Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ハート・オブ・ジャスティス

2024-05-29 | 映画(は行)


◾️「ハート・オブ・ジャスティス/The Heart Of Justice」(1992年・アメリカ)

監督=ブルーノ・バレット
主演=エリック・ストルツ ジェニファー・コネリー デニス・ホッパー

人気作家が銃撃される事件が起こり、撃った犯人エリオットはその場で自殺。彼が地元名士の息子であることから、世間やマスコミの注目を浴びることになる。報道記事で受賞して自信満々の若手記者デビッドは、死んだ作家の作品がその一家の隠されたスキャンダルを描いた作品だったとの疑念を抱く。デビッドは、エリオットの美しい姉エマに接近を試みる。

多くの感想にあるように、大人の美貌を発揮し始めたジェニファー・コネリーを愛でるための作品。黒い下着姿でデビッドに迫る場面(のみ)が最大の見どころ。90年代のジェニファーは、お色気路線まっしぐらだった時代。セクシーな役が続くのを見ながら、彼女はハリウッドに搾取されてる!とファンとしてはヤキモキしたものでございます😣

記者を演じるエリック・ストルツは、80年代育ちには「恋しくて」で好感度高い俳優だが、本作の彼はとにかく不快。調子に乗ってて上司に強気に出るわ、彼女を見下して召使のように扱うわ、同僚にも常に高飛車な態度をとるわ。観ている僕らも、あいつ痛い目に遭えばいいのにと思ってしまう。ほーら、言わんこっちゃないと予想通りの結末を迎える。正直、彼をめぐる筋立ては大して面白くもない。

「ドン・ジョンソン気取りだ」って台詞に時代を感じる。80年代はテレビ「マイアミバイス」で大人気だったよな。

本作で殺される作家を演じたのはデニス・ホッパー。往年のホラー映画俳優ビンセント・プライスも出演。遺作とされる「シザーハンズ」の翌年だから、テレビムービーとして製作された本作が最後の出演作なんだろか。




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ハンガー

2024-05-10 | 映画(は行)


◾️「ハンガー/The Hunger」(1983年・イギリス)

監督=トニー・スコット
主演=カトリーヌ・ドヌーブ デビッド・ボウイ スーザン・サランドン

ミリアムは不老不死の吸血鬼。それぞれの時代に気に入った相手を見つけては、長く続く命を授けて恋人にしていた。現在の相手はイギリス人の美男子ジョン。ミリアムから授けられた命が若い姿を維持できるものだと信じていたジョンは、老化を感じ始めていた。そこに美しい医師サラが現れる。彼女は老化現象を研究しており、世間でも注目され始めていた。サラに興味を示すミリアム、嫉妬と急速な老化で焦りを感じるジョンは、サラの病院を訪れる。

「トップガン」など数々の大ヒット作で知られるトニー・スコット監督のデビュー作である。派手な作品のイメージとは違う作風に驚く。淡々としているのに緊張感が途切れない独特のムード、暗い部屋に差し込む光。映像に映し出される陰影の印象は、兄リドリー・スコット監督作を思わせる。ヨーロッパ資本の映画だし、他の監督作の明るいイメージとは全く違う。トニー・スコット監督の原点、兄リドリーの影響を感じさせる作品として興味深い。

その一方でロックバンドのパフォーマンスや、吸血鬼に魅入られた者たちの末路を描く特撮には、後のトニー・スコットらしい80年代的な派手さも見える。オープニングで流れるのはBela Lugosi is Dead。ドラキュラ俳優で知られるベラ・ルゴシの死を歌う曲を選曲するなんて、ちょっと意味深ではないか。



カトリーヌ・ドヌーブ、デビッド・ボウイ、スーザン・サランドンという美男美女の三角関係は最大の見どころ。スーザン・サランドンとドヌーブのベッドシーンがとにかく美しい。老化現象を気にし始めたボウイは、家を訪れる女性に毎回ポラロイド写真を撮ってもらう。その老化進行の速さ。身体が朽ちても意識は死ねない苦しさが観ていて辛い。一室に並んだ棺にゾッとする。

