12月2日。昼過ぎから降り出した雨はだんだんと激しくなった。今日は仕事を終えて福岡シンフォニーホールに向かう。久々のコンサートに行くためだ。大貫妙子が坂本龍一の楽曲に詞をつけて歌うというプロジェクト「UTAU」。今夜はその福岡公演だ。
思えばコンサートに行くなんて何年ぶり?ましてや立ちっぱなしのロックコンサートではなく、今夜はクラシック用のホールで座ってじっくり聴くライブ。そしてYMOに憧れてシンセサイザーをいじっていた僕にとっては、生で教授のピアノ演奏を聴けるなんて・・・!。ここ数年教授のピアノアルバムはよく聴いていたので、これは期待せずにはいられない。 |
大貫妙子も10年くらい前まではよく聴いていた。中でもお気に入りだったアルバムは「Cliche」。「黒のクレール」(今回聴けたらいいなぁと内心期待していた)や「ピーターラビットとわたし」など代表曲を収めた名作で、今回の「UTAU」でも「夏色の服」「風の道」が演奏されている。龍一プロデュース作というと「Signifie」も好きなアルバムだった。
大丸のカフェに入ってホットワインで体を温めて、いざシンフォニーホールへ。
巨大なクマちゃんが見送ってくれました。
さて今回のコンサート。コンサートホールは多くのホールとは違った四角い部屋。ステージ上にはグランドピアノが1台あるのみ。やがて教授と大貫さんが拍手と共に現れた。1曲目は「Tango」。これまで大貫妙子の歌声は響きや雰囲気を楽しんでいたような気がするが、生で聴いたその歌声は詞のひとつひとつが、耳に、そして心に刻まれる。部屋に響くのは歌声とピアノだけ。
これほど緊張して音楽を聴いたことがあったろうか。身動きして音を立てるのも、咳ひとつするのもはばかられるような空気を感じた。歌詞を聞き逃せない、教授の繊細なプレイを聴きたいという気持ちが強かったからかも。二人のMCはお天気の話から始まって、NASAが発表すると報道されている地球外生命体のことに及ぶ。大貫さんは、今回教授の楽曲に詞をつけるにあたって苦労したエピソードを紹介した。「メロディーが詞をはねつける」・・・曲の完成度あっての言葉。印象的だったのは、教授が「こんな大勢の前で一人で演奏するのは心細い。隠れるところがない。」とおっしゃるのにビックリ。むかーしメディアバーンツアーの頃なんてド派手だったのに。「3人くらいがちょうどいい。」には場内爆笑。
教授一人の演奏が続いた後、再び二人で今回のアルバムの曲を演奏。やっぱり詞が残る。曲によっては突き刺さるように詞が心に染みる。ピアノの残響音が消え入るまで、観客がじっと聴いている。とても緊張感がある。
アンコールの1曲目は「戦場のメリークリスマス」。生演奏で戦メリだよ!。もう大感激。家に帰って練習しようと思わずにいられなかった。2曲目は大貫妙子の「色彩都市」。うっわー!ピアノだけのコンサートだから、まさかこの曲が聴けるとは思わなかった。素直に嬉しい。さらに1曲を演奏してコンサートは幕を閉じた。
この記事書きながら、また「UTAU」を聴いている。生で聴く音楽は心の贅沢。また行きたいな。