Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ヒストリー・オブ・バイオレンス

2006-03-25 | 映画(は行)

監督=デビッド・クローネンバーグ
主演=ヴィゴ・モーテンセン マリア・ベロ エド・ハリス ウィリアム・ハート

 ものすごく久しぶりにクローネンバーグ監督作を観た。いつからだろ?「裸のランチ」が最後かな。大学時代「ザ・フライ」を「エイリアン2」と2本立てで観てゲロゲロになって以来、どうも苦手な監督。でも気になる存在ではあって、「裸のランチ」にいたっては”大の虫嫌い”のくせに劇場で観た大バカです。ジェームズ・ウッズ、レイフ・ファインズ、ピーター・ウェラー・・・と無表情系男優を好むクローネンバーグ監督が、今回ヴィゴ・モーテンセンを起用したのはなーんか納得。平和な田舎町でダイナーを営むトムは、店を襲った強盗2人を射殺して一躍町の英雄扱いされる。ところが、それをきっかけに黒塗りの車と目に傷を負った男が彼とその家族を執拗につけ回す。トムには葬ったはずの過去があった・・・というお話。

 全体的に、リアルとファンタジーぽさが同居した不思議な雰囲気がある。そうだな、強いて言えば、これは「かぐや姫」のようなお話。それも血塗られた「かぐや姫」。でもきちんと後日談があるのだけれど。
突然、実はギャングの弟だ、と妻に告げる。ずっとトムとして暮らしていけると思ったのに・・・残念だ。
黒服の男が部下を連れて彼に酷な要求をする。「かぐや姫」で求婚してくる貴族たちのように。だけど彼はあざやかに相手を退ける。
いよいよ御大ウィリアム・ハート(この出演時間でアカデミー賞ノミネート?)登場。月からの迎えだ。
立派なお屋敷に戻った彼は御大と対決。そしてトムに戻ろうとする・・・。
こうしたお話部分にファンタジーを感じてしまうけど、冒頭の長回しも含めて殺人シーンやチアリーダーのかっこした奥様とのセックスシーンが異常にリアル。そのバランスが不思議な雰囲気なんだ。

 息子を主人公と同じような状況に置くところと、余韻を残すラストが実にいい。家族再生なのか?それとも受け入れられないのか?あの4人の沈黙に希望を感じた人もいるだろうし、絶望を感じた人もいるだろう。それにわずか90分余の時間にこれだけのドラマを凝縮させたのはすごい。映画は長ければいい訳ではない。見事な仕事。これまでのクローネンバーグの”毒”がダークなスパイスとして散りばめられた家族の物語。なかなか面白かった。
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コメント
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