不老不死であるミリアムの孤独がそれぞれの時代にパートナーを求めた。そんな愛の映画と言う一面もある。しかし、80年代らしい特殊メイクによるビジュアル重視のホラー演出が強く印象に残り、そんな味わいは後半吹っ飛んでしまうのはちと残念。 





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変な家

2024-05-06 | 映画(は行)


◾️「変な家」(2024年・日本)

監督=石川淳一
主演=間宮祥太朗 佐藤二朗 川栄李奈 瀧本美織

仕事がら、建物の平面図を眺めながらあーだこーだ言うことが多い。ミステリー小説読みながら、相関関係や部屋の位置関係をメモしてみたりもする。それだけにこの「変な家」が話題になった時にはちょっと気になって、長男が読んでいたコミカライズを借りて読んだ。カメラ片手にズカズカと入り込んでくる主人公の行動を快くは思わないけれど、だんだんと闇に近づくにつれて、先を知りたいと思わせてくるのは確かに面白い。

ツッコミどころは満載。簡単に人を信じ過ぎだろ、近所のおばちゃんがわざわざ写真撮らないでしょ、不動産屋の管理物件にどうやって入り込んだの。本家ってパワーワード出てきたから金田一耕助ものぽくなるぞ…と思ったら、おじいちゃん石坂浩二やん。仏壇からすきま風、隠し通路、あーあ、「八つ墓村」っぽくなって来たよ。お母ちゃん、隠してるもの簡単に見つかりすぎ。妾にひどい仕打ち…って「犬神家の一族」やん。片渕家の問題なのに村中巻き込む怨念ってどうなんよ。佐藤二朗、どうして本家に上がり込んでるの。そこを離れてから語ろうよ。

だんだんと間取りのミステリーから離れて、本家のパートでは平面図の外側に線を引いて何かあると思うんですよって、話が飛躍。平面図見ながら、何のための空間なのかを読み取るミス・マープルものみたいな感じが好きだったのに、結局旧家の怨念めいた日本映画にありがちな落としどころに収まってしまったのはちと物足りない。本家の人々を駆り立てる呪縛の怖さも、説得力が欲しい。

もともとウケ狙いの動画制作から始まる話なんだから、のぞき見程度の興味だったはずの主人公の行動が、人助けにシフトする気持ちの動きが感じられないのがいちばんの難点かも。これからも僕が守りますって、川栄李奈ちゃんに言ってやれよ、と映画館の暗闇で焦ったく思うおいさんである。

…と不満ばかりを並べてしまった。だが秀逸なのはラストシーン。斉藤由貴のひと言とその視線の先にあるもの。これ、マジもんじゃねぇかよっ!😨




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パリで一緒に

2024-04-20 | 映画(は行)


◾️「パリで一緒に/Paris - When It Sizzles」(1963年・アメリカ)

監督=リチャード・クワイン
主演=オードリー・ヘプバーン ウィリアム・ホールデン トニー・カーティス

ローマの休日」以降のオードリー主演作で観たことがないのはあと数本。そのうちの一つが本作「パリで一緒に」だった。観るチャンスはなくもなかったけど、敬遠してたんだろうな。だって、ウィリアム・ホールデンが何故か苦手なんだもの。

いろんな名作にあれこれ出演してるし、カッコいい西部劇もあるし、名優だとは認めてるんだけど、昔から印象に残っている主演作は、とにかく体たらくか女たらし。コテコテのメロドラマのイメージ。僕がクラシックかぶれの若造だった頃から、その印象は変わらない。僕のホールデンのイメージは「戦場にかける橋」よりも「慕情」、「ワイルドバンチ」よりも「サンセット大通り」、「第十七捕虜収容所」よりも「ピクニック」。印象が悪い最大の原因は、「タワーリング・インフェルノ」の憎まれ役よりも「麗しのサブリナ」のプレイボーイの次男役。結構観てるなww

