Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

崖の上のポニョ

2008-08-30 | 映画(か行)

■「崖の上のポニョ」(2008年・日本)

監督=宮崎駿
主演=山口智子 長島一茂 天海祐希

 この夏、主題歌が日本中で響き渡ったこの映画。あまりにピュアな作品だという評判を聞き、スケール感があるお話が多くなった宮崎アニメだけに、「どうだろ?」と正直なところあまり期待せずに観たのだった。職場(元職場含む)の映画好き仲間と「ポニョろうか?」という話になって出かけた。宮崎アニメ、一人じゃ行きにくいもんね。この汚れた大人たちは冷めた眼で観るのかと思いきや、子供以上にキャアキャア言いながら観ていた。ビール片手に(こら)。

 宮崎駿監督が5歳児にもわかるように、と創りあげたイマジネーションの世界にはただただ圧倒される。NHKで放送されたメイキング番組を事前に見ていたもんだから、監督がそれぞれの場面に込めた強い気持ちを感ずることができた。ドキュメンタリーでは、この作品を創り始める場面が心に残った。今回の構想をスタッフにしゃべる監督。
「人面魚がね、人間の子供を好きになって・・」
監督の生き生きとした表情。それを頷いて聴くプロデューサー。大人の世界では、突拍子のないことを言い出す人には、あれこれと批判や指摘が飛んでくる。でもどうだろう、半魚人になって人間になって・・そんなお話をニコニコして意見を交わせるって、素敵だ。人を喜ばせたい気持ちがそこにいる誰もにあるからだろう。

 冒頭のクラゲの生き生きとした描写、手書きだからこそ躍動感がある波のうねり、無数の「いもうと」たちの動き。そして、何よりもポニョと宗介がこの不思議な出来事を通じて成長していく姿が、子を持つ父親としてはグッときちゃう部分だ。小舟の上でお腹をすかせた赤ちゃんと母親に対するポニョの行動、そのポニョを懸命に守ろうとする宗介の健気さ。一方で、宮崎アニメにいつも込められている大人に訴える部分も健在だ。ポニョの父親フジモトのつぶやきや、ゴミで汚れた海、老人介護の問題・・。観る人を選ばない映画でありながら、それぞれの世代に訴えかけてくる映画。大人が創ったファンタジーを子供が楽しんでいたのがこれまでの宮崎アニメなら、子供の視点で描かれる物語に大人がついてきているのが「ポニョ」なんだろう。

 それにしても大水(おおみず)の後で、世界が一変するというエピソードはこれまでの作品にも登場する場面だよね。「千と千尋の神隠し」もそうだし、「ルパン3世/カリオストロの城」のラストだってそう。うちの家で最も回数観る宮崎アニメは「パンダコパンダ」なのだが、2作目の「雨降りサーカス」にも同様の展開がある。現実には様々な悲劇や被害を及ぼすものだけど、アニメの中では幸せを運んでくるものであって欲しいところだ。



コメント (2)
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