組。大人たちが騒いでたのをよーく覚えている。似たような騒ぎだったんだろう。90-00年代なら「バトル・ロワイヤル」で大人たちが騒いでた様子を思い浮かべたらいいかも。

グレン・フォード演ずる新任教師が、黙って睨みつける生徒たちの間を通って通勤する場面のうすら寒い怖さ。数学教師が嫌がらせを受ける絶望感や、夫の浮気との嘘を信じて精神を弱らせていく妻の姿は、痛々しくて辛い場面ではある。

そうした重苦しい流れを変えてくれるのは、逃げない主人公の姿。ジャックと豆の木のアニメーションを見せて、それをテーマに授業をする場面では、ジャックの貧困、大男とジャックの立場の違い、大男を殺して幸せを掴むことの賛否、と様々な意見を引き出す。ものの見方、立場や人種の違いを考えさせるきっかけにする試みだ。僕も映画をネタに世間を考える授業をやったことあるもので、この場面はグッときた。そしてそんな主人公の行動が少しずつ周囲の先生方も変えていく。

教室でナイフを抜いて暴れる生徒と向き合うクライマックス。ついに主人公はこれまでの怒りを口にする。他の生徒たちとの間に芽生えていた信頼が感じられるこの場面、なかなか感動的だ。しかしながら、この映画は生徒たちの身の上、彼らが非行に走る原因に深く立ち入らない。第二次大戦の影をチラつかせる程度だ。学校で起きている社会問題を世に示す映画ではあったが、そこはちょっと保守的な映画と受け取れなくもない。教室で暴れる生徒を抑え込んだのは星条旗だったし。それでも、黒人生徒(シドニー・ポワチエ)との交流がしんみりとした感動をくれる。

妻役のアン・フランシス。見たことあるよなー、と思ったら「禁断の惑星」のヒロインなのか。








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フェリックスとローラ

2024-07-05 | 映画(は行)


◾️「フェリックスとローラ/Felix Et Lola」(2000年・フランス)

監督=パトリス・ルコント
主演=シャルロット・ゲンスブール フィリップ・トレトン アラン・バシュング

移動遊園地で働くフェリックス。ある日、悲しげな表情をした女性ローラがやって来る。気になった彼は彼女に声をかけ、ここで働かないかと持ちかける。意外にも彼女はその申し出を受け入れてくれ、少しずつ二人の距離は近づいていく。ローラは突然いなくなったり、戻ってきたと思ったら遊園地を訪れる中年男性を嫌がって泣いていたり。素性がわからないローラをひたすら信じるフェリックス。そんなフェリックスにローラは尋ねた。
「愛のためなら死ねる?」

男から女への一方的な思いが描かれることは、他のパトリス・ルコント作品にも通ずる一面。本作が特殊なのは、女の素性がほぼわからないことだ。悲しげな顔をする彼女に尋ねられなかったのか、単にお人好しなのか、訳ありな人間と接してきたからなのか。シャルロット・ゲンスブール演ずるローラは、映画前半はとてもミステリアスな女性に映る。こんな濃いアイメイクのシャルロットは他の映画では見たことない。

夜の遊園地に再び現れて、バンパーカーに座って煙草を吸う場面は、逆光の月明かりに煙が揺れていて美しい絵になっている。
「もう閉まっちゃったの?乗りたいのに。」
とか心配かけといてふざけたことを言うローラ、応じるフェリックス。
オーティス・レディングのI've Been Lovin' You(愛しすぎて)を流しながら踊る二人。それを見守る仲間たち。うわっ、この場面好き♡

ローラの表情から気持ちが読み取れないもどかしさが、映画を通じたポイントになっている。ルコント先生が上手いのはシャルロットの横顔を狙ったショットを多用していることだ。表情真っ正面から映さない。だからフェリックスだけでなく、観ている僕らも彼女が何を考えてるのか惑わされてしまう。

そもそもシャルロットって、独特な横顔のラインが魅力的。「なまいきシャルロット」の頃に発売された写真集を持っているのだが(フレンチロリータに弱くてすみません💦)、その中でも目立つのはやっぱり横顔の写真。ルコント監督もその横顔の魅力を、うまく引き出している。さすがだ。

証明写真のボックスに入るローラに、フェリックスが表情で気持ちを教えて、と頼む印象的な場面がある。機械から出てきた写真は後ろ向き。ローラの何かを隠したい気持ち、決めきれない気持ちを表すと同時に、それを見て揺れ動くフェリックスの気持ちまで無言で示す。



(以下、結末に触れています)


そして映画の最後、ローラは虚言症であることをフェリックスに告げる。そのために振り回されて、殺人まで考えたフェリックス。結果はさておき、彼はローラの弱さと寂しさを受け止める。

前半のミステリアスな描写から一転。なーんだ、普通の女の子だったんじゃねーか。ちょっと肩透かしを喰らったような、予想と違う映画の結末かもしれない。でも、悲しそうにしていたら優しくしてもらえるかもしれない、嘘を並べることで誰かが構ってくれるかもしれない、という気持ちは誰もが思う弱さでもある。同情を買いたいわけじゃないけど、誰かに振り向いて欲しい。ラストに本当の自分について語り始めたローラと、それをうなづいて聞くフェリックスに、不思議な安堵感を感じた。