さて、本作「パリで一緒に」はどうかと言うと、僕が期待する(?)嫌いなウィリアム・ホールデンが堪能できる映画だった😩。新作映画のシナリオがいっこうに進まない脚本家。悩んでる訳ではなく、単に仕事そっちのけで遊んでいるだけ。タイピストを雇ってプロデューサーとのアポイントまでに書き上げようとする顛末を描いた作品だ。雇われたタイピストがオードリー・ヘプバーン。こちらは誰もが期待する笑顔もファッションも素敵な役柄で、ズケズケとものを言い、脚本にケチをつける。しかし彼女から聞いた話や、彼女自身のイメージから、発想は膨らんでいき、脚本は進み始める。その間にも脚本家氏はタイピストに不意打ちのキス、話のノリで抱きしめる。あー、やっぱり嫌いなホールデンだよ😠

二人が編み出したストーリーは、劇中劇として二人が演ずるロマンティックコメディとして進行する。せっかくパリが舞台なのに、いかにもセットに見える作り物感漂うカフェテリアの舞台が用意される。それは二人の空想。しかし、話が進んでいくに従って、その舞台はだんだん見応えのある風景に変わっていく。ほほー、ホテルの一室からカメラが出ないと思ってたら、なかなかゴージャスな映像になっていく。結末はまぁお約束のラブ展開なのだが、どうも納得いかず。オードリーは期待通りに素敵なんだけど、最後まで嫌いなホールデンだった。

原語をきちんと聴きながら丁寧に鑑賞したら言葉選びがきっと面白いんだろうと思った。英語がもっと得意だったらなぁー😣。音楽も衣装もゴージャスな映画なのに、今ひとつ気持ちがあがらない作品でした。

 ◇

あれ?こんな二人が出てくる映画、他にあったよな。何だっけ…と考えて思い出した。

借金に追われる小説家が、期限までに新作を仕上げるために速記者を雇うラブコメ。ロブ・ライナー監督の「あなたにも書ける恋愛小説」だ!。あれも二人が書く小説の内容を二人が演じる劇中劇が登場する。そっかー、あれは「パリで一緒に」へのオマージュだったのかもな。そう思ったら、「パリで一緒に」がちょっとだけ素敵な映画に見えてきたw






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BMXアドベンチャー

2024-03-27 | 映画(は行)


◾️「BMXアドベンチャー/BMX Bandits」(1983年・オーストラリア)

監督=ブライアン・トレンチャード・スミス
主演=ニコール・キッドマン ジェームズ・ラグトン アンジェロ・タンジェロ

16歳のニコール・キッドマンが見たかったのもあるけれど、この映画をセレクトした理由はもう一つある。80年代洋楽好きの友達と呑んでいて、この映画の話になり、こんなことを言っていたからだ。
👩🏻「「トップガン」のMighty Wingsに似た曲がずーっと流れるのよ。盗作じゃないのかしら(笑)」
Mighty Wingsはチープトリックが演奏した楽曲。「トップガン」はこの3年後なので、ジョルジオ・モロダーに盗作疑惑!?かつての香港映画にありがちだった無断使用!?ともかく気になって、「BMXアドベンチャー」に挑んでみた。ティーンエイジャーのニコール見たかったし(結局そこかい)♡

あー、なるほど。Mighty Wingsのイントロに出てくる🎸Fm→E♭→D♭→E♭→Fm ってコード進行と確かに似てる。結論、まあよくあるコード進行でもあるってことだろう。そこでふと思った。自分が高校時代に書いたオリジナルに全く同じ進行が出てくる…💧

当時人気が高まっていたBMX。主人公の二人P.J.とグースは日々乗り回して楽しんでいたが、専用の競技場はなく、街中で走り回る彼らを迷惑に思う人々がいた。ニコールが演ずるのは、BMX用自転車を買うためにバイトしていたジュディ。3人は行動を共にするようになる。専用コースを作るために資金を集めようとしていた矢先、ギャングが隠していた大量のトランシーバーを見つけた。これを売りさばこうとしたことからギャング一味に追われることに。

3人が大人を出し抜く活躍と疾走するBMXが見どころ。見る人が見れば乗りこなす技術や迫力は伝わるのだろう。そこをボーっと見てしまうと、単なる追いかけっこになってしまう。冒頭で話題にした例の曲をバックに描かれるチェイスシーン。ジャンプするたびに、シンセの効果音が響くのはいかにも80年代。まだ携帯もない時代だから、でっかいトランシーバーは今の若い子にはどう映るのだろうw

