■「大奥」(2006年・日本)
監督=林徹
主演=仲間由紀恵 西島秀俊 高島礼子 井川遙
小倉昭和館で「大奥」を観てきた(ぬぁんと「犬神家の一族」と2本立て!1000円!)。テレビシリーズはまったく見ていなかった。女性のドロドロした人間関係が描かれている訳だが、だいたいいびられる女性を見るのって好きじゃないから、なかなか観ようとは思わなかった。だがお得な2本立ての誘惑に負けて観てきた。思ってたよりも面白かった。それは演じている人々が役柄を楽しんでいるように感じられたから。
感情や欲望にストレートに生きてる役柄の人々、特に楽しそうに演じている。つまりいびってる側。高島礼子なんてチオビタのCM以上に生き生きしてるし、松下由樹や浅野ゆう子も然り。一方でいびられる側の、不安そうな居心地の悪さも”らしい”キャスティングでわかりやすい。井川遙チャンなんて、茶会で苦いのを飲まされたり、歌会で悪口言われたりと踏んだり蹴ったり。麻生祐未の「お暇をください」って表情は真に迫ってた。仲間由紀恵はそうしたお局女優たちの中で頑張ってる。実は一番品があるんじゃないの?とすら思った。花火を見て涙するところ、世間離れした絵島の悲しさがにじむ。女優たちの熱演の中、僕が一番迫真!と思えたのは杉田かおるだった。高島礼子扮する天英院派の一人。冷静に振る舞いながらも、嫉妬の情から芝居小屋に火を放つ場面の何とも言えない表情が素晴らしい。やっぱりこの人は巧いよね。「私で試してみるか?」と言い放ちながらも、「気が変わりました」と生島から身を離す場面。いいです。
西島秀俊って自信なさそうな男の役が多いと感じていたのだが、この映画の生島新五郎役はなかなか。「私を買いたいですか?」・・・男娼まがいの歌舞伎役者。あの時代の役者って、そういう格なの?と疑問に思ったり。しっかし、絵島への恋心が丁寧に描かれているとは思えない。処刑される場面の表情を見るまで、僕は彼の本当の恋心を信じられなかった。それにしても、東映のお正月映画で「大奥」!ときたら、どうしてもお色気路線を期待してしまうのが男の性(さが)ってやつで。特に20年前に「大奥十八景」とか観ているから、なおさら。そういう意味ではちょっと物足りなかったが。