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劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:

2024-06-11 | 映画(は行)


◾️「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:」(2024年・日本)

監督=斎藤圭一郎
声の出演=青山吉能 鈴代紗弓 水野朔 長谷川育美

10年前。当時の上司がアニメ「けいおん!」大好き(ムギちゃん推し)で、グッズ発売日に休暇をとって買い漁っていた。その様子を微笑ましく見ていた当時の僕(唯ちゃん推し)であった。それから10年経った本日。故あって入れたはずの午後休み使って「ぼっち・ざ・ろっく!Re:」🎸✨初日に参戦。
きゃほー😆
あの時の上司と同じカテゴリの人間になった自分を自覚した💧

「ぼっち・ざ・ろっく」は、ここ数年でどハマりしたアニメの一つ。その理由はアニメのレビュー(こちら)をご覧いただくとして、本作はその総集編前編。「どうしてバンドをやるのか」に対するメンバーそれぞれの思いを主軸に置いた編集になっている。シリーズ中盤に登場する名エピソードの、虹夏がひとりに問いかける場面からこの劇場版は始まる。

放送順にダイジェストにするのかと思っていたら大間違い。この総集編の編集では「なぜ」が貫かれているから、ひとりの"ちやほやされたい"も、リョウ先輩の"嘘くさい歌詞の曲やりたくない"も際立ってくる。バンドの運営方針やらグッズ決めるエピソードも楽しかったけれど、楽曲のバックでサラッと日常風景にしたところもナイス。そこが許せないと言う人は、「あなたが私のマスターか」をバッサリ切り落とすFateの劇場版に怒りを向けてくださいww

本作は物語の振り返りも大事だけど、なんてったって音楽に没頭できる時間であることが素敵。映画館の大音響で聴く「ギターと孤独と青い星」に身体がじっとしてられない。テレビでは流れなかった楽曲も登場するし、新曲によるオープニングには新規カット!?が見え隠れ。

僕は廣井きくりさんが好きで、かっちょいい路上ライブ場面がお気に入り。「目の前にいるのは敵じゃないよ」のひと言に、テレビの前で泣いてしまった。今回もわかっちゃいるのにまた同じ場面で泣きそうになる。あの言葉響くのよ。バンドやってた頃の自分にも、今の自分にも🥹。そして、虹夏のタイトル回収の名台詞。あーそうだ。君のロックをやればいい。その言葉は、スクリーンのこっち側の僕らにも向けられているんだよ。またウルウルきてるよ、いい歳こいたおっさんがさ(恥)🥲

脚本の吉田恵里香さんは、朝ドラ「虎と翼」も手がけている。ヒロインを取り巻く人々が、彼女を才能開花に向かわせる素敵な存在で、脇のキャラクターまでとても大事にしてると見る度に思う。本作も然り。

入場者特典のミニ色紙は虹夏でした。えーと、わたくし虹夏推しです(嬉)。やっぱり10年前の上司と同じカテゴリに属してるな、オレ🤭

後編も楽しみだっ!♪🎸⚡️アジカン楽曲「Re:Re:」をタイトルに持ってくるセンスも好き。




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ハート・オブ・ジャスティス

2024-05-29 | 映画(は行)


◾️「ハート・オブ・ジャスティス/The Heart Of Justice」(1992年・アメリカ)

監督=ブルーノ・バレット
主演=エリック・ストルツ ジェニファー・コネリー デニス・ホッパー

人気作家が銃撃される事件が起こり、撃った犯人エリオットはその場で自殺。彼が地元名士の息子であることから、世間やマスコミの注目を浴びることになる。報道記事で受賞して自信満々の若手記者デビッドは、死んだ作家の作品がその一家の隠されたスキャンダルを描いた作品だったとの疑念を抱く。デビッドは、エリオットの美しい姉エマに接近を試みる。

多くの感想にあるように、大人の美貌を発揮し始めたジェニファー・コネリーを愛でるための作品。黒い下着姿でデビッドに迫る場面(のみ)が最大の見どころ。90年代のジェニファーは、お色気路線まっしぐらだった時代。セクシーな役が続くのを見ながら、彼女はハリウッドに搾取されてる!とファンとしてはヤキモキしたものでございます😣

記者を演じるエリック・ストルツは、80年代育ちには「恋しくて」で好感度高い俳優だが、本作の彼はとにかく不快。調子に乗ってて上司に強気に出るわ、彼女を見下して召使のように扱うわ、同僚にも常に高飛車な態度をとるわ。観ている僕らも、あいつ痛い目に遭えばいいのにと思ってしまう。ほーら、言わんこっちゃないと予想通りの結末を迎える。正直、彼をめぐる筋立ては大して面白くもない。

「ドン・ジョンソン気取りだ」って台詞に時代を感じる。80年代はテレビ「マイアミバイス」で大人気だったよな。

本作で殺される作家を演じたのはデニス・ホッパー。往年のホラー映画俳優ビンセント・プライスも出演。遺作とされる「シザーハンズ」の翌年だから、テレビムービーとして製作された本作が最後の出演作なんだろか。




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