われらがニコールが演ずるジュディは、凛として気の強い女の子。この頃からハッキリものを言う役柄だったのか、と大人になってからのイメージと重なる。「ネバーエンディング・ストーリー」と二本立てで上映された。大作の添え物感はあるものの、そのお年頃で観たならばきっと響くところはあるに違いない。





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パイレーツ・ムービー

2024-01-19 | 映画(は行)

◾️「パイレーツ・ムービー/The Pirate Movie」(1983年・オーストラリア)

監督=ケン・アナキン
主演=クリスティ・マクニコル クリストファー・アトキンズ テッド・ハミルトン

「リトル・ダーリング」(1980)でクリスティ・マクニコルのファンになった僕は、続く主演作「さよならジョージア」、「泣かないで」(隠れた名作)、「白いロマンス」と地元映画館で新作が上映されたら足を運んだ。「パイレーツ・ムービー」はその時期の主演作で、映画雑誌ではちょくちょく紹介されていたが、日本での公開は製作からしばらく経った時期だったし、地元映画館での上映もなかった。最近レンタルDVDで見つけたもので、今回が初鑑賞。

オープニングタイトルは古い映画を思わせる海賊船のバトルシーン。ヴィレッジピープルやジンギスカンを思わせる暑苦しい歌声(若い方はわからないですよね😅)で、いかにもディスコな楽曲が流れる。これだけでもう80年代初頭の空気が漂う。冴えないメガネっ子メーベルは、海賊ショーに出演しているイケメン男子フレデリックからセイリングに誘われる。しかし彼の取り巻き女子たちにのけ者にされてしまう。ボートで追いかけるが転覆。浜辺に打ち上げられた彼女は夢を見る…。それは、彼女は英国統治下の浜辺の町を舞台に、軍人の末娘メーベルが海賊に育てられたイケメン男子と恋をするお話。

…とまあ、最初から夢オチですと宣言する潔さ。そのせいか、少々無茶な展開も呆気にとられている間にどんどん進行していく。

海辺で二人は出会いました♡
好きよ!お父さんに会って!♡
僕は海賊船から来ました🏴‍☠️
海賊だと!?交際は認めないぞ!💢
大人たちの対立もあって二人は敵味方に🤺
それでも恋の炎は…🔥

あー、はいはい😓

ミュージカル仕立てだが、誰もがイメージするゴージャスなミュージカル音楽とは違う。流れる楽曲の中には、いかにも80年代AOR寄りなアレンジで二人の恋心を歌いあげるものもある。クリストファー・アトキンズ君がHow Can I Live Without Her ?と切なく歌うラブバラードは、エアサプライの「さよならロンリーラブ」の雰囲気(若い方はわからないですよね😅)。われらがクリスティはそもそも音楽活動もしてたし、「さよならジョージア」でも歌ってたから、ミュージカルはお手のもの。デュエットを含む3曲を披露。クライマックスはハッピーエンドを高らかに歌い上げ、キャストみんなでダンス。この曲もちょっとABBAっぽい雰囲気(若い方は…😅)。お気楽もいいとこの軽いミュージカル。

「鯨の骨で作ったコルセットに縛られる女の生き方は嫌よ!」と下着見せながら力説するクリスティ。こういう勝気な女の子が似合うんだよな。クリストファー・アトキンズ君はあの「青い珊瑚礁」の後だけに、ふんどし姿もよく似合うww。

んで最初に示した露骨な夢オチは、これ以上ない、お気楽なハッピーエンドになるのです。この映画の堅苦しくない空気、あの頃リアルタイムで観てたら、硬派な映画ファンを気取り始めてた当時の僕は毛嫌いしただろな。今観ると、これも時代だよなと微笑ましく思える。歳とると寛容になるのかも。何にしても、僕らのクリスティに再会できた100分でした😊。「レイダース」と「スターウォーズ」のパロディは余計だと思うが、これも時代かww。




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ブレスレス

2024-01-15 | 映画(は行)


◾️「ブレスレス/Breathless」(1983年・アメリカ)

監督=ジム・マクブライド
主演=リチャード・ギア ヴァレリー・カプリスキー アート・メトラーノ

ジャン・リュック・ゴダール「勝手にしやがれ」のハリウッドリメイク。舞台はアメリカ、リチャード・ギアが車泥棒の主人公、留学生のヒロインがフランス娘ヴァレリー・カプリスキー。

僕にとってリチャード・ギアは憧れの俳優だった。されど本作で演じる主人公は、他のカッコいい役柄とはまったく違うセコい車泥棒。ジェリー・リー・ルイスのロケンロールを歌いながら車をかっ飛ばし、まったくセンスを感じない派手なファッションに身を包んだチャラい男。はずみで警官を撃って逃亡、一度会って惚れたフランス娘を執拗に追い回して、彼女が通う大学で騒ぎを起こす。そして追っ手が迫ってくる。刹那的な生き方には共感も感じられない。

この役に関しては、そりゃオリジナルのベルモンドに敵うはずがない。あっちも行き当たりばったりの行動ではあるけれど、いちいち台詞はカッコいいし、ファッションも仕草まで絵になる。ギアはおもちゃのハート型ペンダントを彼女に贈るセンスのなさを持つ、おちんちん丸出しのチャラい男。

ハリウッド化するとこうも軽くなっちゃうのかなぁ…と残念に思っていると、少しずつ内面に映画は迫り始める。警察の捜査が迫る中で彼女にこだわって逃げ出そうとしない彼を、アメコミ「シルバー・サーファー」が地球を守る為に去らない姿に重ねていく。本屋で「あれはダサい。クソだ」と作品を罵られる場面もあり、なかなか街を出ない彼と重ねて見せる。

そして「明日に向かって撃て!」みたいに唐突に終わるラストシーン。オリジナルの「最低だ」って台詞を吐く代わりに、ギアは警官に囲まれる中。ジェリー・リー・ルイスのBreathlessを歌いながら路上で踊る。追いつめられた彼は最期をある程度覚悟していたのか。そしてその幕切れに「愛してる」が欲しかった。絶体絶命なのにはにかんだ笑顔を見せる主人公。微妙にカッコいい。最初はいけすかないヤツと思ってた彼が、気づくと"憎みきれないろくでなし"になっていた。"勝手にしやがれ"の後だけにw(沢田研二聴いてた世代にしか通じない表現ですみません😅)。

このジム・マクブライド監督は、数年後にジェリー・リー・ルイスを主人公にした「グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー」を撮ることになる。脱ぎっぷりのいいヒロイン、ヴァレリー・カプリスキーは、翌年アンジェイ・ズラウスキー監督の「私生活のない女」で堂々たる演技を見せる。



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PERFECT DAYS

2024-01-10 | 映画(は行)


◾️「PERFECT DAYS/Perfect Days」(2023年・日本)

監督=ヴィム・ヴェンダース
主演=役所広司 柄本時生 中野有紗 アオイヤマダ

2024年の映画館初詣。今年もいい映画に出会えますように…と思ったら、新年早々素敵なのに出会えた。

公衆トイレ清掃の仕事をしている主人公平山の日々を追った、ヴィム・ヴェンダース監督の日本映画。繰り返される日々のルーティンを追った映画。近所のおばさんのホウキの音で目覚め、ドアを開けて空を見上げ、缶コーヒーを飲む。一日の節目にはモノクロでイメージショットのような映像がインサートされる。

映画前半では、この淡々としたムードのまま続くのだろうかとやや不安になった。映画館だから集中できるけれど、配信で観たら気分次第じゃ途中で放棄していたかもしれない。でもその繰り返しは決して退屈な訳じゃない。むしろ心地よい。「おかえり」と迎えてくれる飲食店のおじさん。文庫本を買うと作家のうんちくを述べる古書店のおばさん。ところが映画後半は、突然家出した姪が現れたり、行きつけの小料理屋のママさん関係でちょっと心が揺らいだり。それでも日々は続いていく。変わらないけれど、決して同じではない。

これは映像で語る詩だ。同じ韻律が繰り返される中で、ちょっとしたバリエーションが織り込まれる。それは小さな出来事だったり、心を揺るがすような驚きだったり。

平山はカセットで音楽を聴き、セレクトも趣味がいい。Pale Blue Eyesを映画を通じて聴くなんて、韓国映画の「接続」以来だ。タイトルにも使われたLou ReedのPerfect day。Duran Duranのカバーも好きだったなぁ。ロック好きとしても知られるヴェンダースのセレクトなのだろうか。

エンドクレジットの前に流れた曲は、Nina SimoneのFeeling Good。それまで本編では60〜70年代のロック中心だったのに、ちょっとジャズボーカル寄り。



何故だか、今日は歌詞が自然と耳に入ってきた。

It's a new dawn. It's a new day.
It's a new life for me. I'm feelin' good.

毎日同じように過ぎるけれども一日として同じ日はない。そのことを観客に伝える為に、ヴィム・ヴェンダースはニーナの歌にそれを託した。

新しい夜明け。新しい日。
私にとっての新しい生活。最高の気分。

役所広司が一人で暮らす様子を見ると「すばらしき世界」の名演と重ねてしまうが、本作で演ずる平山は口数も少なく、感情を表に出さず、穏やかで「素晴らしき世界」とは正反対だ。淡々としている役柄なのに、どこかユーモラスで、優しくて。でも映画は、この主人公が今こんな暮らしをしている事情や背景を詳しくは語らない。おそらく長らく会っていなかった妹との再会。年老いた父親の話が出るが、それ以上二人の会話は続かない。涙を流す平山。その意味は決して示されない。

でもリアルって、説明くさいものじゃなくて、こういうものじゃないのか。行間でほんのりと感情を示すみたいに。三浦友和と会話する場面が好き。平山のちょっとしたセリフに、不器用な優しさがにじみ出る。やっぱりこの映画は詩なんだ。

姪から"友達の樹"と名付けられた神社の樹から差してくる木漏れ日を、フィルムカメラで撮り続ける。出来上がった写真からいいものを残してコレクション。その"木漏れ日"は一期一会の美しい風景だ、とヴェンダースはエンドクレジットの後で付け加えた。途中で席を立った人たちは、このヴェンダースの"あとがき"を見損ねている。味わい深いだけにもったいない。




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フルメタル・ジャケット

2023-11-29 | 映画(は行)


◼️「フルメタル・ジャケット/Full Metal Jacket」(1987年・アメリカ)

監督=スタンリー・キューブリック
主演=マシュー・モディーン アダム・ボールドゥィン ヴィンセント・ドノフリオ リー・アーメイ

80年代後半に外国映画観ていた世代は、ベトナム戦争が描かれた映画をかなりの数観ているに違いない。アメリカンニューシネマと呼ばれた70年代の作品群にもベトナム戦争を背景にしたものはあったが、それらは作家性が強いものだったり、地味に反戦を訴えたものだったり。80年代に入るとヒット作やメジャー作品にもベトナム戦争ものが目立つようになる。そんな中で、あのスタンリー・キューブリックまでもがベトナム戦争映画を撮る!?との報が。驚き半分、期待半分で映画館へ。

いやぁ…すげぇ。期待と予想のはるか上。さすがキューブリック!

映画前半は新兵の訓練を描き、後半は戦場へと舞台を移す。圧巻なのは前半で、若者たちを兵隊へと鍛えあげる様子は、時に勇ましく時に痛々しい。訓練というよりもむしろ思想統制とも受け取れる。「時計じかけのオレンジ」後半を思わせる。教官役のリー・アーメイの口汚い台詞の数々。実際に新兵教育に携わった経験があるそうだ。

冴えない"ほほえみデブ"が次第に目の色を変えていく様子は、危機迫るものがある。厳しい指導を受けて変貌していく登場人物には、どこかのほほんとした第一印象のキャスティングがいい。「愛と青春の旅立ち」のリチャード・ギアにしても、本作のビンセント・ドノフリオにしても、軍隊じゃないけど「セッション」のマイルズ・テラーにしても、追い込まれてだんだん顔つきが変わっていくのが印象的だった。そして本作の微笑みデブは、狂気に支配されて銃口を向ける。

この前半のど迫力と、キューブリックらしい一点透視図法が冴える映像に圧倒されてしまって、この後どうなるのかと映画館の暗闇で心細くなったのを覚えている。

その後半。キューブリックは観客を兵士の一人として戦場を走らせる。主観移動のカットも使われて、その臨場感は劇場鑑賞だからこそ。飛び交う銃声で身体がこわばった。この戦場場面を超える臨場感は、「プライベート・ライアン」までなかった。

映画のクライマックスでは、主人公の小隊が見えない敵に襲われる。ベトナム戦争は、"相手の見えない戦争"だと評されることがある。何のために。本当の敵は。数々の反戦映画が観客に疑問を投げかけてきた。ベトナム戦争映画の代表作「プラトーン」は、アメリカ兵同士の仲間割れや暗闇の銃撃戦で、何と戦っているのかが見えない状況を表現した。キューブリックはクライマックスの戦闘シーンとその皮肉な結末で、戦争の虚しさを象徴的に見せつける。それは決して声高でなく、冷たい印象ですらある。そして、ミッキーマウスマーチのメロディが心に刻まれる。あのメロディ聴くと、この映画の行進場面しかイメージできない時期があったなw

初公開時、熊本市では「エルム街の悪夢3/惨劇の館」と二本立てでした💧



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バッファロー’66

2023-11-14 | 映画(は行)

◼️「バッファロー’66/Buffalo '66」(1998年・アメリカ)

監督=ヴィンセント・ギャロ
主演=ヴィンセント・ギャロ クリスティーナ・リッチ ベン・ギャザラ ミッキー・ローク

Filmarksが90年代映画をリバイバル上映する企画で、未見だった「バッファロー’66」鑑賞。

ビンセント・ギャロ演ずる主人公ビリーの小物っぷりが映画冒頭から強烈。刑務所を出た後、トイレを借りようとするが釈放後だからと断られ、街をさまよう。実家に電話して政府の仕事をしていた、妻がいると大嘘をつく。小銭を貸してくれたレイラを誘拐同然に捕まえて、妻を演じろと声を荒げる。いざ家に着くと吐き気がすると入りたがらない。立場の弱い者に威圧的だが、いざとなると弱気な小心者。関わり合いたくねぇヤツだなぁ…と嫌悪感でいっぱいになる。自宅で配信で見てたら、気分次第ではこのへんで、俺には合わねえと投げ出していたかも。

息子に無関心な両親が登場、そのクズっぷりに呆れる。子供時代の嫌だった記憶が荒い映像でインサートされ、愛されずに育った過去が示される。スクリーンのこっち側の僕らはビリーを気の毒に思い始める。そしてビリーがある人物への復讐を企てていることが明らかになる。

2人が犯罪に手を染める訳でもなく、逃避行する訳でもない。かつてのアメリカンニューシネマのような破滅的な話でもなく、ただバッファローの街をあっち行きこっち行きするだけの話。なのに、映画後半2人から目が離せない。バスルームで一緒にいたいと言うレイラを拒み、不自然な距離でベッドに横になる2人。でも距離は確実に縮んでいく。

実家の場面では、真四角のテーブルの一辺にカメラを据えて他の3人を撮る。一緒にいるのにとても距離を感じ、終いには隣に座る両親は話も聞かない。ベッドを俯瞰で撮る場面はカットが変わる度に2人の姿勢が変わっていく。映像で見せる距離感の巧さ。

音楽の使い方も素晴らしい。音数の少ない劇伴がほとんど。だが突然父親にスポットライトが当たってシナトラを熱唱するのは笑えた。そしてプログレ好きの僕には、たまらない場面が2つ。キングクリムゾンのMoonchildでクリスティーナ・リッチがタップダンスを踊る場面。クライマックス、いかがわしい店で鳴り響くイエスのHeart Of The Sunriseが最高😂

そして訪れるエンディングの多幸感。前半で感じた嫌悪感はどこへやら。映画館で観てよかった。リバイバル上映してくれたFilmarksに感謝。女の子は素敵な魔法をもたらしてくれる。それがあのお化け一家のおデコちゃんな小娘だったクリスティーナ・リッチとは。

そしてシアターを出てまっすぐにトイレを目指した。だって、一旦シアターを出てしまったら戻ってトイレを使わせてもらえないだろうしww😜




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